中国では「日本ブランド」が強い分野と弱い分野がはっきりしている理由 

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日本ブランド=安心・安全・高品質というイメージは世界共通ではないだろうか。日本では今でも「多少高くとも日本ブランドの商品は強い」と思われがちかもしれないが、現地で生活していると、その認識はすでに過去のものだと気付かされる。

一方で、日本ブランドが今も根強く支持されている分野や、今後中国市場で成功する可能性を秘めている分野も確かに存在する。

中国市場では日本ブランドが全体的に強い・弱いのではなく、分野によって明確に評価が分かれているのが実情だ。

現地で暮らして分かった、日本企業が勝てる現実的な領域とは何かを、当コラムで解説したいと思う。

中国では「日本ブランド」が強い分野と弱い分野がはっきりしている理由 

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2026年04月13日

日本ブランドが弱くなった分野とは

(出典元:小红书 マーケティングがかなり上手い中国の化粧品ブランド花西子)

分かりやすい例が、大人向け化粧品や美容領域である。かつて中国では『日本製=高品質』というイメージが強く、日本の化粧品はハイブランドを身に付けるかのような憧れの存在だった。しかし、現在は状況が大きく変わっている。

中国ローカルブランドは、「成分訴求が明確」「トレンド反映が早い」「SNSやライブコマースの活用が圧倒的にうまい」という強みを持っている。価格面・スピード面・流行と見せ方の面で、日本企業を大きく上回っていると感じる。

実際、中国の化粧品市場規模は約8兆円規模とされ、現在も成長を続けている。それでも日本メーカーの中国事業は伸び悩んでおり、市場が悪いのではなく、様々な要因が絡んだ結果、日本ブランドが選ばれにくくなったということだろうと考える。

中国の化粧品市場規模は約8兆円に達し、今後も成長が見込まれている中国の化粧品市場規模は、2024 年に 389 億ドル相当でした。市場は2025年の413億1000万ドルから、2032年までに680億ドル, 予測期間中に7.38%のCAGRを示しました。

(引用元:Fortune Business Insights
https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81%E5%B8%82%E5%A0%B4-114165

それでも日本ブランドが「まだ選ばれる」分野とは

(出典:淘宝 Pijeonは子ども用のボディーソープ売上ランキング上位にランクイン)

一方で、中国で生活していて日本ブランドが今なお強く支持されているなと感じる分野がある。子ども向け商品・ベビー関連・敏感肌など安全性が重視されている領域だ。つまり、『失敗が許されないリスクを伴う商品』は日本ブランドが強い。

中国の親は子どもに関わる商品に対して非常に慎重である。背景には、過去に起きた乳幼児向け製品の事故がある。たとえば、中国メーカーの粉ミルクを飲んだ乳児が死亡した事件や、抗菌クリームを使用した乳児の顔が肥大化するなどの問題が報じられ、大きな社会的関心を集めた。

もちろんこうした事故が毎年繰り返し発生しているわけではない。しかし、子どもが被害に遭う事故は社会に強い印象を残す。一度問題を起こした企業の名前は親たちの記憶に長く残り、結果として子ども向け商品の安全性に対してより敏感になる傾向がある。

中国人の親は価格よりも事故が起きないか、成分は安全か、過去にトラブルはないかを重視する傾向が非常に強い。ここでは派手な効果訴求や流行よりも、安心感と実績が何よりの差別化になる。中国の母嬰(マタニティ・ベビー)市場規模は約8兆円超とされ、今後も安定した成長が見込まれている。この分野では今も『日本基準』『日本製』という言葉に反応する消費者は多い。

iiMedia Research(艾媒咨询)が発表した『2025年中国母婴市場消費行動調査データ』によると、2018年から2025年にかけて中国母婴業界の市場規模は全体的に増加傾向を示し、年平均成長率は15.37%であった。2018年の中国母婴業界市場規模は3兆元、2022年には市場規模が5兆元を突破し、前年比18.20%増となった。2023年には市場規模はさらに拡大し6兆6478億元に達し、2024年には7兆6299億元まで達した。2025年には市場規模はすでに8兆元を突破しており、2026年には8兆5885億元に達すると予測されている。

(引用元:艾媒咨询
https://www.iimedia.cn/c1094/109275.html

なぜ分野によって評価が分かれるのか

(写真:上海市にある大型ローカルスーパーで撮影。日本メーカーのおむつも人気。)

理由はシンプルだ。中国企業が本気で攻めにくい領域かどうかである。

大人向け商品であれば、多少のトラブルが起きても『ブランド変更』で済む。しかし子ども向け商品では、一度の事故や炎上が企業の存続に直結する。
結果として、過剰に慎重・実績を積み重ねる・責任を取り続けるという日本企業が本来得意としてきた姿勢が、ここでは相対的な強みになる。

勘違いすると、この領域でも負ける

(写真:中国でかなり有名で人気の子ども服ブランドbalabala)

ただし、日本ブランドだからといって自動的に売れる時代は、この分野でも終わっている。

日本企業がよくやる失敗は、情報開示が少なすぎる・中国向け説明を省略する・SNSを軽視することである。

必要なのは、日本品質 × 中国式の伝え方(SNS・分かりやすい説明・使用シーン提示)この掛け算である。安全であることと、安全だと理解されることは別物だ。

まとめ

(写真:上海市のスーパーには日本のベビーフードを取り扱っている所もある)

新型コロナ禍で縮小した分野でも現在は回復し、中国市場自体は成長しているにもかかわらず、日本企業の存在感は相対的に低下している。中国市場で日本ブランドが負けた理由は『品質』ではない。価格・商品化スピード・SNSやライブコマースの見せ方、この3点である。だが、安心・安全・責任が重視される分野に限れば、今も明確な勝ち筋が存在する。重要なのは、中国市場全体を見るのではなく、どの分野で、どんな価値が評価されているのかを冷静に見極めることだ。日本企業が中国で評価される分野は、今後さらに絞られていくだろう。しかし『失敗が許されない領域』においては、日本ブランドは今も有効な選択肢であり続けていると感じる。

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