南アフリカのお風呂事情|水不足と入浴文化の葛藤

アフリカ

海外生活において、多くの日本人が日本とは違う海外のお風呂の習慣に衝撃を受けると思います。
南アフリカではシャワーで済ます人が大半です。

バスタブがついている家庭もありますが、水が清潔ではなかったり水やお湯が貴重なため、入浴文化が根付いていないと考えられます。南アフリカのお風呂事情の背景にはどういった問題があるのでしょうか。

南アフリカのお風呂事情|水不足と入浴文化の葛藤

   著者:南アフリカgramフェロー 植松りな
公開日:2023年 9月26日

南アフリカにおいてバスタブの役割

一般的な南アフリカのバスルーム

南アフリカで住居を探した際、バスタブがあることを条件に加えると、かなり件数が絞られました。南アフリカのバスルームはシャワーのみのであることが多いです。

南アフリカでは固定式のシャワーが多いため、子どもを洗いづらいのでバスタブを使うという利用方法が一般的でした。

そのためバスタブが備え付けられている家もあるですが、大人にとってはシャワーの水が溢れないための受け皿でしかなく、お湯に浸かるという習慣がありません。  

南アフリカの湯沸かし問題

追い焚き機能など全くついていない南アフリカのバスタブ

南アフリカではそもそもお湯が貴重です。

お湯はいつでも使えるわけではなく、一定時間かけて電気式の温水器でお湯をタンクに貯めている中から使っています。そのため、バスタブにお湯を貯めてしまうとその日分のお湯のストックがなくなり、シャワーからお湯が出なくなるという事態になります。

また、バスタブに追い焚き機能がついていないので、バスタブに貯めたお湯はどんどんぬるくなってしまいます。そのため私も家にバスタブはあるのですが、お湯不足問題から湯船に浸かる機会が徐々に無くなってしまいました。

南アフリカの汚水問題

南アフリカの各地で水道水汚染が多発しています。大都市部の水道水の水質は定期的に検査されていますが、水道管が古くなっていることもあり汚染が問題になっています。

私の住む第三の都市ダーバンでも水道水に汚水が混ざることがあり、水が原因で体調を崩す人が大量発生する事件もよく起きています。

また、サファリなど郊外エリアに旅行すると蛇口から茶色い水が出てくることもあり、バスタブに貯めて入ろうとはとても思えません。

ユニセフの調査によると、2022年時点世界では22 億人の人々が安全に管理された水を得られずに暮らしています。そのうち 4億1,100万人がアフリカ、500 万人が南アフリカに住んでいます。

水の汚さも入浴文化が浸透しない原因になっているといえます。

南アフリカの水不足問題・水を使わない入浴システム

南アフリカでは大規模干ばつが起きることも珍しくありません。

2017年、ケープタウンで大規模干ばつが起きた際は極度の水不足が発生し、市民が1日に使用できる水の量は50リットルと制限されました。トイレの水を流すこともできず、シャワーは3分も使えません。

日本人の1日の水使用量は平均214リットルといわれており、その4分の1ということになります。

そこで南アフリカでは水を使わない入浴システムが開発されています。
DryBath と呼ばれる製品で、水で洗い流す必要がない、透明な殺菌性と保湿性のあるジェルです。独特のアルコール臭はなく、甘い香りがするので日常的に使用でき、新しい入浴方法として注目されています。

まとめ

南アフリカでは、水不足や水道水の汚染などの影響で入浴文化が浸透していないのが現状です。総務省の2020年の統計調査によると、南アフリカの家庭の浴室保有率は49.4%でした。国民の半分ものひとが、浴室すら持てていない状況だとわかりました。

南アフリカに入浴文化を普及させるには、まずは水の問題を解決する必要がありそうです。

引用元
◇アフリカの水と衛生分野の進捗に警鐘 4億人以上が安全な飲料水を利用できず (unicef.or.jp):
https://www.unicef.or.jp/news/2022/0069.html

◇Business Insider Japan: https://www.businessinsider.jp/post-168287

◇South African develops ‘waterless bath’: https://brandsouthafrica.com/23659/south-african-develops-waterless-bath/

◇統計局ホームページ/統計FAQ 18A-Q12 水洗化率及び浴室保有率 (stat.go.jp):
https://www.stat.go.jp/library/faq/faq18/faq18a12.html

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