インドネシアのお風呂事情:イスラム教と伝統が織りなす独自の入浴文化

インドネシア

急成長を遂げるインドネシア。この国の経済は10億ドルを超えるGDPを記録し、多くの人々がその経済的成長、2億7000万人を超える人口に注目しています。しかし、その背後には日常の中に息づく独特の文化や習慣が隠れています。私たち日本人にとって馴染みの深い「お風呂」に関する習慣は、インドネシアでどのように捉えられているのでしょうか。今回はそんなインドネシアのお風呂事情を深堀りしてみたいと思います。

インドネシアのお風呂事情:イスラム教と伝統が織りなす独自の入浴文化

   著者:インドネシアgramフェロー 尼野さらさ

公開日:2023年 10月2日

入浴の歴史的背景

インドネシアの人々にとって、入浴は単なる日常の習慣を超えたもの。特にジャワやバリの伝統的な村々では、川や湧水の近くに「マンディ」と呼ばれる共同の浴場が設けられ、コミュニケーションの場としても機能していました。  

「マンディ」の伝統

「マンディ(mandi)」という言葉は、インドネシア語でお風呂の場所や入浴行為そのものを指します。多くの国で一般的な湯船に浸かる入浴とは異なり、マンディでは水を貯めた小さなバスタブから手桶を使って水を汲み、体を洗うのが一般的。

このスタイルは熱帯気候地特有の水の節約、環境への配慮から生まれた習慣です。マンディは身体を清潔に保つだけでなく、心のリフレッシュの時間としても重視されています。

マンディはトイレと同じ場所で行われることが多いため、初めて目にするときには少々驚くかもしれません。

宗教と入浴の関係

インドネシアは国民の87%がイスラム教徒で、世界で最もムスリムの人口が多い国として知られています。

宗教は入浴の習慣に深く関係があります。日常の祈りを捧げる際の「ウドゥ」という洗浄儀式や、より徹底的な浄化を目的とした「グスル」という儀式は、イスラム教の信仰生活に欠かせません。これらの儀式は肉体の清潔さだけでなく、心の浄化も重視しています。イスラム教において、清浄な身体は祈りが神に受け入れられるための基本的な条件とされています。

多くのインドネシア人は、朝と夕方、1日に2回のマンディを習慣としていますが、イスラム教徒の中には1日に5回の礼拝前に毎回マンディを行う人もいます。

また、バリ島などヒンドゥー教が根付いている地域では、聖なる泉で身体を清める「ムルカット」という浄化の儀式が根付いています。

天然温泉の恩恵

インドネシアは127の活火山を有する世界最大の火山大国であり、その恩恵として多くの温泉地が存在しています。特にジャワ島のバンドンやジョグジャカルタなどの地域には、硫黄を含む湯が多く、これらの温泉は皮膚の健康を向上させるとともに、筋肉の疲れを和らげる効果があると言われています。

バンドンのMaribaya Natural Hot Spring Resort

筆者も先日バンドンの温泉スポットを体験してきましたが、営業開始直後から大勢の人で賑わい、VIP Pool(家族風呂)は予約がすぐに取れないほどでした。

入浴料は9万ルピア(約866円程度 / 2023年9月7日時点)。

こちらの施設に限らず、インドネシアの温泉スポットは温泉に浸かるだけでなく子ども用のプレイグラウンドやミニ遊園地、イベントスペースが併設されており、幅広い世代や団体で楽しめる複合施設として運営される傾向があります。

■Sari Ater Hot Spring Water
料金:7万ルピア
プールやアクティビティも充実している

■Ciater Spa Resort
料金:1泊約130万ルピア〜
スパリゾートとして宿泊できる施設も

現代の入浴習慣の変化

都市化や近代化の影響で、伝統的な「マンディ」も変わりつつあります。
都市部ではシャワーやバスタブが普及し、モダンなデザインの浴室やスパが増えてきています。

観光地バリ島のヴィラ。屋外にバスタブ・シャワーが設置されていることもあり、開放感がある。

スパではバラなどの花びらを浮かべたフラワーバスも人気
バンドンのヒルトンホテル。高級ホテルとはいえシャワーのみのバスルームも少なくない

インドネシアのバスルーム関連の市場は、2020年から2026年の期間中に年間成長率6%の増加が予想されています。企業にとっては、このような文化的な特徴を理解し、それに合わせた製品を開発することで、ビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

(引用元:Indonesia Sanitary Ware and Bathroom Accessories Market (2020 – 2026) | Trends, Outlook & Forecast
https://www.6wresearch.com/industry-report/indonesia-sanitary-ware-and-bathroom-accessories-market-2020-2026

まとめ

経済成長率平均5%、中間所得層も年々増加しているインドネシアは、ビジネスの新しいフロンティアとして注目されています。日本企業がインドネシアへの進出を考える上で、文化や宗教の背景を理解することは必要不可欠です。インドネシアの独特なお風呂事情を理解することが、新しい戦略を築く手助けとなるでしょう。

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