海外の注目企業の魅力を徹底調査2022:完美日記(Perfect Diary)

中国

世界各国の注目企業を徹底調査。今回は、中国でアツい新スタイルの中国産コスメブランド「完美日記」(Perfect Diary) を徹底調査。
何故、近頃中国では自国発化粧品ブランドが流行っているのか。そして中国産化粧品ブランドは、一体どのような戦略でブームを巻き起こしているのか。資生堂やKOSEに負けず、斬新な手法で我が道を切り開く新手ブランド、完美日記(Perfect Diary)の手法を徹底解剖いたします。

海外の注目企業の魅力を徹底調査2022:完美日記(Perfect Diary)

   著者:gramフェロー
公開日:2022年2月8日


中国「国産」のコスメブランド

中国の注目企業第1社目となる「完美日記」です。

完美日記と言われても、名前からどの様な会社なのか想像するのは難しいでしょう。完美日記は、中国発のコスメブランドです。完美は、中国語で「完璧」を意味し、英語名はPERFECT DIARYになります。
今まで、中国発のいわゆる「国産」と言われる化粧品ブランドは数多く淘汰されてきました。理由として、品質の問題がありました。日本に行けば、ある程度お手頃な値段で質のいい化粧品が買えますし、少し贅沢をしたいと思えば欧米の洗練された高級ラインの化粧品を購入します。それ故、今までの化粧品市場では、中国産の「値段は安いが、品質が全く信頼できない」コスメブランドは入る余地がなかったのです。

しかし、最近その「国産」ブランドが新しい風を起こしつつある。


完美日記は2016年、親会社逸仙電商のもとで誕生しました。ブランドが作られてから現在までわずか5年間の間で中国最大級のECモール「天猫」で欧米ブランドロレアルパリや日本の資生堂を抑えて1位に輝き、2020年11月ニューヨク証券取引所に上場した際には時価総額が約122億ドルにまでなりました。また2020年7月から2021年6月までの天猫での売上額は約34.5億元(620億円)になり、ブランドの誕生から数年しか立っていないのにもかかわらず日本名だたる化粧品ブランドと肩を並べるほどにまでの成長を遂げています。(日本の老舗人気化粧品オルビスの2020年の売上でも450億 )
今回は、そんな新進気鋭なコスメブランド、完美日記の戦略をご紹介したいと思います。

完美日記

完美日記の公式サイト
https://www.perfectdiary.com/ (現在は中国大陸のみで観覧可)

中国における宣伝手法の基本中の基本!KOLマーケティング

KOLマーケティングは、日本であまり聞いたことがないかもしれません。しかし、中国では今や大前提のマーケティング手法となっています。まずは最初にKOLマーケティングについて少しふれたいと思います。

<KOLマーケティングとは?>
KOLは、キーオピニオンリーダーを指し、芸能人ではなく、消費者にとってより身近に感じるインフルエンサーに商品を広めてもらうマーケティング手法の一つ。最近ではKOLを紹介する仲介会社を通してKOLと契約する企業もあるほど、ポピュラーな手法です。

完美日記では、このようなKOLマーケティングを主軸にPRをしています。契約しているインフルエンサーはなんと15000人とも言われ、完美日記から送られてくる商品をレビューする記事や動画を中国のSNSで広めます。

こちらは、中国のSNSアプリ「小紅書」に掲載された完美日記に関する
レビュー その数なんと7.8万件


もちろん、完美日記はタレントや女優などの芸能人を起用した宣伝もします。芸能人の知名度によって、ブランドの露出をあげると同時に、KOL達によってブランドの信頼度や親近感を高めているのです。

<何故KOLマーケティング?中国の口コミ文化>
中国では見た目は良くても、品質が劣っている商品が多々存在します。日本のように価格が性能とつり合っている状況は少なく、消費者は判断に困ります。そこで、実際に商品を使ったのか分からない芸能人よりも、より専門性や知識があって、より身近で信憑性のあるKOLが使われるようになったのです。実際に中国の消費者は、何かを購入する際、広告よりも口コミを元に判断するケースがほとんどです。

この値段で?魅力的な価格対性能


完美日記の価格設定もまた、人気となった要素の一つです。

ILIYANという日本の中国コスメ専門サイトより 完美日記の価格帯は中の下
https://jiliyan.net/collections/perfectdiary%E5%AE%8C%E7%BE%8E%E6%97%A5%E8%A8%98

完美日記のコスメは、プチプラコスメよりも高く、ランコムやロレアル・パリのようなデパコスよりも安い、中間層にあたる価格設定です。中国産の化粧品で、この値段となると「少しお高いジャンル」に分類されます。
しかし、それでも売れます。その理由は、商品の魅力コストパフォーマンスの良さにあります。
表だけ取り繕っても、中身がいいものでなくてはならい。これは、完美日記がいつも掲げているセリフです。日本の安くて品質のいいコスメが簡単に手に入る今、安さは売りになりません。そこで、完美日記は価格対性能に注目しました。

<価格性能比>
完美日記は、中国産コスメブランドの最大のネックである「品質が低い」という欠点を、どのように打ち消しているのでしょうか。
その秘訣は、生産工場です。完美日記化粧品の生産方法として、OEMとODM両方の形式を採用しています。そのうち、OEMの委託工場は、かの有名なYSL、MAC、エスティ・ローダーと同じ委託工場を使っているのです。
有名なブランドと同じ委託工場で生産していながら、価格はそれらの半分もしない。そうすることで、完美日記は比較的安い価格帯を維持しながらも、「ある程度の品質は保証されている」というイメージを消費者に与えることに成功したのです。

<商品の魅力>
ところで、イメージ戦略には成功しても、やはり品質では日本や欧米の怒涛たる化粧品ブランドには敵いません。
その分、完美日記は商品企画に莫大な力を入れることで、その点をカバーしています。その中でも、最もヒットしている例が、コラボシリーズです。以下いくつかを紹介したいと思います。

売り切れ続出 世界最大級ドキュメンタリーチャンネルとコラボした「Discoveryシリーズ」のアイシャドウ(左下)
中国の宇宙開発に携わる国有企業「中国航天」とのコラボアイシャドウ

いかがででしょうか。日本でもよくあるコラボシリーズですが、女優や同業種の企業と企画を組むことが多い中、中国では業界の枠に縛られない斬新なアイデアがヒットを生んでいるのです。2020年にはなんと人気インフルエンサーのペット犬「Never」ともコラボし、話題になりました。

常にデザインや企画で話題性を作り、消費者を飽きさせない。それと同時に品質も確保する。それが、完美日記の商品の魅力だと言えるでしょう。

AIが友達、斬新なマーケティング

日本でも、企業のSNS運用が浸透してきていますね。instagramのフォロー、ラインの友達追加をすることで割引できるサービスや、お得情報の発信は今ではどの企業でも行っている戦略だと言えます。
中国でもそれらの手法は当たり前の様に行われていますが、完美日記の手法は中でもとても斬新です。

ここでは、完美日記のSNS運用の方法を紹介します。

完美日記は中国の有名なSNS「Weibo」「小紅書」での発信はもちろん、中国最大級メッセンジャーアプリの「微信」(英語名:WeChat)もフル活用しています。WeChatは日本のLINEのような立ち位置であり、消費者は完美日記の化粧品を購入す時商品に付いているバーコードや店員の勧めで完美日記のWeChatを友達に追加します。
しかし、そこで消費者は公式アカウントではなく「小完子」という個人アカウントを友達追加することになります。

小完子の役割は大きく分けて3つです。

・友達のようにストーリを更新し、美容に関する情報を投稿
・完美日記の消費者によるグループを作り、話題を提供し盛り上げる
・定期的にお得な情報を発信する

完美日記による架空の友達「小完子」のWechatアカウント
https://new.qq.com/rain/a/20200613a0rzyg00
https://www.sohu.com/a/360614934_213296?scm=1002.44003c.fe021c.PC_ARTICLE_REC


実はこの小完子、消費者とのコミュニケーションを図るために完美日記が作り出した架空のAI人物。

小完子の存在により、消費者は購入後もコスメの感想や疑問点を小完子が作ったコミュニティで共有することができ、いわゆる企業が作った公式アカウントよりも顧客接点をより強固なものにできています。
完美日記はこのようにして、顧客ロイヤリティを高めることに成功しているのです。

これからのコスメ界

少し話は変わって、みなさまはデジタル経済という言葉をご存知でしょうか。

企業でいうと、AIを使って消費者から集めた膨大なデータを分析し、それを元に戦略を展開していくというものです。完美日記もこれほどまでに多彩で、消費者の心理をくすぐる商品を展開し続けた裏には、数字化戦略というものがあります。ネット上から得られた数えきれない程の消費者データを分析し、何が流行るか、どのような物が求められているのかを事前にある程度予測できるのです。
SNSで発信する情報も、口紅のシーズンごとの色も、ビックデータ元にした数値で判断していたり。
例えば、完美日記が発売する口紅は色の評判が大変いいのですが、市場で売れている口紅の色の系統人気ランキングを見ると完美日記がその中の幾つもを採用しているとの話もあります。
完美日記は、新商品の発売間隔も短いのですが、それを可能にしているのもこの数字化戦略です。


ビックデータに基づくAI分析を基準に戦略を展開していくことはもはや前提です。
販売した商品の売りゆきを見て、次の商品の企画をする時代は終わり、既にあるデータ情報を元にリアルタイムで戦略を考える、というやり方が、今後のスタンダードになるのかもしれませんね。

まとめ

以上、最近徐々に熱を上げてきている中国の国産ブランドのうちの一つ、完美日記を見てまいりました。

日本の化粧品ブランドには無いような取り組みが多々行われている魅力的な企業でした。
中国の国産ブランドは、斬新な戦略の数々によって、今まで先頭を走ってきた日本の化粧品の企業達に引けを取らない存在となりつつあります。
実は、近頃完美日記以外でも急成長しているブラントが幾つかあったり。
それらのブランドを見つけて考査してみても、また新たな発見があると思います。

中国の文化に即した戦略もありますが、商品展開に対しての考え方や、SNSの活用方法などからはきっと学べる点も沢山あると思います。

これを機に、皆様も完美日記、また中国のコスメ界に改めて注目して頂ければと思います。

引用元・参考リンク


https://www.djyanbao.com/report/detail?id=2772419&from=search_list

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1683867914647906057&wfr=spider&for=pc
https://www.sohu.com/na/429329619_650513
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1684199282955496480&wfr=spider&for=pc
https://www.digitaling.com/articles/267959.html
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1667988701489139249&wfr=spider&for=pc
https://new.qq.com/rain/a/20200613a0rzyg00


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