都市再開発法案をめぐる激しい議論

マレーシア政府が2025年に提出した『都市再開発法案』をめぐって、住宅所有者の間で懸念が広がっています。
この法案は、クアラルンプールなどの都市圏で目立つ老朽化した建物の再開発時の取り壊しの基準を緩和することが目的としています。
今回はこの記事について深掘りし、マレーシアの都市開発について解説します。
(引用元:Urban Renewal bill tabled in Parliament | New Straits Times
https://www.nst.com.my/news/nation/2025/08/1263399/urban-renewal-act-bill-tabled-parliament)

都市再開発法案をめぐる激しい議論
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年02月27日
住宅所有者の間で懸念

都市再開発法案は、都市の再開発のために住宅の強制売却が可能になるのではないかと住宅所有者の間で不安の声が上がっています。
今回の新法案によって建物の一括売却承認の同意基準が引き下げられるので、開発業者が高級再開発のために不動産を取得する口実が作られ、貧困層が追い出される可能性があると警告しています。
住民が家を失う可能性があることを懸念
野党は今回のこの法案を政治上の争点に上げ、この法案はクアラルンプールの低所得者層(主にマレー系とインド系)を市街地の周縁部に追いやる不正な手段だと主張しています。古い住宅が取り壊された後、現在の住民は改築された住宅の値段が高騰し、それを支払う余裕がなくなりホームレス化するという理屈です。
これに対し政府は、この法案は古い地域を活性化し、荒廃した住宅地の住民の利便性を向上させることを目的としていると述べ、アンワル首相も既存の不動産所有者の権利は保護されると述べています。
新法の背景と目的
マレーシア政府は、2020年までに先進国入りを目指す『VISION2020』を掲げ、経済成長と都市化を推進し、その一環として都市部の再開発計画を進めてきました。今回の新法案も、都市のインフラ整備、経済活性化、住環境の改善を目的としています。
マレーシアの都市開発政策と法制度
マレーシアの都市開発は、以下のような政策と法制度に基づいて進められています。
①国家土地法(1965年):
土地の売買や開発に関する基本的な法律で、州政府が管轄しています。
②連邦計画法:
クアラルンプール市の都市計画を規定し、一定の開発区域を指定した場合、市がその土地を収用する権限を持つとされています。
政府はこれらの法制度に基づいた都市計画や再開発を推進していますが、実施に際しては住民の権利や環境への影響など、多角的な視点からの検討が求められています。
シンガポールとの比較
シンガポールは都市国家として限られた土地を効率的に活用するため、厳格な都市計画と再開発政策を実施しています。政府が土地を所有し計画的な再開発を行うことで、経済成長と住環境の向上を両立させています。
一方、マレーシアは広大な土地を有しており、連邦制の下で州政府が土地の管理権限を持つため、統一的な再開発政策の実施が難しい側面があり、法制度の整備や住民との合意形成がより複雑になる傾向があります。
今回の法案も起草は2015年に始まったおり、国民の懸念を考慮しながら74回の対話セッションがすでに開催されたと首相は述べています。
今後の展望
マレーシアの都市再開発を成功させるためには、再開発計画の立案から実施までのプロセスを公開し、住民や関係者が情報を共有できる体制を整え、透明性の確保をすることが必要です。
再開発に関する意思決定において、住民の意見を積極的に取り入れることで、社会的な合意形成を図ることが重要です。
再開発が自然環境や歴史的遺産に与える影響を最小限に抑えるため、環境影響評価を徹底し、持続可能な開発を目指すことも必要でしょう。
これらの取り組みにより、マレーシアは経済成長と文化・社会的価値の維持を両立させた都市再開発を実現できると期待されています。


















