クリスマスに人気のスペインの伝統菓子Turrón

スペイン

14世紀頃から何世紀にもわたりスペインの伝統菓子として愛されてきたTurrón(トゥロン)は、アーモンド、蜂蜜などが主原料のホリデーシーズンには欠かせない、豊かな香ばしさと甘味が特徴のお菓子である。クリスマスにはスペインの家庭では必ず食べられるほどの定番スイーツで、10月末〜11月になるとスーパーやデパートには様々なTurrónが並びはじめる。

最近では伝統的なものに加え、チョコレートやナッツ類、フルーツなど様々な進化系Turrónも見かけるようになっていて、EU諸国や北米でも人気が増している。本記事では、日本ではまだあまり馴染みのないクリスマスのお菓子、Turrónについてお伝えする。

クリスマスに人気のスペインの伝統菓子Turrón

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2025年1月6日

Turrónの歴史

Turrón(トゥロン)は14世紀頃からスペインで作られてきたスイーツで、特にバレンシア地方のヒホナ(Jijona)という街が発祥の地として有名だ。

この伝統的なヌガー菓子は、特にクリスマスのお祝いの時期に楽しまれている。その歴史は同国がムーア人に支配されていた8〜15世紀に遡り、ムーア人がイベリア半島に持ち込んだ中東のアーモンドを使ったお菓子である「halva」の形から徐々に進化したと考えられている。
スペインの地中海性気候は、トゥロンの主な材料であるアーモンドと蜂蜜の生産に理想的で、バレンシアやアリカンテの地域で発展する要因となった。

トゥロンの最初の文献記録は16世紀に登場する。宮廷料理人、フランシスコ・マルティネス・モンティーニョ著の「ElArte de la Cocina(料理の芸術)」では、Turrónは当時の人気デザートとして記されている。

その後、フェリペ2世の統治下でTurrónは宮廷の宴席にも登場し知名度が高まり、17世紀にはクリスマスに欠かせない存在となったと考えられていて、その伝統は現在も続いている。

(左:固いタイプ「Turrón de Alicant」/ 中央:柔らかいタイプ「Turrón de Jijona」)

最も愛される老舗ブランドは

最も有名な老舗トゥロン専門店といえば、アリカンテの「ElLobo」と「1880」というブランドだ。
特に「1880」は最も伝統的なメーカーのひとつとされる。100年以上続く名店で、1880年に最初の公式レシピが記録されたことからその名をブランド名に採用した。昔ながらの製法で地中海産の最高級マルコナアーモンドと純粋なオレンジブロッサム蜂蜜を使用して作られており、材料の品質の高さから「世界で最も高価なヌガー」としても知られている。

「1880」の成功は伝統と革新のバランスにある。クラシックな種類の柔らかいタイプのヒホナ(Turrón de Jijona)と固いタイプのアリカンテ(Turrón de Alicante)の2種類の伝統を維持する一方で、現代の消費者の嗜好に合わせた新しいフレーバーや形式のものも次々と展開され、人気を博している。
同ブランドは高度な生産技術と職人技を組み合わせることで、プレミアムトゥロン市場のリーダーとしての地位を確立したといえる。

(老舗「1880」の様々な種類のTurrónが並ぶ様子:ElCorteEngles)

クリスマスに人気の理由

トゥロンがクリスマスに人気なのにはいくつかの理由が挙げられる。17世紀には既にクリスマスに欠かせない存在となっていた伝統菓子を、家族や親しい仲間と祝うクリスマスに皆で囲むことで、季節感を感じる文化が深く根付いていること。
また、クリスマスシーズンに最も流通して季節限定感が強いため、この時期にしか味わえないという特別感がさらに人気を高めている理由だろう。

ホリデーギフトとしても重宝されていて、親戚や友人に送る文化も根付いている。高品質のトゥロンが詰まったギフトセットは特に人気で、贈り物として喜ばれる一品だ。

(現代人の嗜好に合わせ進化を遂げた多種多様なTurrón)

年間売上額は2億ユーロ超

トゥロンはクリスマスシーズンに集中して販売が行われるため、この時期の売り上げは非常に大きい。
国内での年間売り上げ額は約2億ユーロ(約300億円)を超えるとされているが、このうちおよそ70〜80%がクリスマスシーズン中で、11月〜12月に最も多く出荷されている。

またスペインは世界最大のトゥロン輸出国で、多くの輸出も行われている。EU諸国でもスペイン同様、特にクリスマスに人気があり、フランス、イタリア、ドイツ、ボルトガルなどヨーロッパ全体で親しまれている。
近年のデータによると、EU諸国に加え北米にも輸出されており、ホリデーシーズンに大きな需要があるトゥロン産業は年間を通じても成長傾向にあるとされている。

まとめ

クリスマスシーズンに国民から愛されているトゥロンはスペインの豊かな食文化の歴史を物語っている。その人気の秘密は、何世紀にも渡る伝統を大切にしながらも現代の嗜好に合わせて進化してきた適応力にある。現在では世界中に輸出され、多様なフレーバーが展開されている。

日本人にとってはあまり馴染みのないお菓子だが、クリスマスシーズン以外でもマーケットや専門店などで1年中購入することができるので、スペインを訪れた際にはぜひこの伝統的なスイーツを味わってみてはいかがだろうか。

◇Turrones Export Spain & Top Spanish Turrones Exporter – Iberica Export:
https://www.iberica-export.com/en/products/turrones

◇Spain (ESP) Exports, Imports, and Trade Partners | The Observatory of Economic Complexity:
https://oec.world/en/profile/country/esp

◇The real history of turron from Spain:
https://www.turronesydulces.com/en/nougat-history?srsltid=AfmBOorvsDKuCT3e25OB66ck%20aqKXDdGZ2EiG20dCtDJ8M7sDjCeHLtx4

◇Turrones 1880: Historia y Características del Mejor Turrón Artesano:
https://www.gastronomicspain.com/blog/es/turrones-1880-turron-artesano/

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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