RTS Link:国境を越える鉄道の大きな一歩

マレーシア

2025年11月中旬、ジョホール・バルでひとつの歴史的瞬間が訪れました。

ジョホールとシンガポールを結ぶ RTS Link(Rapid Transit System Link)プロジェクトで、最初の列車Train Set 02がジョホール側の Wadi Hana車両基地に到着し、試験走行・試運転の段階に入ったのです。これはプロジェクト全体が次のフェーズに進んだことを示す大きな出来事でした。詳しく紹介していきます。

(引用元:RTS Link project: First train reaches Johor for testing, enters critical phase | The Star
https://www.thestar.com.my/news/nation/2025/11/15/rts-link-project-first-train-reaches-johor-for-testing-enters-critical-phase

RTS Link:国境を越える鉄道の大きな一歩 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年02月25日

RTS Link とは何か

RTS Linkは、マレーシア側の Bukit Chagar駅と、シンガポール側の Woodlands North駅を結ぶ全長約4キロの国境横断型鉄道です。乗車時間はわずか5分程度、ピーク時には1時間で最大1万人の輸送能力を持つとされています。両国の出入国審査施設が駅構内に共同で設けられる予定で、これにより乗客は一度出入国審査を通過すれば、到着側で改めて審査を受ける必要がなくなり、往来がぐっとスムーズになります。

試験開始の意味

今回の列車搬入をもって、RTS Linkは建設・インフラ整備の段階から プレ運行準備段階へと進みました。つまり、実際に走行させながらシステム全体の安全性や信頼性を検証していくフェーズに移行したということです。本格的な乗客なしの試験運行も始まり、複数列車が順次到着・検証される計画です。

2026年末の運行開始予定

RTS Linkの完成目標は、2026年12月末です。その後、2027年初頭には正式運行開始が見込まれています。マレーシア・シンガポールの両政府の協力のもと、日程は現時点で順調に推移しているとの見方が強いです。

現地の建設進捗は65%を超え、橋梁、線路、出入国施設、駅舎建築が着々と進んでいます。RTS社の責任者も「列車搬入は大きなマイルストーン」と現地の新聞に語っています。

経済効果と日常への影響

RTS Linkは単なる交通プロジェクトではありません。

ジョホールとシンガポールの経済圏を一体化する中核として期待されています。現在のシンガポールへの出勤者や商用往来の多い人々、ビジネス・観光交流の増加など、日々の暮らしと経済活動の質を大きく変える可能性があります。

例えば、現在数万台規模で行われている車による国境越えの渋滞は確実に緩和される見込みですし、不動産市場やサービス業の活性化にもつながると見る専門家も多いのです。

人々の距離を縮めるネットワークへ

30年近くシンガポール・マレーシアに住む身として、このRTS Linkの進展を見ていて、人と人との距離が確実に縮まっていく実感しています。従来の国境越えは時間と手間がかかり、家族や友人との往来も計画的でないと難しい面がありました。しかし、都市間をつなぐ快速な鉄道は、日常的な交流を当たり前のものにします。

生活者の視点では、通勤・通学ルートが変わり、新しい仕事や学びの機会が生まれるでしょう。観光客にとっても、気軽に両都市を行き来できる日が来る。そういう未来を、RTS Linkは少しずつ現実にしています。

象徴的な第一歩

今回、最初の列車がジョホールに到着したというニュースは、数字や進捗率以上に、私にはひとつの時代の節目として映りました。

30年近くこのエリアに住み、ジョホールとシンガポールの関係を間近で見続けてきた身として言えるのは、この2つの都市は”近いのに遠い存在”であり続けてきた、ということです。鉄道が通ることで変わるのは、移動時間だけではありません。

「行けるかどうか」を考えていた距離が、「行くか行かないか」を選べる距離になる。

この心理的な変化こそが、暮らしや働き方、人間関係の質を大きく変えていくのだと思い、大きな期待をしています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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