バンクーバー発、新たな「着物」ビジネスの扉

カナダ

日本の美しい文化の代表である「着物」は、バンクーバーでの需要が高い。筆者が現地で遭遇した3つの具体例を挙げながら、バンクーバーでの着物のビジネスの可能性について紹介する。

バンクーバー在住の日本人が着物を着る機会なんてないのでは?外国人が着物を使う機会はあるのか?など疑問を抱く方も多いのではないだろうか。

実は着付け教室、着物での記念撮影、着物を使った映画撮影、ヴィンテージストアでの販売、海外アーティストの制作活動への使用など、様々な方法で「着物」が取り入れられている。

バンクーバーでの「着物」の需要と可能性

    著者:カナダgram fellow 古川 紋 
公開日:2023年8月15日

バンクーバーで活躍する着付け師との出会い

バンクーバーで活躍する着付け師がいる。彼女は台湾出身で、約20年間母国で過ごし、日本に移住。着付けを学び、さらに20年後にカナダへ移った。

彼女はカナダに来たばかりの頃に「日系センター」という日本とカナダの歴史と関係をコンセプトにした施設で、着付け師としてボランティアを始めた。それがきっかけで着付けといえば彼女だとバンクーバーで名がしれ、着付けのビジネスをスタートさせた。
ビジネスは主に三軸に分かれている。

着付け教室

彼女はカナダで約40名もの生徒に着付けを教えてきた。実は筆者もその中のひとりだ。

生徒のメインは日本人。筆者のように海外生活をきっかけに日本の文化を学ぶ重要性や魅力を再確認し、着付け教室に通う日本人は多い。

着物での記念撮影

バンクーバーには約3万人もの日本人が住んでいる。卒業式や結婚式などの記念すべき日に着物を着て写真撮影したいという声も多い。彼女の自宅兼撮影スタジオには数え切れないほどの着物、帯や小物のコレクションがある。

着物を使った映画撮影

バンクーバーは映画撮影が各地で頻繁に行われている。その理由は、ハリウッドで撮影するよりも費用が安く住むから。美しい街並み、海、山の全てが揃っており、幅広いジャンルの映画の撮影ができるからだ。またバンクーバーが位置するブリティッシュコロンビア州は、映画やテレビなどの映像産業を積極的に誘致してきている背景もある。

映画撮影に着付け師が必要なときは、まず彼女に声がかかる。彼女が着付けを担当した代表的な作品は、真田広之さん、二階堂ふみさんなどが出演した「将軍」だ。米テレビ局F X制作のドラマで、2021年〜2022年に渡ってカナダで撮影が行われた。

メインキャストからエキストラまで全ての登場人物への着付けが必要だったため、彼女が着付け教室の生徒達を引き連れて着付けを行った。

ボランティアでの着付け師としての活動

上記に述べた日系センターでの夏祭りやイベント、バンクーバーで有名な公園のひとつクイーンエリザベスパークでの着付けショーなど、彼女はボランティアで数々のイベントに参加し続けている。

ヴィンテージストアで販売される着物

バンクーバーには多くのお洒落な古着屋がある。主に大きく3つのエリアに古着屋が集まっており、合計すると約40軒もの数になる。その3つのエリア以外にもあるので、全域の古着屋は50軒以上にのぼる。115km2という狭いバンクーバーの面積に対してこの件数は非常に多い。
(東京世田谷区の約2倍の面積です)

その中にはヴィンテージの着物を販売しているお店もある。

バンクーバーでのヴィンテージ着物の販売価格帯は85ドルから90ドルが相場だ。

購入者達はもちろん完璧に着付けするわけではなく、このように日常に着物をうまく取り入れている。またこちらのショップのオーナーいわく、自宅の壁に着物をインテリアとして飾る購入者も多いそうだ。

アーティストが着物の生地を制作に使用

バンクーバーは世界中から才能のあるアーティストが集まっている。街中にアートギャラリーや美術館がある。さらにカナダ人女流芸術家として最も有名と言っても過言ではない、エミリー・カーが設立した美術大学がある。そのためカナダ内の他の都市からもアーティストを目指す若者達が多く集まっている。

そんなアーティストの中でヴィンテージの着物を購入し、自身のアート制作に使っているアーティストがいる。彼女の作品は高く評価され、バンクーバー空港にも展示されている。

彼女に生地の入手方法を聞いたところ、オンラインで購入しているそうだ。しかも日本からではなくオーストラリアやアメリカなどがメイン。

彼女いわく日本から直接ヴィンテージの着物を買いたいが、そのルートが少なく見つけるのが難しいそう。

まとめ

筆者自身、日系センターでの夏祭りのイベントに浴衣の着付け会場のヘルプとして参加したことがある。着付け会場は大賑わいで、浴衣を着せてもらった海外の人々の表情はとても幸せそうだった。日本の文化の魅力と人を感動させるパワーを目の当たりにした。

ヴィンテージストアでの販売や才能あるアーティスト達によって、美しい日本の文化「着物」がバンクーバーに住む人々によって、独自の方法で取り入れられている。

以上のように多種多様の需要がある割に、日本のヴィンテージ着物をバンクーバーで入手するルートはまだ少ない。バンクーバーでの「着物」に関するビジネスは伸び代を秘めていると言えるだろう。

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