カナダのファーストフード店の時給は?急激なインフレに対応し続ける最低賃金
カナダの最低賃金の上昇が止まらない。
筆者の住むブリティッシュ・コロンビア(BC)州の最低賃金が2023年6月1日に改正され、$15.65から$16.75(およそ1,700円)に引き上げられた。
$12.65だった2018年から考えると、5年間で$4.10も上昇したことになる。
最低賃金上昇の背景にあるのは、急激な物価の高騰だ。
今回は、現在カナダが直面しているインフレの状況と、それに伴う最低賃金の上昇について解説する。
インフレ時代の最低賃金:カナダの雇用市場
著者:カナダgram fellow Murayama
公開日:2023年8月14日
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インフレ率の推移
20年間物価がほぼ変動していない日本に比べ、カナダの物価は年々上昇の一途を辿っている。特にここ数年の食料品のインフレ率は著しく、2022年5月~2023年5月の1年間で、卵8.2%、パン13.3%、野菜8.9%の上昇率を記録した。
(引用元:Statistics Canada – Consumer Price Index https://www150.statcan.gc.ca/t1/tbl1/en/tv.action?pid=1810000403)
カナダ統計局が2023年6月27日に発表した5月の消費者物価指数(CPI)によれば、ガソリン価格の低下により、今年に入って物価上昇率はやや鈍化しているものの、住居関連費や食料品等の品目ではインフレの高止まりが継続中だ。
(引用元:Statistics Canada – Consumer Price Index, May 2023 https://www150.statcan.gc.ca/n1/daily-quotidien/230627/dq230627a-eng.htm)
州ごとに異なる最低賃金
連邦制を採るカナダは、政治・経済・教育などのあらゆる分野において、各州が独自の制度を定めるユニークな国だ。法律、税率、教育、健康保険、祝日に至るまでのあらゆる制度が州ごとに異なる。
最低賃金についても同様で、下はサスカチュワン州の$14.00から、上はユーコン準州の$16.77と、国内でばらつきが見られる。
なお、昨今の著しいインフレに伴い、カナダ全土で毎年のように最低賃金の値上げが行われている。
州 | 金額 | 日本円換算 |
フェデラル(国) | $16.65 | 1,743円 |
アルバータ | $15.00 | 1,570円 |
ブリティッシュ・コロンビア | $16.75 | 1,754円 |
マニトバ | $15.30(2023年10月1日より) | 1,602円 |
ニュー・ブランズウィック | $14.75 | 1,544円 |
ニューファンドランド・ラブラドール | $15.00(2023年10月1日より) | 1,570円 |
ノースウェスト・テリトリーズ | $15.20 | 1,591円 |
ノバスコシア | $15.00(2023年10月1日より) | 1,570円 |
ヌナブト | $16.00 | 1,675円 |
オンタリオ | $16.55(2023年10月1日より) | 1,733円 |
プリンス・エドワード島 | $15.00(2023年10月1日より) | 1,570円 |
ケベック | $15.25 | 1,597円 |
サスカチュワン | $14.00(2023年10月1日より)→$15.00(2024年10月1日より) | 1,466円→1,570円 |
ユーコン | $16.77 | 1,756円 |
(引用元:Gouvernment of Canada – Current and Forthcoming General Minimum Wage Rates in Canada
https://srv116.services.gc.ca/dimt-wid/sm-mw/rpt1.aspx?GoCTemplateCulture=en-CA)
チェーン店の時給比較
カナダのファーストフードチェーン店の時給を見てみよう。一般的に、ファーストフード店の時給は最低賃金と定められていることが多い。
ここでは、BC州に絞って時給を調査した。
チェーン店名 | 時給(一般) | 時給(スーパーバイザー、マネージャー) |
マクドナルド | $16.75~ | $18.50~$26.45 |
ケンタッキー・フライド・チキン | $16.75~ | $18.00~$27.00 |
サブウェイ | $16.75~ | $18.00~$26.50 |
ピザハット | $16.75~ | $18.50~$26.45 |
ティム・ホートンズ | $16.75~$17.00 | $18.50~$26.45 |
店舗や職種によって時給は変わるが、基本的にはどのファーストフード店でも大差はないように感じた。
ちなみに「ティム・ホートンズ(Tim Hortons)」は、カナダ国民が愛してやまないコーヒー・ドーナツチェーン店で、日本のミスタードーナツにマクドナルドやサブウェイが合わさったようなメニューが特徴だ。
祝日手当
日本では、平日だろうが祝日だろうが支払われる給料は一定だが、諸外国では日曜日や祝日に働くと割増しになる場合がある。
カナダも例外でなく、「Statutory Holiday Pay(法定祝日手当、略してスタットホリデー)」という制度が採用されている。
【Statutory Holiday Payとは?(BC州の場合)】
・法律で定められた祝日に働いた場合、給料が1.5倍になり、さらに通常の1日分の給料も支払われる
・その日に休んでも通常の給料が支払われる
・ただし、雇用されてから30日以上が経過しており、その内15日以上勤務していることが条件
州ごとに祝日やスタットホリデーのルールが異なるが、給料が大幅に割増しになる有難い制度だ。
今後の最低賃金はどうなる?
(引用元:Statistics Canada – Consumer Price Index: Annual review, 2022
https://www150.statcan.gc.ca/n1/daily-quotidien/230117/dq230117b-eng.htm?indid=9305-1&indgeo=0)
上のグラフを見ると、2022年の消費者物価指数(CPI)は、前年度と比較し、全ての項目において上昇しているのが一目瞭然だ。特に、食料品は2.5%から8.9%にアップし、振れ幅が顕著である。2023年は今のところやや鈍化が見られるものの、高止まり傾向であることには変わりない。
それに伴い、今後も各州で最低賃金の引き上げが行われるだろう。