イタリア人はお風呂に入らない?日本とは違うお風呂習慣の違い
多くのイタリア人は毎日お風呂に入らない。そもそも浴槽がない家もまだまだ多い。筆者の住んでいる家も悲しいことに浴槽がない。いつかは浴槽のある家に住みたい、という夢はふくらむばかりである。今回はイタリアのお風呂の歴史やイタリア人がお風呂に入る頻度、日本のお風呂習慣との違いについて紹介する。
海外のお風呂事情:イタリア
著者:イタリアgram fellow たなかさき
公開日:2023年1月11日
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古代ローマ人はお風呂好きだった?
イタリアのお風呂の歴史は古代ローマまでさかのぼる。古代ローマ人はお風呂が好きだった。古代ローマのお風呂といえば、漫画や映画で大人気の「テルマエ・ロマエ」が思い浮かぶ。浴場設計技師である古代ローマ人が現代の日本の銭湯にタイムスリップして繰り広げるコメディで、「テルマエ・ロマエ」とはローマの浴場という意味である。
漫画の世界だけの話ではなく、現実に古代ローマ人はお風呂好きだった。その証拠に古代ローマ遺跡にはお風呂の遺跡も数多く存在する。
古代ローマの大衆浴場は紀元前1世紀ごろから始まっている。日本はその頃弥生時代で、土器を作って生活し稲作をスタートさせたところである。古代ローマでは、すでに大衆浴場を作る技術が存在していたのは驚きである。
大衆浴場には水風呂、温かい風呂、熱い風呂と3種類存在した。サウナや図書館、ジムのようなものを併設されている場所もあったとか。古代ローマのお風呂は日本の健康ランドのような場所だったのだ。大衆浴場は公共の社交場として古代ローマ人に親しまれていたのである。
現代イタリア人のお風呂
古代ローマではお風呂に入るのはとても自然なことだったようだ。では現代のイタリアではどうだろうか。お風呂の頻度やタイミング、そしてイタリア人にとってのお風呂とはなんなのかをみていこう。
イタリア人のお風呂の頻度
古代ローマ時代からお風呂をこよなく愛したイタリア人だが、現代ではどうなのだろうか。実は多くのイタリア人が毎日はシャワーを浴びないし、湯船にも浸かっていない。季節や仕事にもよるが、特に冬は汗をかく頻度も少ないためシャワーを浴びる頻度は2〜3日に1回程度である。
筆者の住む北イタリアは氷点下を下回る日も少なくないので、そんな日は温かいお湯に浸かりたいと思うものである。しかし家には浴槽がなかったり、あっても浅い浴槽だったりで、寒い日でも湯船に浸かる人は少ない。
イタリア人にとってのお風呂とは
イタリア人にとってのお風呂は、体をきれいにする場であって、リラックスする場ではないのだ。
仕事が終わって家に帰り、疲れた体を癒すために湯船に浸かってリラックスするのが、日本人にとってのお風呂の醍醐味である。筆者はイタリアに住んで、イタリア人にとってのお風呂の位置付けがそもそも違うことに気付いた。
お風呂に入るという行為は体をきれいにするためであり、湯船に浸かることもなければ、半身浴をしてデトックスをすることもない。もしお湯に浸かりたければ、スパに行って友達とおしゃべりしたりご飯を楽しみながら、半日〜1日滞在するようだ。
イタリア人のシャワーのタイミング
イタリア人は朝にシャワーを浴びることが多い。またはディナーやデートの約束があるなら、その前にシャワーを浴びてから出かけるのだ。イタリア人はどこかへ出かける前の身支度としてシャワーを浴びる傾向がある。
日本人は出かけた後、家に帰ってからお風呂に入ることが多いので、お風呂に入るタイミングも違っている。
イタリアの赤ちゃんの沐浴
日本では出産して退院後、毎日沐浴をしてあげましょうと言われる。助産師経験者の筆者も毎日沐浴してあげてくださいと母親たちに指導してきた。一方でイタリアはどうだろうか。筆者はイタリアで娘を出産し、当然のように毎日沐浴をしていた。
しかし義両親には「また今日も沐浴するのか」と言われたり、小児科医にも「毎日沐浴をしなくていい」と言われたり、新陳代謝が高い赤ちゃんもイタリアでは毎日沐浴をしないようだ。
赤ちゃんの肌は繊細なので硬水で毎日沐浴するとすぐに肌がカサカサになってしまう。今では筆者も2〜3日に1回沐浴をすることにしている。
なぜ毎日お風呂に入らない?
イタリア人はなぜお風呂に入らないのだろうか。知人にたずねたところ、日本人が毎日お風呂に入るのが当たり前なように、イタリア人の多くは毎日お風呂に入らないのが当たり前なのだ。もちろん汗をかけばシャワーを浴びるし、気が向けば湯船に浸かることもあるとのこと。ではなぜ毎日お風呂に入らないのか。以下で2つの理由を紹介する。
イタリアの水は硬水
イタリア人はなぜ毎日お風呂に入らないのか、それは水質が深く関係している。イタリアのほとんどの地域は硬水である。毎日シャワーを浴びると髪の毛が傷んでギシギシしたり、肌が乾燥したりするのだ。
軟水と硬水の違いはカルシウムやマグネシウムの含有量の違いだ。カルシウムやマグネシウムの含有量が多いため、日本の軟水とは質が異なっている。毎日お風呂には入らず、髪の毛や肌のダメージを避けているのだ。
光熱費が高騰
同国政府は2021年夏以降、合わせて約100億ユーロの光熱費対策を打ち出してきた。だが、エネルギー規制当局は21年12月末時点で、これまでの支援策でも1~3月期は前の四半期に比べ、家庭向けの電気料金が55%、ガス料金は42%上昇すると予想した。
引用: “イタリア、光熱費支援など計1兆円 減税や低所得層補助”
イタリアは家庭エネルギーの消費のほとんどがガスだ。ガス料金の高騰は家計に響く。筆者の家の電気代も2021年12月と比べると倍以上に上がった。
イタリアは原子力発電を利用しておらず、ガスが燃料の火力発電が中心だ。エネルギー資源に乏しく、需要の3分の2以上を輸入する。天然ガスは需要の9割以上を輸入する。
イタリアの天然ガスの主要輸入源はロシアだ。ウクライナ情勢の緊迫が長引くと、今以上にガスや電気代が高騰する可能性もあるだろう。光熱費の節約のために、ますますイタリア人はシャワーを浴びるのを控えるかもしれない。
お風呂は娯楽の場
しかしながらイタリアには火山も多いため、温泉が数多く存在する。日本のスパのようにサウナやジャグジーなども併設されている場所もある。
イタリア人にとってお風呂は、友人や家族と楽しい時間を過ごす娯楽の場なのだ。人々は屋外温水プールで水着を着て各々の時を過ごしている。
温泉で医者いらず
Mud mud glorious mud nothing quite like it for cooling the blood – perfect well being retreat #AbanoTerme #fango https://t.co/6J2PgYxDm3 pic.twitter.com/Y30fj8WzMd
— Grand Tourist (@GrandTouristUK) August 6, 2022
イタリアには約500〜600の温泉がある。筆者が住む北イタリアにも、アバノ温泉という有名な温泉保養施設がある。ローマ帝国時代から温泉地として知られている。
このアバノ温泉には、治療やリハビリ目的で訪れる人が多い。イタリア人にとって温泉は効能がより重要なのだ。
アバノ温泉ではファンゴ(温泉泥)セラピーが有名で、医師の処方箋があれば保険適用になる。リウマチや関節炎への有効性が立証されており、年間100万人もの人が訪れる。
まとめ
イタリア人は毎日お風呂に入らない。お風呂の位置付けが日本とは異なり、体を清潔に保つものとして考えている。日本のようにリラックスしたい時には温泉地やスパに足を運ぶようだ。
しかしイタリア人はきれい好きだ。汗をかいたり汚れれば1日に2回シャワーを浴びることもある。日本とイタリアのお風呂習慣の違いはあるものの、筆者のようなイタリア在住の日本人にとって、お風呂が恋しいのは変わりない。