見習いたい、アイルランドの働き方&労働環境

北米

アイルランドには「アルバイト」の概念がない。パートタイムとはアルバイトではなく、単に短い時間で働く労働者なのである。アイルランドにおいて、労働者はどのような権利があり日本とどう異なるのか、アイルランドの雇用について述べていく。

見習いたい、アイルランドの働き方&労働環境

    著者:イギリスgram fellow リリーゆりか
公開日:2024年2月19日

アイルランドには「アルバイト」がない!!

アイルランドには俗に言う「アルバイト」という概念がない。日本人がアルバイトという言葉を使うのをアイルランドでもよく聞くが、厳密に言うと認識が異なる。

まず、アイルランドの就労についてはパートタイム・フルタイムの2種類に分けられる。その中で、パーマネント(無期雇用)なのかテンポラリー(有期雇用)なのかという分類である。パートタイムとフルタイムの違いは労働時間であり、それに伴って有給の計算方法なども変わってくるが、基本的な労働者としての権利は両者とも同じである。定義として、週30時間以上、月130時間以上勤務する従業員をフルタイム、それ以下の時間で働く従業員をパートタイムと呼ぶ。また、雇用契約の中に雇用契約終了の期限が決まっていればテンポラリー、決まっていなければパーマネントと非常にシンプルである。

(引用元:Staff-Wanted: The difference between permanent and full-time jobs
https://www.staff-wanted.net/2019/09/difference-permanent-temporary-casual-fulltime-parttime-job-contract-types.html

(引用元:Identifying Full-time Employees | Internal Revenue Service
https://www.irs.gov/affordable-care-act/employers/identifying-full-time-employees#:~:text=Definition%20of%20Full%2DTime%20Employee,hours%20of%20service%20per%20month.

有給が多く取りやすい環境

筆者はアイルランドで就職して、有給の多さと取りやすさにとても感動した。有給計算の方法が労働時間によって定められており、祝日に休みの職場でも給与が支払われる。

細かい計算方法があるのだが、ざっくり紹介するとほとんどのフルタイム労働者は最大4週間の年次有給休暇を取得できる。パートタイム労働者の場合は、実際に働いた労働時間の8%の時間数を有給として消化できる。同じ職場で8ヶ月以上働いていれば、連続した2週間の休暇が取れる権利もあり、辞める際や年度の最後に、消化できなかった全ての有給は最後の給与と一緒に支払われる。これらは法律で定められているので、守らない雇用主に対して労働者から申し立てをする権利がある。

(引用元:Annual leave https://www.citizensinformation.ie/en/employment/employment-rights-and-conditions/leave-and-holidays/annual-leave/#:~:text=Most%20employees%20are%20entitled%20to,in%20your%20contract%20of%20employment.

飲食業界に多い現実

残念なことに泣き寝入りせざるを得ない時もある。特に日本食レストランなどのアジアレストランに多いが、雇用契約をしっかり交わさない現金支払いの職場では、有給どころか最低賃金さえ守られていないところがある。このような職場は、労働法に定められている解雇の事前通知期間すら守られず、突然解雇されることもある。アイルランドは留学生が多く、このように労働環境が整備されていない職場でさえ次から次へと応募があり、労働者をコマのように切り捨てる雇用主もいるのが現実だ。アイルランドの労働法に詳しくなく、語学がまだままならない留学生からすれば泣き寝入りしかないようだ。

最低時給の著しい上昇

アイルランドの物価は高く、特にガスや電気などのエネルギー、家賃は高騰している。アイルランドの労働組合は物価上昇に対応すべく、最低時給をここ数年大きく引き上げている。2022年は10.50ユーロだったのが2023年には11.30ユーロ、今年2024には12.70ユーロにまで上がった。ここ2年で約340円ほどの最低時給上昇である。

(引用元:Minimum wage https://www.citizensinformation.ie/en/employment/employment-rights-and-conditions/pay-and-employment/minimum-wage/

2026年生活賃金の導入

アイルランド政府は、2026年までに最低時給に代わって生活賃金(The Living Wage)という新しい賃金制定方法を導入予定である。これまで労働組合との合意によって定められてきた最低時給であったが、生活賃金が導入されれば、物価と最低の生活ができる生活費のデータを元に毎年の最低賃金が算出される。

(引用元:Living wage in situ by 2026 https://forsatradeunion.newsweaver.com/designtest/10xchxekmjf

年齢、性別、国籍、顔写真は履歴書に載せてはいけない

アイルランドだけではないが、日本での就職活動における違いとして、求人時点での履歴書への年齢、性別、国籍、顔写真の記載を求められることはなく通常記載しない。人種や性別、年齢や見た目を理由に雇用することが法律で禁じられているからである。全ての人が同じフィールドに立てるため、経験や学歴(学校のレベルではなく学位)、資格やスキルを履歴書1枚でいかにアピールできるかが軸になってくる。また、アイルランドは紹介などのコネも根強い。

アイルランドにおけるワークライフバランスの重視

先述したように、アイルランドでは全ての労働者の権利が法律によってしっかりと守られている。その上で、自分のライフスタイルや必要収入に合わせてパートタイムかフルタイムかを選択して働いている。パンデミックが明けてからもリモートワークを続けている会社がほとんどで、郊外に住もうが子どもがいようが働きやすくなった。ワークライフバランスを重視する傾向は、世界的にも今後ますます加速すると考えられ、アイルランドも遅れを取るわけにはいかずさらに改善されると見ている。

まとめ

アイルランドの賃金や労働環境はヨーロッパ諸国の中でも評価が高く、ヨーロッパや南米からの移民が非常に多い。英国がEUを離脱した今はなおさらである。労働者の権利がしっかりと整備されているアイルランドの労働環境やワークライフバランスの取り方を日本においても取り入れてほしい。世界共通語になってしまった「過労死」という日本語を打ち消そうではないか。

リリーゆりか

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アイルランド在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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