フィリピン自動車産業を牽引するTMPの未来とは

フィリピン

近年フィリピンでは、マルコス大統領の政権下で中国自動車メーカーを中心とした「BEV」によるカーボンニュートラルが推し進められており、各自動車企業の競争が激しくなっています。そんな中、TMP(TOYOTA Motor Philippines Corporation)は、フィリピンの自動車産業において21年連続売り上げNo.1と不動の地位を確立しており、フィリピン経済の雇用と外貨を生み出す取り組みに貢献してきました。今後、TMPは水素やハイブリッドなどのフィリピンインフラ事業に合わせたマルチウェイな仕掛けで更なる業績向上を図ろうとしており、フィリピン自動車産業の出口戦略の鍵を握るべく奮闘しています。そこで今回は、TMPがこれまで成し遂げてきた功績と、今後のフィリピン自動車市場に対する未来戦略について言及します。

フィリピン自動車産業を牽引するTMPの未来とは

   著者:フィリピンgramフェロー アルト
公開日:2023年 11月27日

TMPの自動車販売実績

フィリピン自動車製造業者会議所(CAMPI)のデータによると、CAMPIが2022年に販売した35万2,596台のうちTMPは17万3,245台を占め、市場シェアは49.13%(高級ブランド「レクサス」の数値は除く)となっています。

TMPはまた、2022年の自動車ベストセラートップ10に8モデルもランクインしており、サブコンパクトセダンのトヨタ・ヴィオスは3万4465台を販売し1位に、続けてハイラックスが2万4,537台、イノーバが1万7,810台となっています。

TMPは、乗用車販売、商用車販売、総合販売で第1位となり、21年連続三冠達成をしております。TMPの長年の功績によって、フィリピン全体でのTOYOTA自動車利用率は約50%と驚異の数字を叩き出しています。

(参照:AutoFan https://www.autofun.ph/news/toyota-still-topselling-automaker-in-the-world-in-2022-also-1-in-the-philippines-62023

TMPの外貨獲得功績

TMPではフィリピン経済の外貨を生み出すべく、世界各国へ輸出するためのトランスミッション(変速機)の製造がおこなわれています。トランスミッションは車が必要とする回転数やギアの組み合わせを変化させる機構で、自動車を効率よく走らせるために必要不可欠な存在です。自動車部品の中でも最も製造が難しく精密な技術が必要なことから非常に価値が高く、TMPのトランスミッションによる外貨獲得額は29億ドル(4,350億円)にも上るとされており、今後もフィリピンで安定的な外貨を獲得するための手段として製造を続けるしています。

フィリピン経済と車

1人当たりのGDPが約3,000米ドル(約450,000円)に達するとモータリゼーション(社会に自動車が普及する)が加速すると言われており、CEICのデータによるとフィリピンの1人当たりのGDPは昨年2022年には3,623.316米ドル(約543,450円)に到達しました。フィリピン自動車製造者会議所(CAMPI)では2023年は既に前年比の9.5%増の3万8,628台となっており、2023年全体を通して42万3,000台(昨年比20%増)を見込んでいます。今後フィリピン全土でますます自動車の普及がおこなわれ、フィリピン経済の底上げが期待されます。

(引用元:CEIC https://www.ceicdata.com/ja/indicator/philippines/gdp-per-capita

今後のマルチウェイなTMPのフィリピンでの戦略

2022年5月に「電気自動車(EV)産業育成法」がフィリピンで成立し、EV産業の国家戦略を大規模なプロジェクトベースで進めていくことから、TOYOTAは「モビリティの状況が国ごとに異なるのと同様に、カーボンニュートラルを達成するための道筋も異なる」と断言し、さまざまな使用ニーズ、経済状況、エネルギー源、インフラ整備状況に対応するためハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)、燃料電池電気自動車(FCEV)、水素燃焼エンジン等、全方位ラインナップでさまざまなオプションの開発を進めています。

また東南アジアでの力強い成長を見込んで、新興国市場向けに設計された2つの新型モデルを開発するため、フィリピンへの投資を44億ペソ(約110億円)増額すると発表し、フィリピン国内のいたるところに普及しているミニバスタクシー、ジプニーのバージョンを含む新モデルを発表しました。早ければ2024年にもTMPでの生産が開始される予定です。

(引用元:International Bussiness Magazine https://intlbm.com/2023/09/13/toyotas-multi-pathway-approach-to-sustainable-mobility/

まとめ

TOYOTA自動車の豊田章男会長は、TMPの設立35周年を記念してマニラで開催された式典で「ビジネスと技術の両面で、ここフィリピンには大きな成長の可能性があると心から信じている」と、自動車製造業がフィリピン経済への重要な貢献者であるとして「産業界と政府の継続的な協力」により自動車製造へのさらなる投資が期待できると述べています。今後「BEV」によるカーボンニュートラルの実現がフィリピンで推し進められる中で、TMPがどのように50%にも上るフィリピンシェアを守るのか注目が集まります。

アルト

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フィリピン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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