配車アプリGrabがデジタル銀行始動!フィンテック領域へ
マレーシア発の配車サービス「Grab(グラブ)」とシンガポールの通信最大手「Singtel」によるインターネット専用銀行の「GXSバンク」が、9月5日からサービスを始めました。
マレーシアでは、2021年4月にGrabとSingtelとの企業連合にすでにデジタルバンキングのライセンスを与えています。
今回の記事では、フィンテックへとその領域を拡大しているスーパーアプリ「Grab」やその他のシンガポールのデジタル銀行についても紹介します。
配車アプリGrabがデジタル銀行始動!フィンテック領域へ
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2022年12月19日
普通預金サービスのGXS Savings Account
GXSバンクは8月31日、顧客が最低残高要件なしで利息を得られる普通預金サービスのGXS Savings Accountを立ち上げました。これは、300万人以上のシンガポール人が利用するGrabとSingtelの両社の強みを活かして、銀行口座を持たない層を含む顧客にサービスを提供するのを目的としています。
また、Grabは6月にも金融サービスの新ブランド「GrabFin」を立ち上ています。
Grabアプリ上の電子決済、保険、融資および資産管理サービスの一本化を目指し、同社が手掛けるデジタルバンク以外の金融サービスの親ブランドとなります。今回のデジタルバンクも含め、シンガポールとマレーシアで先行公開した後、東南アジアの主要国で金融事業の早期拡大を目指していく予定となっています。
5陣営にインターネット専業銀行の免許
シー(電子商取引大手)とマレーシアの複合企業YTLの連合、イオンフィナンシャルサービスとイオンクレジットサービスマレーシアの連合、マレーシアの通信大手アシアタ・グループとRHB銀行の連合と、もう1つの企業連合の計5陣営にインターネット専用銀行の許可が下りています。残りの4陣営も今後、準備を進め1~2年後を目途に開業する見通しです。
既存銀行に対抗できるか
シンガポールとマレーシアの両国には、強力な資金力と多くの顧客を持つ既存の有力な商業銀行が存在しており、彼らもコロナ禍以降急速にデジタルバンク化が進んでいるため、新設となるデジタルバンクの今後の展開は容易でないといった見方もあります。
しかし、「GrabPay」を有する配車サービスのGrabと、モバイル決済サービス「Singtel Dash」を持つ通信最大手のSingtel連合には、非常に多くの利用者がおり、既存銀行にはできない顧客ニーズをつかんだ魅力あるサービスが提供できれば、存在感を高める可能性は十分にがあるといえます。
また、スマホさえあればいつでもどこでも取引が開始できるデジタルバンクは、既存銀行に不満を持つ者をひきつける可能性が高いとも考えられます。
収益の新たな柱に
Grabの2022年の上半期の損失は約1360億円で、配車サービスとデリバリー事業はまだ黒字化されていません。ただ、Grabの上半期の売上高は前年同期比で39%増の770億円で、金融サービスの貢献額は33億円と、全体の4.3%だが前年同期比では71.4%急増しています。
デジタルバンクはGrabが金融サービス分野に進出するための理想的な手段で、世界で最もスマートフォンの普及率が高いシンガポールにぴったりで、市場の評価も高いとエコノミストは述べています。
スーパーアプリ
屋台飯の支払いから公共料金、スーパーでの支払いなどほぼ携帯で済ませる現在では、モバイル決済が急速に主流になっています。
使い勝手がよく何にでも使えるスーパーアプリであるGrabの真価はこれから問われ、より力が発揮されるのではないでしょうか。