「日本車王国」フィリピンに異変!?急成長する中国BYDと王者トヨタの最新勢力図(後編)

筆者が暮らすフィリピンでは、ここ1年ほどで明らかに見かける車の顔ぶれが変わってきました。フィリピンの自動車市場で「電動化率が1年で倍増」という異変がありBYDの急成長と日本車の動向を、最新データとシェア推移から具体的に読み解きます。市場縮小下でも伸びる理由と、今後の勢力図の変化が見えてきます。
「日本車王国」フィリピンに異変!?急成長する中国BYDと王者トヨタの最新勢力図(後編)
著者:フィリピンgramフェロー たこ坊
公開日:2026年 10月12日
市場の電動化率は1年で倍増——2026年の最新動向


BYDの躍進は、フィリピン市場全体の電動化の波と重なっています。
2025年の電動車(ハイブリッド・PHEV・EVの合計)販売は58,905台と前年比142.5%増。市場に占める比率は2024年の5.5%から12%へと、1年でほぼ倍増しました。CAMPIは2026年もこの比率がさらに高まると見込んでいます。
(引用元:Philstar.com │ Vehicle sales accelerate to record high last year
https://www.philstar.com/business/2026/01/26/2503435/vehicle-sales-accelerate-record-high-last-year)
そして、2026年に入ってからの動きがまた興味深いのです。2026年1〜4月の市場全体は前年同期比13.2%減の135,958台と、ローン審査の厳格化や燃料価格の上昇などで冷え込みました。ところがブランド別に見ると、明暗がくっきり分かれています。
つまり、市場が縮小する逆風下でも、BYDだけがプラス成長を続けているのです。調査会社Focus2Moveの集計によるEVセグメント(上位をBEV専業ブランドが占めており、バッテリーEV中心の集計とみられます)に限れば、BYDのシェアは55%と過半を握っています。一方、ハイブリッドを含む「電動車」全体では、2025年にトヨタがHEV販売首位(19,596台)を維持しており、集計範囲によって勢力図の見え方が変わる点には注意が必要です。
(引用元:Focus2Move │ Philippines Vehicles Market – Facts & Data 2026
https://www.focus2move.com/philippines-vehicles-market/)
(引用元:Philippine Daily Inquirer │ Philippine car sales hit new record in 2025
https://business.inquirer.net/570580/ph-car-sales-hit-new-record-in-2025)
今後の勢力図はどうなる?——筆者の見立て
ここまでの数字を整理すると、今後のフィリピン市場は次のように動くと予測されます。「商用車では日本車優位が続き、乗用車では勢力図が変わる」という二つの流れが見えてきます。
短期的には、日本車の優位は揺らがないでしょう。 トヨタのシェアは46〜49%と圧倒的で、2025年も前年比プラス成長を維持しています。なお、フィリピンの新車販売の約74%は統計上「商用車」カテゴリーが占めますが、これはSUV・MPV・クロスオーバーまで含む広い区分です。そのうちピックアップトラックや商用バン、トラックといった文字どおりの「働く車」の領域では、耐久性・リセールバリュー・全国津々浦々の整備網という日本車の強みが直接効いてきます。BYDもピックアップ「シャーク6」を投入していますが、業務用途での実績づくりはまだこれからと言えそうです。
一方、乗用車・ファミリーカーの領域では、勢力図の塗り替えが加速しそうです。 BYDの成長率(2025年+446%、2026年1〜4月+55%)と、電動車比率の倍増ペース(5.5%→12%)を踏まえると、数年以内にBYDがシェア10%前後まで伸びるシナリオは十分に現実味があります。気になるのは三菱の減速です。2025年に▲2.6%、2026年1〜4月には▲35.4%と落ち込みが目立っています。その一因として、BYDの主戦場である手頃な価格帯の乗用車・小型SUVと顧客層が重なっていることが考えられますが、モデル切り替えの端境期など、ほかの要因も影響している可能性があります。いずれにせよ、トヨタとの差よりも先に、2位・三菱とのシェア差が縮まっていくのではないでしょうか。
もっとも、不確定要素もあります。EVの関税ゼロ措置は2028年までの時限措置であり、期限後に関税が復活すればBYDの価格優位は一定程度削がれます。また、充電インフラは首都圏や一部都市部に偏っていると報じられてきました。筆者の生活実感としても、地方の充電スポットはまだ数えるほどしかありません。BYDがPHEV(充電がなくてもガソリンで走れるプラグインハイブリッド)を売れ筋に育てているのは、まさにこのインフラ制約への現実的な回答だと言えます。

(引用元:AutoIndustriya │ Philippine Auto Sales 2025: 492,558 vehicles sold, up 3.77%
https://www.autoindustriya.com/features/philippines-auto-sales-2025-492-438-vehicles-sold-up-3-74-percent.html)
(引用元:Focus2Move │ Philippines Vehicles Market – Facts & Data 2026
https://www.focus2move.com/philippines-vehicles-market/)
まとめ
長年「日本車王国」と呼ばれてきたフィリピンで、BYDは2025年に販売台数26,122台・前年比446%増を記録し、ブランド別3位にまで躍進しました。それでもトヨタ46%・三菱18%という日本勢2強の壁は依然として高く、市場全体で見れば日本車優位の構図は当面続くと考えられます。
ただし、電動車比率が1年で5.5%から12%へ倍増したという事実は、この市場の地殻変動がすでに始まっていることを示しています。トヨタの牙城とBYDの成長曲線がどこで交わるのか——フィリピンの道路の風景とともに、筆者もこの勢力図の変化を定点観測していきたいと思います。フィリピン市場の今を知る一助となりましたら幸いです。























