富裕層移住先、急変の裏側を解説

シンガポール

あなたは、ビジネスの拠点として最適な都市をご存知ですか?3,580億円規模のマネーロンダリング事件後、アジアの金融ハブの勢力図が大きく変わりつつあります。かつて富裕層の憧れだったシンガポールから、なぜ彼らは逃げ出しているのでしょうか?そして、香港はどのように富裕層を呼び戻しているのでしょうか?
グローバルビジネスの舞台裏で起きている驚くべき変化と、あなたのビジネス戦略に活かせる重要な洞察をお届けします。

香港vsシンガポール 富裕層争奪戦

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 9月13日

コロナ禍以降シンガポールへ流出

調査会社と移住コンサルティング会社の調査によると、直近の巨額なマネーロンダリング事件を受けて、人気が集中していたシンガポールのファミリーオフィスや、富裕層の移民に対しての精査が強化されているようです。

一方、コロナ禍から富裕層の脱出が続いていた香港は、ファミリーオフィスへの税金に軽減措置を行ったり、ビザや居住プログラムなどの取り組みを進めた結果、中国人の富裕層を取り戻しつつあるようです。

約3,580億円のマネーロンダリング

このマネーロンダリング事件は、シンガポールの歴史の中で最大規模のもので、約30億シンガポールドル(約3,580億円)に相当するします。

2023年8月、シンガポールの捜査当局は、大規模なマネーロンダリングの捜査を実施し、10人の容疑者を逮捕しました。これらの容疑者は、中国を拠点とする犯罪組織に関与しており、不正な賭博リングから得た資金をシンガポールの金融システムを通じて合法化しようとして発覚しました。

事件の影響

この事件は、クリーンで評価の高かったシンガポールのビジネス環境に対して、その信頼を損なえるような影響を与えました。

シンガポール政府は、マネーロンダリング防止策を強化するために、取り組みを強化しており、金融機関間での情報共有を改善したり、国際協力の強化を進めていく方針を示しています。また、この事件を迅速に処理し、関与者に厳しい刑罰を課しています。

しかし、この事件は、シンガポールの金融システムの脆弱性を露呈してしまいました。

中国人富裕層に不快感を与える

この事件は、シンガポールに国際的なマネーロンダリング防止対策の重要性を再認識させるものとなり、取り組みの強化につながっています。

一方で、富裕層の中国人に、資金移動の規制や審査の厳格化が進んだことで、不快感を与えてしまい、中国の富裕層がシンガポールを避けて香港に戻る現象が生じています。

香港の魅力的な政策

香港は、失っていた富裕層を引きつけるための政策を強化しています。

例えば、最近開始された投資家向けの居住プログラムでは、3,000万香港ドル(約6億650万円)以上を投資することで居住権を取得できるようにしており、これまでに340件以上の申請があり、これにより、香港には巨額な資金が流入する見込みです。

安定した政治環境

香港が中国本土との近い地理的な優位性と経済的結びつきを活かし、さらに柔軟な移民政策を取り入れ、富裕層に対する審査を緩和し、多くの中国人富裕層を引きつけることに成功する可能性は高く、これにより、香港はシンガポールに対する競争優位性を高めることができるでしょう。

しかし、シンガポールは、政治的に安定した環境を提供し、法の支配が強固であるため、富裕層にとって魅力的な目的地であり続け、東南アジアのみならず、世界から富裕層を集めることに成功していくでしょう。

シンガポールと香港の富裕層誘致競争は、それぞれの政策と国際的な動向に大きく依存しています。今後、両地域がどのように国際動向に適応し、競争優位性を確保していくかが注目されます。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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