シンガポール、航空旅客に「SAF税」導入へ

シンガポール政府が、2026年10月から航空旅客に対して「SAF税」を徴収する方針を明らかにしました。対象となるのはシンガポールの空港から出発する旅客です。SAF税の導入は世界で初めてです。
今回はこの記事を深掘りします。
(引用元:Air travellers departing Singapore to pay up to US$32 in green fuel levy | South China Morning Post
https://www.scmp.com/news/asia/southeast-asia/article/3332277/air-travellers-departing-singapore-pay-us32-green-fuel-levy)
シンガポール、航空旅客に「SAF税」導入へ
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年 04月22日
「SAF」とは何か

SAFとは、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の意味で、廃食油やバイオマス、将来的には合成燃料などから作られる次世代型航空燃料です。従来のジェット燃料と比べて、ライフサイクル全体でのCO₂の排出量を大幅に削減できるとされています。
ただし、現状では価格が高く生産量も限られていて、一般的に従来燃料の2~4倍のコストとされ、航空会社単独での導入拡大は難しいのが実情です。
そこでシンガポールは、利用者も少しずつ負担するという形で普及を後押しする仕組みを選びました。
アジアのハブ空港としての責任
チャンギ国際空港は、東南アジア最大級のハブ空港です。2025年の利用者数は約6,998万人と過去最高を記録しました。
私自身、シンガポール在住時から何十回もこの空港を利用してきましたが、世界の縮図のような場所だと感じてきました。ビジネス客、観光客、出稼ぎ労働者、家族旅行。あらゆる人が交差しています。だからこそこの新たな制度がここで始まるのは象徴的です。この制度には航空業界の脱炭素化を加速させる狙いがあります。環境負荷を企業のみに任せるのではなく、利用者も意識する仕組みに変えるというそのメッセージ性は大きいでしょう。
旅行コストはどうなるのか
気になるのは負担額ですが、報道によると、旅客が支払う追加費用は数ドルから十数ドル程度になる見込みです。距離によって変動するので長距離便ほど負担は大きくなり、最大で41.60シンガポールドル(約5,100円)までになると伝えられています。SAF税は航空券の販売日に適用される予定です。
たしかにチケット価格が上がれば旅行需要に影響が出る可能性は出てくるでしょう。ただ、シンガポールの場合、航空業界は国家戦略の柱であり、単なる値上げではなく将来の競争力への投資という位置づけと考えられています。日本や韓国もSAF導入を進めていますが、国家主導で旅客への課金まで踏み込む例はまだありません。
東南アジアへの波及は?
マレーシア在住の立場から見ると、この動きは無視できません。
クアラルンプール国際空港も近年環境対応を強化していますが、SAFの義務化や旅客課金はまだ具体化していません。ただ、シンガポールが制度を始めれば、競争上の観点からもマレーシアや周辺国も同じような制度を採用する可能性があります。
航空機は国境を越える産業なので、どこか一国だけが進めても効果は限定的でしょう。世界を代表するハブ空港が動くことで、地域全体の基準が引き上げられるかどうかが今後の焦点になります。
理想論で終わらせない
私はアジアで30年近く暮らしてきましたが、移動の自由がもたらした恩恵を強く感じています。日本へ、アジアへの出張に、旅先に。飛行機がなければ今の仕事も生活も成り立ちません。だからこそ、脱炭素は理想論ではなく『現実の選択』なのだと感じています。SAF税は小さな負担ですが、チケットを買う時にほんのわずかでも環境のことを思い出すきっかけにはなるでしょう。その積み重ねが航空の未来を決めていくのでは、そう強く感じるニュースでした。






















