マレーシア版GoTo Travel「トラベルバブル」急遽導入の背景
マレーシアのムヒディン首相は2020年10月6日、新型コロナウイルス感染率の高い地域に絞ってロックダウン(都市封鎖)を実施すると発表した。10月9日より条件付き行動制限令(CMCO)が発令され、スランゴール州、クアラルンプール及びプトラジャヤの全域にて実施されているCMCOは12月6日まで延期されることが発表されている。
マレーシア版GoTo Travel「トラベルバブル」急遽導入の背景
著者:gram 福田 さやか
公開日:2020年12月7日
これにより制限されるのは以下の項目となっている:
1 移動関連
- レストランでの飲食及び生活必需品を購入するための外出は、車両による外出を含め、1世帯につき3名まで
- CMCO対象地域の地区(district)又は州をまたぐ移動の禁止
2 店舗等の営業時間関連
- スーパーマーケット、ショッピングセンター、小売店(午前6時から深夜12時)
- レストラン、ショップ、屋台、フードトラック、フードコート、キオスク、食料品店、コンビニエンスストア(午前6時から深夜12時)
- 市場(午前6時から午後4時)
- 卸売市場(午前零時から午後5時)
- ファーマーズマーケット(午前6時から正午)
- ナイトマーケット(午後4時から午後10時)
- ガソリンスタンド(午前6時から深夜12時)
- タクシー、e-hailingサービス(最大2名まで)、フードデリバリー(午前6時から深夜12時)
- ノンストップバス、高速バス、LRT、MRT、ERL、モノレールは通常どおりの運行が可能
- 診療所・病院(24時間)
- 薬局・ドラッグストア(午前8時から深夜12時)
- コインランドリー(午前6時から深夜12時)
- SOP(Standard Operating Procedure:政府が決めた規定)で列挙されていない部門(午前6時から深夜12時)
3 経済活動関連
- 経済産業部門の活動はSOPに準拠して実施が可能
- 漁業、プランテーション、農業、畜産、食品流通に関連する全てのセクターの運営は可能
- 全ての空港・港での活動とサービスの運営は可能
- 雇用主は、公務員については人事院(JPA)通知、民間部門の従業員については業務継続計画(Business Continuity Plan)で示されたカテゴリーを除き、従業員を在宅勤務させる義務あり
4 その他の活動
- 全ての観光、レジャー、レクリエーション、文化活動の禁止(ナイトクラブ、パブ、レクリエーション施設、テーマパーク、屋内の遊び場、映画館、コンサート、観客のいるイベントなどの娯楽活動も禁止)
※グリーンゾーン間の旅行はOK - 水泳、身体的接触、格闘技、スポーツ/トーナメント(観客の前でのスポーツイベントや競技会、海外からの参加者が参加するスポーツイベントや競技会)の禁止
- 学校、幼稚園・保育園、私営・公営の高等教育機関の閉鎖
- 塾、音楽教室、ダンス教室、語学教室等は許可されない
- 展示会等に関連するセミナー、ワークショップ等や式典、誕生会、同窓会、懇親会の禁止
- 政府及び民間組織による、部外者が参加する対面式の会議の禁止
このように、マレーシア政府が首都を中心に引き締めにかかっている背景には、11月24日に1日の新規感染者数が2188人と過去最多を記録するといった、感染の広がりがある。 実際、筆者もマレーシアで複数の市場調査を実施しているが、現地でのインタビューがロックダウンのために困難を極め、通常通りの調査の実施が難しくなっている側面があり、この深刻さは手に取るように伝わってきている。
マレーシア版GoToトラベル「トラベルバブル」が決定
そのような中、マレーシア版GoToトラベル「トラベルバブル」が決定されたというニュースには、大変驚いた。
マレーシアの国内観光産業が国内総生産(GDP)に占める割合は3番目に大きい約15.9%に上っており、20%を占めるタイほどではないにしても、観光産業は重要な基幹産業である。コロナの感染拡大により、ホテルや旅行代理店など観光産業に関連する200社以上が閉鎖されたという報道もあり、マレーシアの観光産業は大打撃を受けている。
これはつまり、マレーシア経済への大打撃でもある。
こうした中、2020年11月22日からマレーシア版GoToトラベル「トラベルバブル」が始まった。原則として、観戦者数がゼロの地域間の移動を促進するものとなっている。
「トラベルバブル」とは
この「トラベルバブル」の承認は、11月20日に、イスマイル・サブリ・ヤコブ安全保障上級大臣が発表している。
記者会見でヤコブ氏は、これは条件付き移動規制命令(CMCO)の下でグリーンゾーンに住んでいる人が他のグリーンゾーンに旅行したい場合にも適用されると述べた。「例えば、ネゲリ・センビランはタンピン以外はレッドゾーン。タンピンは緑です。だから、タンピンにいる人がパハンに行きたい場合は許可する。しかし、彼らはレッドゾーンを通過しなければならないので、警察から許可を得なければなりません。」「また、彼らは途中でレッドゾーンに立ち寄ることは許されていない。彼らは目的地に直接向かう必要があります 」としている。
同様のことが、現在回復MCO(活動制限令)の下にある州内や州間を旅行する旅行者にも適用される。 「例えば、パハンからジョホールへ旅行したい人がいた場合、ネゲリ・センビランを経由しなければならないかもしれません。そのため、まず警察の許可を得なければなりません。」
また、このグリーンゾーンから来ているかを判断するためにアプリ「MySejahtera」が開発されており、旅行者が本当にグリーンゾーンから来ているかどうかを示すことができるようになっているという。
観光・芸術・文化大臣ダトゥク・セリ・ナンシー・シュクリ氏は、これは「国の観光セクターが回復し、活発であることを確実にするための政府の努力の一環である」と述べている。
同大臣は、このイニシアチブが観光再生計画の下での3つの主要戦略、すなわち、旅行に対する国民の信頼を回復し、国内観光の復活に焦点を当て、また、利用可能なリソースを最大限に活用して、よりクリエイティブな旅行提案を考え出すことに沿ったものであると述べ、「今日、国内トラベルバブルのための規定(SOP)が承認されました。このイニシアチブは、国内のグリーンゾーン間の移動のための許可を与えるもので、国内観光産業への貢献度は非常に大きい」とした。
また、同省は、宿泊施設、交通機関、工芸品の購入の割引をカバーするいくつかのイニシアチブを準備している模様である。
同大臣によると、マレーシアバジェットホテル協会(MyBHA)による2つのキャンペーン、3つ星以下のホテルを対象とした “Jom Nginap “と “Malaysia Welcomes You “では、62,500件の予約に限定して、キャッシュバックやTouch ‘n Goクレジットの形でRM20のリベートが提供されるという。Jom Nginapキャンペーンのオファーは12月31日から来年3月まで、マレーシア歓迎キャンペーンは4月から6月までとなっている。
また、同大臣はマレーシア航空、エア・アジア、ファイアーフライ、マリンド・エアと共同での “Cuti-Cuti Malaysia “キャンペーンにもRM50の割引を提供したと述べた。
“Cuti-Cuti Malaysia “では、例えば、ファイアーフライを含むマレーシア航空では、エコノミークラスとビジネスクラスの往復航空券購入に対し、片道でRM50、往復でRM100の割引を実施しており、合計9,000席が対象となっている。エア・アジアも最大2万4000人の乗客を対象に、航空券購入時にRM50のリベートバウチャーを提供している。一方、マリンド・エアは先着6,000名の登録ユーザーにRM50の限定割引を提供している。
吉と出るか、凶と出るか
日本では、アクセルとブレーキを同時に踏むようなGoTo政策は第3波を引き起こしたとも言われているが、マレーシアの首都ロックダウン下でのトラベルバブルは吉と出るか、凶と出るか、見守っていきたい。どこの国も経済を回しながらコロナを抑制することには苦慮していることがうかがえる。
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