最新ガソリン状況について緊急レポート【シンガポール】

シンガポールとマレーシアのジョホールをつないでいるコーズウェイを渡ったことがある人なら、あの橋の上の渋滞を知っているでしょう。週末の朝、シンガポール側からマレーシアへ向かう車列は、以前はショッピングや食事が目的の大半でした。ジョホールバルはずっと、シンガポール人にとっての”お得な裏庭”でした。それが2026年の春、その車列に新しい目的が加わっています。ガソリンを入れに行く、というものです。
今回は、シンガポールの最新のガソリン事情についてレポートします。
(引用元:Your guide to Singapore petrol prices right now: SPC, ESSO, RON, and more
https://www.getgo.sg/blog/petrol-price-guide#what-petrol-prices-look-like-right-now)
最新ガソリン状況について緊急レポート【シンガポール】
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年 05月15日
「記録更新」が続くシンガポールの給油事情

シンガポールのガソリン価格は、政府による補助も価格上限もありません。国際原油価格の動きがほぼそのまま価格に反映されます。2022年のウクライナ危機時に記録した1リットル当たり3.42シンガポールドルという最高値が、2026年3月についに更新されました。
引き金は中東情勢でした。シンガポールが原油調達先の70%以上を中東に依存している以上、この影響は直撃でした。4月に入ってもCaltex、Shell、SPCがRON95を3.47シンガポールドル前後まで引き上げ、高値が続いています。ローレンス・ウォン首相は「家計と企業への影響を和らげるため、既存の支援策を強化する」と述べています。しかし、給油機の前に立つドライバーにとっては、その効果を実感するにはまだ時間がかかりそうです。
「JBまで行けば半額以下」の現実
シンガポール人の間で、ジョホールバル給油が習慣になり始めています。2月から毎週渡っているというある利用者は「日用品の買い出しに加えて、RON97を入れて帰る。そのためだけでも行く価値がある」と話しています。
シンガポール登録車はマレーシアで補助対象のRON95を購入できません。しかしRON97(5.15リンギット、約1.64シンガポールドル)でさえ、シンガポールの最安値を大幅に下回っています。同じグレードで比べれば、価格差は実質2倍以上になる計算です。データによれば、シンガポールのRON95価格は現在東南アジア全体で最も高い水準にあります。
シンガポールの法律では、陸路で出国する際には燃料タンクを4分の3以上満たしておく必要があります。つまり、「空にしてからJBで満タン」という行為は法律違反にあたります。
プレートを隠した車に9,000リンギットの罰金
価格差が大きければ不正も生まれます。2026年1月、ジョホール州クライのガソリンスタンドで、ナンバープレートを一部隠してRON95を給油しようとしたシンガポール登録車の映像がSNSで拡散しました。映像の中で車のオーナーは「私はマレーシア人だ」と主張していましたが、ナンバープレートはシンガポール登録を示していました。この違反者にはRM9,000の罰金が科されました。
マレーシア政府は4月1日から、外国登録車へのRON95の販売と購入を双方に対して禁止しました。給油機での外国発行カードによるRON95決済も不可となりました。RON97は引き続き購入可能ですが、監視と取り締まりは明らかに強化されています。
価格差が映す、ふたつの社会
シンガポールと橋ひとつで繋がっているジョホール州のそばにいると、この価格差が単なる数字の問題ではないことがよくわかります。補助金で生活コストを支えるマレーシアと、市場原理で動くシンガポール。ふたつの社会の設計思想の違いが、ガソリンスタンドの看板にくっきりと刻まれています。
地域格差がまざまざと
JBのガソリンが安いのは昔からで、確かに週末に給油に行く人もいましたが、かつてはちょっとお得という程度の話でした。今は違います。毎週コーズウェイを渡る動機になるほどの差が、ふたつの国の間に生まれています。その事実はエネルギー政策の問題であると同時に、東南アジアという地域の経済的な格差を映す鏡でもあるのです。





















