ジャカルタ・バンドン高速鉄道|新たな経済機会とインドネシアの未来

インドネシア

インドネシアは経済の急拡大を受けて、交通インフラの整備が急務となっています。首都ジャカルタと歴史深い都市バンドンを結ぶ、全長142.3kmの新しい高速鉄道が開通を目前に控えています。この鉄道が稼働することで、インドネシアの経済や社会にどのような変化がもたらされるのでしょうか。今回は、この大規模プロジェクトがインドネシアの未来にどのような新たな風を吹き込むのか、詳しく解説します。

ジャカルタ・バンドン高速鉄道|新たな経済機会とインドネシアの未来

   著者:インドネシアgramフェロー 尼野さらさ

公開日:2023年 10月24日

ジャカルタとバンドン、高速鉄道の進展と背景

近年、ジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道は、インドネシアの交通インフラの中で大きな注目を集めています。バンドンは人口267万人を誇り、ジャカルタの南東に位置するインドネシア第4の都市です。さらに、1955年のアジア・アフリカ会議(通称:バンドン会議)の開催地としても国際的に有名です。このバンドンと、経済の中心地であるジャカルタとの間に高速鉄道が開通することで、両都市の経済や文化交流の活発化が期待されています。

この大型プロジェクトは中国とインドネシアの協力で進められています。目的はシンプルで、都市間の移動をよりスムーズにすること。実は、このプロジェクトの受注には日本と中国が競り合い、2015年に中国がその座を射止めたという背景があります。また、現在はこの鉄道をさらにスラバヤまで延長する議論も進行中です。インドネシアの急激な経済成長や、都市間での人の往来の増加が、このプロジェクトの推進力となっています。

この高速鉄道は2023年10月初旬に運行を開始する予定です。2023年9月13日にはジョコ・ウィドド大統領が試乗を行い、このプロジェクトにかけるインドネシア政府の熱意を明確に示しました。

地域経済に与える影響

ジャカルタとバンドンを結ぶ新しい高速鉄道は、地域経済に対して大きなインパクトを持つことが予測されています。初期の評価では、ジャカルタ、隣接するカラワン州、そしてバンドンの経済全体が、12〜18%の伸びを見せる可能性があるとされています。主な要因として、地域の企業が新しい市場へのアクセスを拡大できることが挙げられます。ジャカルタ・バンドン高速鉄道は、単に都市間の移動を迅速にするだけでなく、地域経済の活性化にも寄与すると期待されています。

(参考:An Assessment of Economic and Financial Impacts of Jakarta-Bandung High-Speed Railway Project
https://www.journal.indef.or.id/index.php/BisnisEkonomiPolitik/article/view/27

しかし、新しいインフラプロジェクトが進行する際には、様々な課題が生じることも事実です。この鉄道プロジェクトにより、数多くの新しい雇用機会が生まれる一方、一部の伝統的な職種が失われるリスクも無視できません。さらに、鉄道周辺の開発に伴い、地域の農業や水資源への影響も懸念されています。

最も注目すべき点は、移動時間の大幅な短縮です。現状、ジャカルタとバンドン間の移動は、交通渋滞の影響で3時間以上要することが一般的ですが、この高速鉄道の開通により、その時間は約40分にまで短縮されると予想されています。劇的な移動時間の短縮により、ビジネスの効率向上や観光業の拡大に大きく寄与することが期待されます。

鉄道建設における課題と克服

ジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道は、技術的にも先進国と肩を並べるレベルにあります。最大時速350kmを誇るこの鉄道は、2都市間の移動を革命的に変えることが期待されます。しかし、大規模プロジェクトの進行中には土地取得の問題やコロナ禍、複雑な地形などの多くの課題が立ちはだかりました。当初2019年の開通を目指していましたが、さまざまな困難により大幅に遅れ、2023年10月にようやくの開通となる見込みです。

高速鉄道の完成がもたらす新たなビジネスの機会は計り知れません。インドネシアのインフラが進化する中、投資の機会は増え続けています。鉄道技術や関連サービス、さらには駅を中心とした不動産開発など、新しいビジネスの道が拓かれています。インフラの向上に伴って、外国からの投資や技術の導入のチャンスはさらに拡大するでしょう。

まとめ:高速鉄道とインドネシアの未来像

ジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道の開通は、インドネシアの交通インフラの一翼を担うことになります。都市間の移動の効率化は、インドネシア国内ビジネスの現場での活動や地域経済にも大きな影響を及ぼすと考えられます。今後の運行状況や利用者の反応、さらには関連するビジネスの動向に注目が集まるでしょう。

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