最新ガソリン状況について緊急レポート【マレーシア】

クアラルンプールで車を運転していると、あることに気づきます。ガソリンスタンドの給油機に表示されている価格は補助金なしの市場価格です。マレーシア人はまずブースに立ち寄り、IC(身分証明書)を見せます。給油後、補助金分が差し引かれて精算されます。外国人の私には関係のない手順ですが、毎回その列を横目に見ながら給油しています。同じガソリンを入れているのに、支払う金額が倍ほども違います。
今回は、マレーシアの最新のガソリンの状況について緊急レポートします。
(引用元:Subsidies Under RON95, BUDI Diesel Hit RM4 Bln Monthly – MOF
https://www.mof.gov.my/portal/en/news/press-citations/subsidies-under-ron95-budi-diesel-hit-rm4-bln-monthly-mof)

最新ガソリン状況について緊急レポート【マレーシア】
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年05月13日
「RM2.05」が消えた日

マレーシアに住んで15年になりますが、こんな仕組みができたのはつい最近のことです。2025年9月末まで、マレーシアのRON95価格は長らく2.05リンギット前後で固定されていました。産油国としての恩恵を国民に還元する、いわばマレーシア流の社会契約でした。それが同年9月30日、BUDI95(ブディ・マダニ95)という制度に切り替わり、補助価格は1.99リンギットへとわずかに下がりました。
ただし条件がついていて、マレーシア国民のみで、月300リットルまでです。ICをかざして認証を受けた人だけがこの価格を使えるのです。外国人は市場価格を払います。制度の切り替えは表向きはスムーズに進みましたが、水面下では複雑な事情が動いていました。
中東が火を噴いた
2026年に入り、中東情勢が急変しました。ホルムズ海峡の緊張が一気に高まり、国際原油価格が1バレル100ドルを超えました。マレーシアが毎月ガソリン補助に費やす金額は30億リンギから40億リンギへと膨らみ、財政への圧迫はもはや無視できる水準ではなくなってきました。
政府は対応を迫られ、2026年4月1日、BUDI95の月間補助枠を300リットルから200リットルへ一時削減することが発表されました。枠を超えた分は市場価格、現時点でRM4.27を払うことになります。補助価格の2倍以上で、私たち外国人が支払うのと同じ価格です。
「90%のユーザーは月200リットル以内に収まっている」と政府は説明していますが、通勤距離の長い人や仕事で車を使う人にとって、200リットルはギリギリか足りないくらいでしょう。配達の仕事をしている知人は、月の後半になると不安になると苦笑いしています
国境を越えてきた「給油客」たち
シンガポールのガソリン価格が高騰するなか、シンガポール人が週1回ペースでジョホールバルに給油に来るようになりました。RON95は外国登録車には売れませんが、補助なしのRON97(5.15リンギット)でもシンガポールの価格3.38シンガポールドルより大幅に安いからです。
問題はそこから先に起きました。ナンバープレートを一部隠してRON95を入れようとする車が現れ、動画がSNSで拡散されました。2026年1月には実際に摘発・罰金(9,000リンギット)の事例も出ています。政府は4月1日から、外国登録車へのRON95販売と外国発行カードによるRON95購入の両方を禁止する措置を取りました。ガソリンスタンドのブースで働くスタッフの仕事も、以前より格段に複雑になっています。
「一世代に一度の政策決定」の重さ
経済大臣ラフィジ氏はかつて、RON95補助金の見直しを”一世代に一度の政策決定”と表現しました。その言葉が、今になって実感をともなって響いてきます。シンガポールで12年、マレーシアで15年暮らしてきました。ガソリンの安さはマレーシアの生活コストの低さを象徴するひとつの目安でした。
それが今、コストの上昇を肌身にしみて感じるようになりました。ブースでICをかざす人の列を見るたびに、その変化をじんわりと感じます。補助金はあって当然のものではなく、国が維持するために努力しているものなのだと、マレーシア人も少しずつ気づき始めているのかもしれません。
「正しい方向への一歩」
世界銀行はBUDI95について「正しい方向への一歩」と評価しつつ、財政状況次第でさらなる調整もありうると指摘しています。補助金という社会契約の形が、静かに、しかし確実に変わりつつあるマレーシアです。


















