ホルムズ海峡封鎖がマラッカ海峡に落とす影

マレーシア

クアラルンプールに暮らして、もう15年になります。

この街は海から遠く、港もなければ潮の匂いもありません。それでも少し車を走らせれば、マレー半島の先端に近づき、やがてあの細い海峡が目に入ってきます。マラッカ海峡です。歴史で知られるその海域が今、世界中の専門家やメディアが注視する場所になっています。

今回は、今最もホットなエリア「マラッカ海峡」について、改めて紹介したいと思います。

(引用元:マラッカ海峡巡る不安再燃-ホルムズ海峡封鎖を受け – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-04-17/TDMGACT96OSG00#gsc.tab=0

ホルムズ海峡封鎖がマラッカ海峡に落とす影 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年06月12日

世界の原油の「通り道」

マラッカ海峡は、インドネシア・マレーシア・シンガポールに挟まれた細長い水路です。最も狭いところではわずか約2.7キロメートル。車で走れば3分もかからない幅しかありません。それでも、この海峡は世界貿易の約40%を担い、中東から中国・日本・韓国へ向かうエネルギーの大部分がここを通過しています。日本が輸入する原油の大半も、この水路を抜けて届いています。知らず知らずのうちに、私たちの生活はこの「細い海」に支えられているのです。

遠い海峡が揺さぶる

今年2月28日、米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始し、翌3月1日からホルムズ海峡の通航が事実上止まりました。ペルシャ湾の出口を塞がれた世界の原油物流は、迂回を余儀なくされました。実は、その余波が、はるか東のマラッカ海峡にも及んでいるのです。

イランがホルムズ海峡を実質的に封鎖し、米国が対抗措置に踏み切ったことで、アジアで最も重要な戦略的要衝であるマラッカ海峡を巡る不安が再燃しています。

「影の船団」が集まる海

さらに興味深い動きも起きています。

マレーシア沖、シンガポールの東部海域には、米国の制裁を受けて正規ルートで取引しにくい原油を運ぶ「影の船団」が集まり、この海域が事実上の「海上倉庫」や物流拠点となっているという報道がありました。ある調査では、ここに集積した原油の少なくとも約8割が中国向けだったことがわかっています。

世界の大国の思惑が、このマラッカ海峡でも交差しているのです。

したたかな東南アジアの外交

この危機において、東南アジア各国の動きは一枚岩ではありません。

マレーシアなど一部の東南アジア諸国はイランと個別交渉を行い、通航許可を得ています。各国の対応には大きなばらつきがあるのが現状です。

大国の論理に正面から歯向かうのではなく、したたかに自国の利益を守ろうとする東南アジアの国々の現実がここにあります。長年この地域に暮らしてきた者として、その現実主義には、ある種の敬意すら感じるのです。

この海峡が問いかけるもの

30年前、私が初めてこの地域に来た時、マラッカ海峡はただの「地図の上の水路」で、歴史の授業で学んだ海峡にすぎませんでした。

今は違います。あの細い海が、日本の電気代を左右し、ガソリン価格を動かし、スーパーの棚に並ぶ食品の値段にまで影響を与えています。地球の裏側の出来事のようでいて、実は私たちの生活と密接につながっているのです。ホルムズ海峡が揺れれば、マラッカ海峡も揺れるのです。

中東の紛争が「遠い国の話」ではなくなった時代になりました。マラッカ海峡という、私の生活圏のすぐそばにある水路が、今や世界のエネルギー安全保障の最前線に立たされています。大国の論理の狭間で、東南アジアの国々はしたたかに、そして静かに、自分たちの海と権利を守ろうとしています。

30年前、私が初めてこの地域に来た時、マラッカ海峡はただの「地図の上の水路」で、歴史で学んだ海峡でした。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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