マレーシア:イスラム文化圏のラーメン事情
中国四千年の歴史が生み、戦後の日本が育んだ国民食、それはラーメンです。日本の国民食となったラーメンは、中華圏では『日式拉麺(にっしきらーめん)』という名で親しまれています。中国オリジナルの『拉麺(らーめん)』とはまた違うものとして中華圏の地元の人達に受け入れられ、食べられてきました。そして現在は世界中に日式拉麺のレストランが出店され、日本食が恋しくなった日本人や日本食に興味のある外国人の心と胃袋を満たしています。そんな魅惑の日式拉麺シーン、マレーシアでは一体どうなっているでしょうか。
マレーシア:イスラム文化圏のラーメン事情
著者:gramフェロー フェルスマン伊緒奈
公開日:2023年2月14日
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イスラム文化だけじゃない!多民族国家の魅力
マレーシアは中国、インド、イスラム文化がミックスした多民族国家です。イスラム教徒もヒンドゥー教徒も、豚肉を食べなければアルコールも飲みません。レストランでメニューにアルコールが載っているにも関わらず、いざ頼もうとすると品切れであることも多く、不完全燃焼のままレストランで食事をすることもしばしばです。そんな複雑な状態の国家ではありますが、豚肉を使ったノンハラルフードである日式拉麺はマレーシア国内でも親しまれています。
ラーメン屋さんの看板にはきちんとノンハラルの表記がされています。
都市面積に対する日式拉麺屋の店舗数
ざっくりと検索してみたところ、クアラルンプール〜近郊の都市にかけて、日式拉麺の店舗は23件ありました。イスラム教徒とヒンドゥー教徒はラーメンを食べられないこと、ノンハラルフードは売られている場所が限られている上に値段が高いことを考えれば、日式拉麺屋さんの件数はかなり多いほうです。また、1杯あたりの価格が20〜40リンギット(約610円〜約1220円)と、ノンハラルの外国料理でありながら比較的リーズナブルな価格で食べることができます。
とんこつラーメン。硬さを選べるお店で注文しても、日本国内のラーメン屋さんより柔らかく茹でてあるお店が多いです。
ローカルのハラルフードの相場が7〜15(約210円〜約460円)リンギットであることを考えると、かなり良心的な価格設定となっています。この価格設定でもやっていけるくらい、一定の人気を保っているとも言えます。これは意外とスゴイことではないでしょうか。というのも、身近なスーパーマーケットであってもノンハラルフードのコーナーは壁で仕切られていて、売られている商品の種類は多くなく、価格も決して安くはありません。
ノンハラルフードを置いていない店舗も珍しくありません。そんな背景の文化圏でこれだけ健闘している日式拉麺屋さんは、かなりの快挙であるといえます。日式拉麺は日本の個人店ばかりが出店しているわけではありません。日本国内でもおなじみの一風堂や麺屋武蔵、ばんから屋などもマレーシアに進出しています。
もう一つの日式拉麺、インスタントラーメン。
お店のラーメンも良いものですが、別のベクトルで良いものなのがインスタントラーメンです。1958年に日清食品の安藤百福氏が開発・発売した世界初のインスタントラーメンである日清チキンラーメン。ここから世界中に派生していったインスタントラーメンの数々。これもまた日式拉麺の一つの姿とも一つの歴史とも言えます。
(引用: インスタグラム日清ひよこちゃん公式ページより
)
マレーシア国内で売られているノンハラルラーメンはだいたい輸入品で、価格設定も高めです。ノンハラルフードのコーナーはスーパーでも特別なコーナーにほんの少しあるだけなので、大きな売り場は何の表記もないハラルフードで埋め尽くされているといった具合です。
また日本からマレーシアに輸出されているラーメンで、イスラム教徒やヒンドゥー教徒でも食べられるラーメンを輸出しているのは、東京に4店舗と大阪に1店舗、海外はインドネシア・ジャカルタに1店舗構えるハラルラーメンチェーン店『麺屋帆のる』です。『麺屋帆のる』のお土産ラーメンが、クアラルンプールのドン・キホーテでも販売されています。ハラルラーメンという言葉だけ聞くと何か特別なように聞こえますが、実際は鶏白湯麺なので一般的な日本人にとっても普通に馴染みのあるラーメンです。
マレーシア国内製造のインスタントラーメンはやはりハラルラーメンが主流です。マレーシア国内オリジナルだと、1971年にマレーシア・マラッカで設立されたブランドMameeが、チキン、鴨、カレー、ベジタリアン、ベジタリアンカレーのラーメンを製造しています。
まとめ
中国四千年の歴史が生み、戦後の日本が育んだ国民食ラーメン。ノンハラルフードを手に入れるのに若干手間のかかるイスラム文化圏でさえラーメン屋が出店されています。またハラル、ノンハラルに関わらずインスタントラーメンが輸出されています。それでもラーメン屋の店舗は都市部に限られているので、郊外〜田舎だとまだまだラーメン屋に行くのに苦労します。それでもイスラム文化圏で愛され続けるノンハラルフード、日式拉麺。もしかしたらビジネスチャンスになるのではないでしょうか。