ジョホールバルまで5分 ── いよいよ動き出すRTSリンク

マレーシア

マレーシアのジョホールバル(以下、JB)とシンガポールとを結ぶ新しい鉄道、「RTSリンク」の開業がいよいよ近づいてきました。正式にはジョホールバル=シンガポール高速輸送システム、と少し長い名前です。目標は2026年末の旅客営業開始。片道の所要時間は、なんと約5分です。長くこの地域に住んでいる者からすると、あの渋滞が5分になる、というのは非常に喜ばしい話です。日本でいえば、県境をまたぐ短い連絡列車、といったところでしょうか。そこで今回の記事では、開業間近のRTSリンクについて再び取り上げます。

(引用元:Singapore and Malaysia Commemorate the Unveiling of the First Johor Bahru – Singapore RTS Link Train | Ministry of Transport
https://www.mot.gov.sg/news-resources/newsroom/singapore-and-malaysia-commemorate-the-unveiling-of-the–first-johor-bahru—singapore-rts-link-train/)

ジョホールバルまで5分 ── いよいよ動き出すRTSリンク 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年10月16日

わずか4Kmの路線

まず、この鉄道について整理しておきます。シンガポール側のウッドランズ・ノース駅と、JB側のブキッ・チャガ駅を結ぶ、わずか4キロの路線です。運転士のいない自動運転で、4両編成の列車が8本。1本で600人以上を運び、ピーク時には1時間あたり片道1万人をさばく計画です。開業当初で1日およそ4万人、将来的には14万人という数字も示されています。運賃は片道5〜7シンガポールドル、日本円でおよそ600〜800円ほどが見込まれています。車で渡ると渋滞に加えて通行料もかかるので、決して高くは感じません。

コーズウェイを知る人だけがわかる、ありがたさ

このニュースの本当のありがたみは、コーズウェイの渋滞を知っている人にしか、たぶん伝わりません。シンガポールとJBのあいだは、毎日およそ30万人が行き来する、世界でも有数の混雑する国境です。私も何度も車で渡りましたが、朝のピークにあたると、橋の上で一時間、二時間と動かないことも珍しくありません。一番時間がかかった時には7時間かかりました!目的地はすぐそこに見えているのに、たどり着けない。あの独特のじりじりした時間を、この鉄道は5分に変えてしまうわけです。国境を越えて通勤する人にとっては、生活そのものが変わる話です。

二度並ばなくていい、という革命

もうひとつ、大きい変化は入国審査です。ふつう国境を越えると、出国と入国で二度、列に並びます。ところがRTSリンクでは、出発する駅で両国の審査をまとめて済ませてしまう仕組みです。乗る前に手続きを終えているので、着いたらそのまま改札を出て、それぞれの街へ出ていけます。100台のAI搭載eゲートで審査は7秒ほどと説明されています。あの二度並ぶ煩わしさが消えるのは、正直5分という速さ以上にありがたいかもしれません。悪天候にも左右されず、決まった時刻に動くというのも、車にはない安心感です。

開業時期はもう少し様子見です

ひとつだけ、正直に添えておきます。開業目標は2026年末ですが、システムの試験の進み具合によっては、2027年初めへ少しずれ込む可能性も報じられています。大きな国際プロジェクトですから、計画の多少の前後は織り込んでおいたほうがよさそうです。それでも、長年「いつかできる」と言われ続けてきた鉄道が、いよいよ現実味を帯びてきたのは確かです。現在走っているKTMシャトル・トゥバウという既存の列車は、RTS開業から半年ほどで役目を終える予定だといいます。ひとつの時代が、静かに切り替わっていくのを実感します。

開業したら、まず乗ってみます

私にとって、この5分は単なる時間短縮以上の意味を持っています。国境がこんなにも軽くなる。朝、思い立ってシンガポールで朝食をとり、昼にはJBに戻る。そんな暮らしが、特別なことではなくなっていくのでしょう。2つの国で30年近く暮らしてきて、その距離が縮まっていく様子を、私はどこか感慨深く眺めています。開業したら、まず私自身が乗ってみようと思います。あの橋の上で何度も見送ってきた景色が車窓からどう見えるのか。5分の車窓に、30年分の渋滞の記憶を重ねてみたい。それを確かめるのが、いまから楽しみでなりません。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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