2026年、シンガポールの暮らし──世界最高水準の物価と「給料日ぐらし」6割

「世界一物価が高い街」と聞くと、たいていの人はニューヨークやチューリッヒを思い浮かべるかもしれません。ですが、いくつもの調査で、シンガポールはその常連です。生活費の国際指標として知られるNumbeoでは、ニューヨークを100とした指数で、シンガポールは85から88ほど。アジアでは断トツの高さです。私はシンガポールで12年暮らし、いまはマレーシアに移って15年になりますが、シンガポールへ行くたび、コーヒー1杯やタクシーの初乗りの値段に、小さく息をのみます。同じコーヒー1杯が、国境を越えるだけで倍ほど違うのです。
今回は、そんなシンガポールの生活に関する現状をお伝えします。
(引用元:In one of the world’s most expensive cities, more workers are living paycheck to paycheck
https://www.cnbc.com/2025/08/14/singapore-savings-more-singaporeans-living-paycheck-to-paycheck-cost-of-living.html)
2026年、シンガポールの暮らし──世界最高水準の物価と「給料日ぐらし」6割
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年 10月19日
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6割が、給料を使い切っている

その高い街で、いま静かに広がっているのが「給料日ぐらし」です。給与関連の調査会社ADPが世界34の市場で約38,000人を対象に行った調査によると、シンガポールで働く人のおよそ6割が、毎月の給料をほぼ使い切り、貯蓄に回せていないと出ています。この数字は、アジア太平洋の平均48%を大きく上回り、中国や韓国、日本、インドネシアよりも高い。豊かな都市の、少し意外な素顔です。2021年には53%だったそうですから、この数年で確かに増えています。
稼げる街で、なぜ貯まらないのか
なぜ、これほど稼げる街で貯まらないのか。理由のひとつは、収入の伸びが物価に追いついていないことです。ある試算では、シンガポールの実質の中位所得は2019年から2024年にかけて、年に0.4%ずつ下がっているといいます。それ以前は年2.2%ほど伸びていたのですから、流れが逆になったわけです。住宅費や、輸入に頼る食料品の高さといった構造的な要因が、暮らしをじわじわと圧迫しています。国土が狭く、食べ物の多くを輸入に頼る国ですから、世界のどこかで起きた値上がりが、そのまま食卓に届いてしまうのです。今回のホルムズ海峡の危機も大きく生活に影響を与えました。インフレ率そのものは落ち着いてきたのに、生活の実感はなかなか軽くなりません。
掛け持ちしても、追いつかない
興味深いのは、これが低所得層だけの話ではない、という点です。むしろ中間層にこそ、この「給料日ぐらし」が広がっているといいます。仕事を掛け持ちする人も増え、調査では4人に1人が2つ以上の仕事を持っていると示されています。ただ、掛け持ちをしても楽になるとは限りません。3つ以上の仕事を持つ人でも、6割は生活に余裕がないと答えています。働けば働くほど楽になる、という単純な話ではなくなっているのです。
61歳の私が、身につまされた数字
私がひとつ、身につまされたデータがあります。シンガポールでは、収入は40代でピークを迎え、そこから下がっていきます。60歳以上になると、中位の月収はピーク時のおよそ6割ほど。数字で見ると、なかなか厳しい現実です。私自身、61歳。年齢を重ねてなお働き続けることの意味を、こういう数字の前で改めて考えさせられます。若い世代が「経験より今の暮らし」を選ぶ気持ちも、わからなくはありません。
それでも、工夫して暮らす人々
シンガポールの人々は、この高い街を、それぞれの工夫で生き抜いています。屋台のホーカーで安くおいしく食べ、無料の公園で休日を過ごし、地下鉄を賢く乗りこなす。政府もCDCバウチャーなどで下支えをしています。物価の高さは変えられなくても、暮らし方は選べるのです。私がシンガポールに住んでいた頃も、給料の多い少ないより日々をどう組み立てるかのほうが、暮らしの手ざわりを決めていました。派手に稼いで派手に使うのではなく、身の丈で続けられる形を探すこと。隣のマレーシアで暮らす私も、そのことを毎日、静かに教わっている気がします。























