フィリピン最大のファーストフードチェーン店Jollibee
フィリピンに訪れたことがある方なら、一度は見かけたことがあるかもしれません。フィリピン国内で最も有名かつ人気の高いファーストフードチェーン「Jollibee(以下、ジョリビー)」。今回はそんなジョリビーの人気の秘密やフィリピン国内におけるファーストフードチェーン界の王者たる所以、また日本進出の可能性について紹介していきます。
フィリピン最大のファーストフードチェーン店Jollibee
著者:フィリピンgramフェロー たこ坊
公開日:2023年 9月27日
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Jollibee(ジョリビー)とは
フィリピン華僑のトニー・タン氏が率いる、ジョリビー・フード・コーポレーションが運営するファーストフードチェーンです。
主力メニューとして、フライドチキンのChickenjoy、ハンバーガーのYumburger、スパゲッティのJolly Spaghettiなどがあります。
全店舗で必ず見かけるのが、赤い蜜蜂をモデルにした「ジョリビー」という店名そのままのマスコットキャラクター。フィリピンの子どもたちから大人気で、誕生日パーティーにジョリビーの着ぐるみを着たパフォーマーを呼ぶことも多いです。
現在は世界で1500店舗以上展開しており、そのうち270店舗以上はフィリピン以外の17ヶ国(アメリカ、カナダ、香港(中国)、マカオ、ブルネイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、サウジアラビア、UAE、カタール、オマーン、クウェート、バーレーン、イタリア、スペイン、イギリス)で展開しています。
フィリピン国民のうち1割程度はOFW(Overseas Filipino Worker)という、いわゆる海外出稼ぎ労働者としてフィリピン国外で就労しています。海外で働くフィリピン人が多い国をターゲットに海外店舗を展開し、今後も更に店舗数を拡大していく予定です。
マクドナルドが勝てない理由
世界一のファーストフードチェーンといえば?と聞かれてまず思い浮かべるのは「マクドナルド」ではないでしょうか。
しかし、そんなマクドナルドがフィリピン国内で唯一勝てない相手と言われているのが、こちらのジョリビーなのです。2022年時点のフィリピン国内での店舗数を比較すると、ジョリビーが1100店舗以上に対し、マクドナルドは700店舗。400店舗以上もの差がついています。
なぜここまで差がついているのか。
その秘密について、以前Yahooニュースでも取り上げられたことがあります。
自国民に合わせたメニューと味付け、ボリューム感&お得感が『ジョリビー』の人気の秘密のようです。
(引用元:Yahooニュース :マクドナルドも勝てないフィリピンのファストフードチェーン『ジョリビー』が人気の理由
https://news.yahoo.co.jp/articles/bef16ceab6da912758e642c21bc20885509df596)
記事にも書かれている通り、フィリピン人の味覚に合わせた味付け、かつ安くボリューミーに仕上げたのがジョリビーの勝因のようです。それに加え、マスコットキャラクターのジョリビーがフィリピンの子どもたちから絶大な人気を誇っているのも理由のひとつと考えられます。
実はフィリピン国内のマクドナルドもジョリビーに対抗すべく、フライドチキン&白ごはんセットやスパゲッティをメニューに取り入れています。しかし、両社の価格を比較すると、スパゲッティを除いてジョリビーの方が少し安く、節約意識の高いフィリピン人はやはりジョリビーを選ぶ傾向にあるようです。
ハンバーガー (ドリンク&ポテト付き) | フライドチキン&白ごはんセット (ドリンク付き) | スパゲッティ (単品) | |
ジョリビー | 105ペソ(約270円) | 109ペソ(約280円) | 60ペソ(約154円) |
マクドナルド | 124ペソ(約319円) | 114ペソ(約293円) | 59ペソ(約151円) |
上記の比較を見ただけでは僅差に見えるかもしれませんが、フィリピン人にとってはこれも大きな差となります。
フィリピンでは休日に出かける時や外食に行く際、必ず家族連れで移動する傾向にあります。それも親戚などを含めた10人規模の大家族です。そのため、1食分は実質10食分として計算する必要があります。たった5ペソ(約13円)の差が50ペソ(約130円)の差となります。フィリピンでは50ペソあれば一人前の食事を用意することもできますし、公共交通機関のジープニー(小型バス)の初乗り運賃が12ペソなので、4人分賄うこともできます。たった5ペソの差でも大きな差であることに気付いていただけるのではないでしょうか。
飲食ビジネスを始める場合には、フィリピン人の味覚を考慮することはもちろん、文化や習慣なども考慮することで勝ち筋が見えてくるかもしれません。
ファストフードチェーンの積極的な買収
フィリピンのショッピングモール内でジョリビーがあるところには、高確率でMang InasalやChowkingという店舗が併設されています。
それもそのはず、ジョリビーを運営しているジョリビー・フード・コーポレーションは、ピザ系チェーンのGreenwich、中華料理系チェーンのChowking、ケーキ専門店チェーンのRed Ribbon、焼き鳥チェーンのMang Inasalを買収しているほか、フィリピン国内でのBurger KingやDelifranceのフランチャイズを運営していることが理由として挙げられます。
また最近では、アメリカ資本の大手カフェチェーンThe Coffee Bean & Tea Leafを約380億円で買収したことでも話題になりました。
(引用元:日本経済新聞 :比外食大手ジョリビー、米カフェチェーン買収 380億円より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47723600U9A720C1FFE000/)
買収の勢いは留まることを知らず、今後もファーストフードチェーン界の王者として君臨することになるであろうジョリビー・フード・コーポレーション。実は、2021年に日本の牛丼チェーンである吉野家とも合弁契約を締結しました。10年以内にフィリピン国内で吉野家を50店舗オープンさせる計画があります。
(引用元:日本経済新聞 :吉野家HD、フィリピン外食企業のJollibee Foods Corporationと合弁契約を締結
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP605141_W1A210C2000000/)
フィリピン現地に住む日本人の筆者としては、日本クオリティの牛丼が頻繁に食べられるようになるのかと思うと嬉しい限りです。この調子で他の日本発ファーストフードチェーンとも合弁契約の締結を進めてくれないかな、と密かな期待を胸に抱いています。
日本への進出も視野に
先に記載した通り、ジョリビーはすでに世界17ヶ国に展開しているのですが、日本にはまだ進出していません。フィリピンのことを一切知らなかった学生時代の筆者でさえ、日本ではフィリピンパブという言葉をよく聞きました。当然日本にもOFWのフィリピン人労働者のほか、フィリピン人留学生や永住資格を取得したフィリピン人などが居住しています。2022年10月時点で合計20万人以上のフィリピン人が在留資格を保有し日本に居住しているので、ジョリビーが日本に進出していてもおかしくはないですよね。
(引用元:厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)より
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/001044544.pdf)
実は2015年時点では、ジョリビーが日本に進出するという話がニュースになっていました。
(引用元:日本経済新聞 :比ジョリビー・フーズ、日本進出を検討
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDX24H1N_U5A320C1FFE000/)
しかし、8年経った今でも日本でジョリビーの看板が立ったことはありません。
日本進出の話に関する情報は見つからず、なぜいまだに日本進出していないのかは不明です。
そんな中、新たにジョリビー日本進出の可能性を予感させるニュースが出てきました。
フィリピンの新興不動産ダブルドラゴンは、国際的なスノーリゾート、ニセコに大規模なホテルを建設する。
(引用元:日本経済新聞 :ニセコに450室超ホテル、フィリピンの新興不動産
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC0965V0Z00C23A3000000/)
こちらのダブルドラゴンという会社は、ジョリビー・フード・コーポレーションの創業者トニー・タン氏およびMang Inasalの創業者エドガー・シア氏が共同設立した不動産開発会社です。
フィリピンのマニラ首都圏内にあるパサイ市には、ダブルドラゴンプラザという商業施設を構えていますが、当然こちらの施設にもジョリビーやMang Inasal、Chowkingなどの店舗が入っています。また、CityMallという商業施設をフィリピン国内に43店舗構えており、そちらにも自社で運営しているファーストフードチェーン各店舗が入っています。
常に不動産とファーストフードチェーンをセットで展開しているダブルドラゴン。そんなダブルドラゴンが日本に進出したということは、今後もしかすると…と期待してしまいますよね。過去にジョリビー日本進出の話が出ていたことからも、可能性がゼロではないと考えられます。いつか日本でもジョリビーの看板が見られる日が来るのを筆者も心待ちにしています。
まとめ
フィリピン人のソウルフードともいえるファーストフードチェーン界の王者ジョリビー。今後もフィリピン最大のファーストフードチェーンとして世界各国で店舗数を拡大しつつ、全世界にいるフィリピン人の心を掴み続ける存在となっていくことでしょう。
創業者のトニー・タン氏が率いる不動産開発会社ダブルドラゴンが日本にホテルの建設を開始したことから期待される、ジョリビー日本進出。公式ホームページによれば、フィリピン国内では3500万~5500万ペソ(約9000万円~1億4000万円)でフランチャイズ店がオープンできるそうです。
もし日本進出が決まった時には、どれほどの金額を出せばフランチャイズ展開できるのか気になりますね。フィリピン在住邦人の一人として、ジョリビーの日本進出を筆者も心待ちにしています。