エストニアのカーシェアリング市場の成長とシステム解説

エストニア

首都でも車の所有率が高く、車の需要も年々増加しているエストニアであるが、車を所有せず使いたい時に料金を支払って使うカーシェアリングサービスを利用するのも一般的である。決められたエリア内で乗り捨てができ、首都ならほぼどこにいても使える車が探し出せる。本記事では、エストニアでの車の需要と主要なカーシェアリングサービスのシステムについて紹介する。

エストニアのカーシェアリング事情

著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年11月7日

エストニアの車の需要

エストニア全土の車の所有率は、1000人に対し608台(2020年)。

人口の約3分の1にあたる42万人が住む首都タリンでも、車の需要は年々増加している。タリン市民は市内の公共交通が無料という嬉しい特典があるにも関わらず、車の利用が増えているそうだ。

2020年の道路管理局のデータによると、車の数は毎年5%ずつ増加しており、2015年のタリンの自動車登録台数は140,526台だったが、2020年には213,677台に増加したそうだ。国の中で最も栄えている首都タリンで車の台数が増えているのだから、需要は高まっていると言えるだろう。

エストニア人の友人に聞いたところ、現在エストニアは車の所有には税がかからないそうだ。2024年の夏からは税の導入を検討しているそうだが、これも車の需要に拍車をかけていると言えるだろう。

(参考:starista
https://www.statista.com/statistics/452015/estonia-number-of-cars-per-1000-inhabitants/

(参考:err.ee Public transport use in Tallinn is declining, number of drivers increasing | News | ERR
https://news.err.ee/1134701/public-transport-use-in-tallinn-is-declining-number-of-drivers-increasing#:~:text=This%20is%20not%20only%20a,increased%20to%20213%2C677%20by%202020.

カーシェアリングも一般的

データからは車を所有することに注目してしまうが、意外にもカーシェアリングも人気である。その理由として、免許は取得したが車の購入には至っていない若い世代がいることと、カーシェアリングアプリの登録が非常に簡単かつ料金形態がわかりやすいことが挙げられるだろう。実際に首都タリンで主に使われているカーシェアリングサービス会社2つを見ていこう。

カーシェアリングのシステム

市内でよく見く目にするのはBoltとCity beeという企業のカーシェアリングサービスだ。

Boltは以前の記事でも紹介した、エストニアのモビリティサービス企業。2021年からカーシェアリング市場にも参入した。

City beeはリトアニアの企業。2012年にリトアニアの首都ビリニュスでスタートし、今はバルト3国内の10以上の都市でサービスを提供している。

BoltもCity beeも、使い方と使用料金の計算方法はほぼ同じだ。

会員登録費用はかからず、アプリをダウンロードして有効な免許証の提出とクレジットカードの登録すると誰でも使えるようになる。

アプリを開いて近くの車を探して予約を入れる。その場所に行って予約した車の傍でアプリのボタンを押すと、車の扉が開いて使えるようになる。操作性は抜群に良い。

車の外見はパッと見カーシェアリングとわからないものもあれば、全体に大きくロゴのペイントが入ったものもある。ロゴが大きく貼られた車に乗るのは恥ずかしいと感じるのかと思ったが、ユーザーはあまり気にしていないらしい。

基本の料金システムは時間経過による精算で、使用した分数で料金が決まる。そこに進んだ距離による加算が入り、最終的な料金が決定する。

車種によって料金が変動し、車が大きく高級車になるにつれて時間精算・距離精算のどちらもベースとなる料金が高くなる。

2社の料金の違いは大きくないため、両方のアプリをダウンロードしておけば、boltの車は近くにないがcity beeの車なら近くにある、という2段構えで車を探すことが可能になる。

(参考:Bolt https://bolt.eu/en/drive/

(参考:citybee https://citybee.ee/en/pricing/

どちらのサービスにも共通しているのが、乗り捨てができること。アプリが許可するエリアの中でならどこでも駐車できる。エストニアは他のヨーロッパ諸国と同様に路上駐車が一般的に行われるため、エリア内である限りは路肩に駐車してもなんの問題もない。アプリ内で車を予約しピックアップしに行くと、道路の端の方に停めてあるなんてことは、最初こそ驚いたものだが今では見慣れたものとなった。

乗り捨てが気軽にできる点も普及の理由の1つだろう。

まとめ

今や世界のどこにでもあるカーシェアリングサービスであるが、明瞭なシステムと車を決められた場所に戻す煩わしさがないというのは、サービス利用者にとっては大きなメリットであるだろう。車社会だと車は所有するものという考えがありがちであるが、まだ車を購入する資金が用意できない若い世代や、片道だけ車を使いたい場合など、様々な利用者像を考えることで広く使われるサービスが生まれるのだろう。

エストニアの位置関係

さえきあき

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エストニア在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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