EVが走り出した街で、私が考えること

先日、日本語のレッスンをしていた生徒さんが、ふと「先生、私、EVに乗り換えたんですよ」と話してくれた。BYDの車で、家の駐車場で夜中に充電しているという。「ガソリン代、もう気にしなくていいんですよね」と、どこか誇らしそうでした。
マレーシアのEV市場が、確かに動いているのを最近感じています。
今回はその辺を深掘りしていこうと思います。
(引用元:Annual EV usage in Malaysia has jumped 14-fold since 2022, incentives for local EV parts development – MITI – paultan.org
https://paultan.org/2026/02/13/annual-ev-usage-in-malaysia-has-jumped-14-fold-since-2022-incentives-for-local-ev-parts-development-miti/)

EVが走り出した街で、私が考えること
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年05月11日
3,000台が4万台へ、たった3年で

マレーシア投資貿易産業省(MITI)が議会に提出した書面によると、国内のEV年間利用台数は2022年の3,127台から2025年には44,813台へと、わずか3年で約14倍に急拡大したということです。この数字の背景にあるのは、政府が2022年から2025年末まで実施した輸入完成車(CBU)の関税・物品税免除措置です。制度が追い風となり、街を走るEVの姿が目に見えて増えてきたわけです。
免税終了後が、本当の問いかけ
ただ正直に言えば、この急伸には制度ありきの側面が大きいのは間違いありません。その優遇措置は2025年末で終了しています。ではその後はどうなるか。そこが本当の問いだと思います。
調査によれば、マレーシア人がEV購入をためらう最大の理由は「価格が高すぎる」で、実に67%が挙げています。次いで「充電時間が長い」(50%)、「バッテリー寿命への不安」(49%)と続いています。
私がクアラルンプールに住んで15年、マレーシア人の車への向き合い方をずっと見てきました。彼らは決して衝動買いをしません。月々のローンの額を家族と細かく計算して、何ヶ月もかけて決断しています。インセンティブがなくなったとき、市場がどう動くか。数字だけでは読めない部分が、そこにはあります。
充電インフラ、目標と現実の距離
政府は2025年末までに全国1万ヶ所の充電施設設置を目標に掲げていましたが、2025年10月時点での実績は5,149ヶ所でした。目標の半分にとどまり、年内達成は厳しかった状況です。ただ急速充電が可能なDC充電ポイントについては当初目標の1,500ヶ所をすでに超えており、着実に前進してはいます。しかし、現状の充電施設はマレー半島の西海岸側に偏在しており、地方都市への展開が課題として未だに残っています。
クアラルンプール市内なら確かに充電スポットをだんだん見かけるようになりました。ショッピングモールの駐車場、一部のガソリンスタンド。会社でもEVが充電できるところも増えています。でも地方でどうするのかという話は、生徒さんたちの間でもよく出ます。
帰省の時や遠出した時の不安はいまだに解消されていません。
誰が売っているか、という変化
この数年で大きく変わったことがもうひとつあります。売れているブランドの顔ぶれです。2024年のEV市場をブランド別に見ると、中国のBYDが市場シェア約39%でトップ、テスラが24%、BMWが9%と続きます。日本車の名前はこのランキングには出てきません。
マレーシアでの日本車の存在感はいまも大きいですが、EVに関しては中国メーカーが明らかにリードしています。国民車プロドゥアも、2025年12月に初のEV「QV-E」をついに市場投入しました。日系メーカーの血を引く国民車がEVという新しい土俵でどう戦うか、注目したいところです。
静かに変わる街、残された課題
30年近くアジアに住んでいると、変化のスピードとそれでも変わらない人々の暮らしの両方が見えてきます。マレーシアのEV市場は確かに動いています。ただ、庶民の財布と道路事情や整備インフラが追いつくまでには、もう少し時間がかかりそうです。
3年で14倍という数字は確かに驚異的です。しかし制度の後押しが終わった今、マレーシアのEVが本当に庶民の足になれるかどうか、その答えはこれから出てくるでしょう。課題は積み残されたままですが、街だけが静かに変わりつつあるのを実感しています。


















