フィリピンのメモリアルサービス最大手「St. Peter(セント・ピーター)」

日本では葬儀といえば地元の葬儀社や寺院が担うイメージが強いですが、フィリピンにはメモリアルサービス業界を50年以上にわたってリードしてきた企業があります。それがSt. Peter(セント・ピーター)です。フィリピン全土に280以上のチャペルを展開し、フィリピン人の葬儀文化に深く根ざしたこの企業について、その成り立ちやサービスの特徴、そしてビジネスとしての可能性をご紹介いたします。
フィリピンのメモリアルサービス最大手「St. Peter(セント・ピーター)」
著者:フィリピンgramフェロー たこ坊
公開日:2026年 07月24日
St. Peterとは
St. Peter Life Plan, Inc.は、Francisco “Tatay” M. Bautista氏によって1970年10月に創業されたフィリピンのメモリアルサービス専門企業です。葬儀サービス部門であるSt. Peter Chapelsは1975年6月6日に設立され、以来50年以上にわたってフィリピン国民に対してプロフェッショナルかつ伝統的な葬儀サービスを提供してきました。
現在はケソン・シティ、バギオ、セブ、イロイロ、タクロバン、バコロド、ダバオ、カガヤン・デ・オロなど全国の主要都市に22か所のメガチャペルを構えるほか、全国で280以上の支店を展開。保険委員会(Insurance Commission)の監督下に置かれており、信託残高はすでに1,000億ペソ(約2,600億円)を超えています。また全米葬儀社協会(NFDA)からExcellence Awardを12年連続受賞するなど、国内外で高い評価を受けています。
(引用元:St. Peter 公式サイト │ About St. Peter Chapels
https://www.stpeter.com.ph/chapel)
フィリピン人の葬儀文化「ブロール(Burol)」
St. Peterのサービスを理解するには、フィリピン独自の葬儀文化を知ることが欠かせません。フィリピンでは葬儀の際にブロール(Burol)と呼ばれる通夜・ウェイクが行われます。これは遺族と参列者が数日から、長い場合は2週間以上もの間、故人のそばに集まり、祈りや思い出話を共有する場です。
フィリピンはカトリック国家であることから、葬儀はキリスト教的な儀式を基盤としていますが、スペイン植民地時代以前から受け継がれる土着の風習や迷信も色濃く残っています。例えば「ウェイク中は入浴してはならない」「棺は足の方を先に出す」などの慣習が今も一部の家庭で守られています。また、フィリピン人にとって死は家族の絆を深める機会と捉えられており、遠方の親族も含め大家族が集結する一大行事となります。
(引用元:St. Peter 公式サイト │ DEATHCARE 101: Only in the Philippines
https://stpeter.com.ph/grief/deathcare-101-only-in-the-philippines714)
ライフプランという「備え」の文化
St. Peterが提供するサービスの中でも特にビジネス的に興味深いのが、St. Peter Life Plan(ライフプラン)と呼ばれる葬儀の事前積立プランです。日本でいう互助会のような仕組みで、生前に毎月一定額を5年間積み立てておくことで、亡くなった際に葬儀一式(遺体の搬送、エンバーミング、4日間の冷房完備チャペルでのウェイク、棺桶、霊柩車など)が保証されます。
最も人気の高いプランのひとつであるSt. George Planを例に挙げると、月額約900ペソ(約2,350円)、5年間の分割払いで総額約4万7,400ペソ(約12万3,000円)です。一方、事前積立なしで同等の葬儀サービスを利用した場合(at-needと呼ばれます)は約11万5,000ペソ(約30万円)かかるとされており、事前にプランを購入することで60%以上の節約になるケースもあります。
実際に、筆者のパートナーのご両親もすでにSt. Peterのプランを購入済みです。話によると「本来であれば葬儀一式で10万ペソ近くかかるところ、早めに契約しておいたことで3万ペソ台に抑えられた」とのこと。フィリピンの一般会社員の平均月収が約1万〜2万5千ペソであることを考えると、突然の葬儀費用として10万ペソ近くの現金を即座に用意することはほとんどの家庭にとって非常に難しく、事前積立の意義がいかに大きいかがよくわかります。
また、このプランはインフレ対策として設計されており、契約時点の価格が将来にわたって保証される仕組みになっています。物価が上昇してもサービスの内容は変わらず提供されるため、長期的な視点での資産保護ともなっています。加えて生命保険・事故保険も付帯しており、払込期間中に万が一のことがあった場合は残りの未払い残高が免除されるなど、金融商品としての設計も優れています。
支払方法も月払い・四半期払い・半年払い・年払いから選べるほか、一括払いでは10%割引が適用されます。また、プランは他の故人や第三者への譲渡・割り当ても可能なため、自分が購入したプランを急逝した親族に使うといった柔軟な活用もできます。
(引用元:Seats For Two │ How to Buy a St. Peter Memorial Plan
https://seatsfortwo.com/lifestyle/how-to-buy-st-peter-memorial-plan/)
(引用元:St. Peter 公式サイト
https://www.stpeter.com.ph/life-plan)
デジタル化が進むメモリアルサービス
St. Peterが他のメモリアルサービス会社と一線を画す理由のひとつが、積極的なテクノロジー活用です。特に注目すべきサービスがSt. Peter eBurolです。これはフィリピンで初めて導入された24時間リアルタイムのオンライン通夜視聴サービスで、海外で働くOFW(海外出稼ぎ労働者)や遠方に住む親族が、インターネットを通じて故人のウェイクにバーチャルで参列できるという画期的なサービスです。
フィリピン国民の約1割はOFWとして海外に滞在しており、家族の葬儀に帰国が間に合わないというケースも少なくありません。そんな状況に対応するために生まれたeBurolは、フィリピンならではの社会課題を技術で解決した好例と言えるでしょう。同様に葬儀・埋葬の最終日をオンラインで記録・配信するSt. Peter eLibingや、故人を偲ぶ音楽・賛美歌・祈りのプログラムSt. Peter Tributeも無料で提供されており、遺族への手厚いサポートが充実しています。
(引用元:St. Peter 公式サイト
https://www.stpeter.com.ph/e-service)
CSR活動と社会的役割
St. Peterはビジネスとしての展開だけでなく、社会貢献活動(CSR)にも力を入れています。乳幼児の遺族向けに葬儀サービスを無償提供するFREE Memorial Services to Infants(乳幼児向け無料サービス)、聖職者向けの無料サービスギフト券の提供、さらには環境への配慮として故人の名を冠した樹木を植えるSt. Peter Soul Trees Program(ソウルツリーズ・プログラム)などを展開しています。
また、F&Mレビュー・トレーニングセンターと連携したエンバーマー(遺体保存処置師)のライセンスプログラムを実施するなど、業界全体の人材育成にも貢献しています。単なるビジネスにとどまらず、フィリピン社会の弔いの文化を守り発展させる役割を担っている点が、St. Peterが長年にわたり支持されてきた理由のひとつと言えるでしょう。
(引用元:St. Peter 公式サイト │ About St. Peter Chapels
https://www.stpeter.com.ph/chapel)
まとめ
今回はフィリピンのメモリアルサービス最大手St. Peterについて、葬儀文化の背景とライフプランの価格感もあわせてご紹介いたしました。月額900ペソ(約2,350円)から始められる事前積立プランが葬儀費用を60%以上削減できるという事実は、平均月収が低く突然の出費が家計を直撃しやすいフィリピン人にとって非常に説得力のある価値提案です。公式発表ではないものの400万人ものアクティブプランホルダーを抱えているとされるSt. Peterは、まさにフィリピン人の”もしもの備え”に深く寄り添ってきた企業と言えるでしょう。
eBurolのようなデジタルサービスへの積極的な投資、インフレ対策・生命保険付きのライフプラン設計、CSR活動による社会的信頼の醸成など、St. Peterの事業モデルはフィリピン市場への参入を検討されている方にとっても多くのヒントを含んでいます。フィリピンは平均年齢が24歳と若く、今後も人口増加が見込まれる成長市場です。メモリアルサービスという一見ニッチな分野においても、文化・習慣・テクノロジーを組み合わせることで大きなビジネスチャンスが生まれることを、St. Peterは実証してくれています。
今回ご紹介した情報が何かのご参考になりましたら幸いです。






















