16歳未満はSNS禁止へ ―― マレーシアの新ルール

以前ここで、マレーシアが子どものSNS利用に年齢制限を設けようとしている、という話を取り上げました。あのときはまだ検討段階で、「16歳未満は使えなくなるかもしれない」という案をご紹介したにすぎませんでした。
その方針が、ついに現実になりました。2026年6月1日、オンライン安全法2025に基づき、子ども保護コード(CPC)とリスク軽減コード(RMC)が施行されたのです。検討中とお伝えしたあの16歳の線引きが、いよいよ動き出しました。
では、このニュースについて詳しく見ていきましょう。
(引用元:Malaysia begins enforcing social media age verification rules | The Star
https://www.thestar.com.my/news/nation/2026/06/01/malaysia-begins-enforcing-social-media-age-verification-rules)

16歳未満はSNS禁止へ ―― マレーシアの新ルール
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年08月26日
検討中だった「16歳の線引き」が、ついに現実に

これからは16歳未満の子どもは、SNSの新規アカウントを作れなくなります。
私は日本語教師として、子どもから大人まで幅広く教えています。マレーシアに15年あまり暮らし、この国の子どもたちもそれなりに見てきました。だからこのニュースで、まず頭に浮かんだのは教え子たちの顔です。今どきの子は、SNSで日本のアニメや音楽に触れ、そこから日本語に興味を持つ子も少なくありません。その入り口がひとつ狭まるのかもしれない。そう思うと、複雑な気持ちになりました。
年齢確認は「公的書類」で
新ルールでは、利用者は自分の年齢を証明しなければなりません。しかも、その方法がなかなか厳格です。
MyKad(国民IDカード)、パスポート、あるいはMyDigital IDといった、政府が発行する公的書類で年齢を確認する仕組みです。年齢を推定する技術でゆるやかに確かめる国もありますが、マレーシアは公的書類による確認を求める、かなり踏み込んだ方式を選びました。守らないプラットフォームには、最大1,000万リンギット(約4億円!)の罰金が科されます。
「1か月の猶予」も
では、今すでにアカウントを持っている16歳未満の子はどうなるのか。
ここには配慮がありました。当局は、移行期間として1か月の猶予を設けています。その間に、これまで投稿した写真や動画などのデータを、ダウンロードしたり移したりできる。いきなりすべてを失うわけではないという設計です。なお、ルールを守る義務はあくまでプラットフォーム側にあり、親や保護者が罰せられることはないと当局は明言しています。
なぜ、ここまで踏み込んだのか
背景には、痛ましい事件がありました。昨年10月、クアラルンプール近郊で14歳の少年が同級生の少女を刺殺し、その手記にはネットやゲームの影響をうかがわせる記述があったと報じられています。子どもをSNSの有害な情報から守りたい――そういう切実な思いが、この厳しいルールの土台にあるのでしょう。
隣のシンガポールはどうか
ここで気になるのが隣国シンガポールの動きです。
シンガポールも、ほぼ同じ時期にオンライン安全委員会という新組織を立ち上げ、ネット上の被害から人々を守る仕組みを整えようとしました。ただ、その力点は少し違います。
マレーシアが「子どもを入り口で止める」ことに重きを置くのに対し、シンガポールは「被害が起きたあと、いかに速く救うか」に軸足を置いているように見えます。同じ課題に隣り合う二国が異なる角度から向き合っている。長くこの地域を眺めてきた私には、その対比がとても興味深く映ります。
線を引くことの、難しさと優しさ
子どもを守りたい。その気持ちに、異論を唱える人はいないでしょう。けれども、どこに線を引くかは、いつも難しい問題です。
学びの入り口を狭めるのではないか、という懸念もあります。一方で、まだ幼い心を守る盾になるのも確かです。教える者として私は、ルールに頼りきるのではなく、子どもたちと一緒にネットとの付き合い方を考えていくことこそ大人の役目なのだと思います。
線を引く優しさと、手を引く優しさ。その両方を、忘れずにいたいものです。


















