マレーシアで進む高齢化 医療と介護、間に合うのか?

クアラルンプールに住んで15年あまりになります。
最近、近所のクリニックの待合室で、ふと気づいたことがありました。以前は子どもを抱いた若い母親が多かったのに、いまは杖をついたお年寄りや、その付き添いの家族の姿が目立つようになっています。
気のせいかと思っていたのですが、数字を見ると、そうでもないようでした。
今回は、マレーシアの高齢化について深掘りします。
(引用元:Ageing population set to strain healthcare system up to five times higher, expert warns | Health | The Vibes
https://www.thevibes.com/articles/lifestyles/121590/ageing-population-set-to-strain-healthcare-system-up-to-five-times-higher-expert-warns)

マレーシアで進む高齢化 医療と介護、間に合うのか?
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年08月10日
2030年、マレーシアは「高齢国家」に入る
マレーシア政府の統計では、65歳以上が人口に占める割合は2025年時点でおよそ8%。これが2030年には、60歳以上で15%を超える見通しだと、地元紙のThe Star Malaysiaが報じました。シンガポールや日本ほど派手に報じられませんが、東南アジアの中ではかなり早いペースで高齢化が進んでいる国のひとつなんです。
しかも、保健省が今年4月に発表した最新の国民健康調査では、健康に歳を重ねている高齢者はわずか14.7%という結果が出ました。残りの大半は、糖尿病、高血圧、認知症のいずれか、あるいはその複数を抱えながら日々を過ごしているといいます。ただ長生きするだけでは済まないところが、この問題のやっかいなところです。
医療費は若い人の3倍から5倍
公衆衛生の専門家によると、高齢者一人にかかる医療費は若年層の3〜5倍にのぼるそうです。
先日、駐在員時代から付き合いのあるマレー系の友人とコピティアムで会いました。彼は45歳、最近お母さまの介護の話をぽつりと打ち明けていました。「クリニックの予約は半年先まで埋まっている。母を待たせるわけにもいかないから、結局プライベートに切り替えた。ひと月で給料の3分の1が消える」と。
彼は華人ではなく、ブミプトラ政策の恩恵もそれなりに受けてきた人です。その彼でも、こうのが今語るのが今のマレーシアです。
施設の数が、まったく足りていない
介護施設の数も、需要に追いついていません。
登録済みの高齢者ケアセンターは全国で393か所、ナーシングホームは26か所しかありません。一方、未登録の施設は700〜1,000以上あると推計されています。つまり、表に出てこない介護の現場が、家族と無認可の施設に支えられているということです。
看護師の海外流出も深刻です。シンガポール、サウジアラビア、英国、オーストラリアへ移る若い看護師が後を絶ちません。給与が2〜4倍違うのですから、引き止めようがありません。
介護保険はまだ未整備
専門家の間で繰り返し議論されているのが、長期介護保険の導入です。
日本は2000年から、韓国は2008年から、シンガポールは2020年から独自の制度を始めています。マレーシアにはまだありません。政策の枠組み自体は「国家高齢化フレームワーク2025〜2045」として整いつつありますが、肝心の財源の仕組みができていないのが現状なのです。
高齢化が進んだ後のマレーシア
ここに住んで30年近く、私自身もすでに高齢者の入り口にいます。
マレーシアの高齢化は、駐在で来た若い世代が老いていくこれからの30年と、ほぼ重なります。医療と介護の制度が間に合うかどうかは、この国に骨を埋めるつもりの日本人にとっても、決して他人事ではないわけです。
マレーシアの高齢化は、政策が議論されている速度より、現実のほうがずっと速く進んでいます。介護人材の確保、長期介護保険の制度設計、そして家族に頼りすぎない仕組みづくり。どれももう先延ばしのできない話になってきました。
友人の母親の世代が80代、90代を迎えるころ、この国はどうなっているでしょうか。


















