エアコンが少ない国で暮らして気づいたこと

イタリア人の夫が日本の夏についてよく驚くのは、暑さそのものではありません。むしろ驚くのは、建物の中がとても涼しいことです。
電車や商業施設、スーパーに入るたびに「寒い」と言うこともあります。夫はよく、「外と中の温度差が大きすぎて、かえって疲れるんじゃない?」と話します。
実際、夫はイタリアでもあまりエアコンを使いたがりません。真夏でも車のエアコンをつけず、窓を開けて汗をかきながら運転しています。
日本人の私からすると信じられないことですが、イタリアで暮らしていると快適さに対する考え方そのものが違うことに気づかされます。


エアコンが少ない国で暮らして気づいたこと
著者:イタリアgram fellow たなかさき
公開日:2026年09月07日
日本の「涼しさ」は世界標準ではない

日本では、夏になると駅や電車、オフィス、商業施設など、多くの場所で冷房が効いています。外が35度を超えていても、建物の中に入れば快適に過ごせることがほとんどです。
日本で暮らしていると当たり前に感じますが、この環境は世界的に見れば決して標準ではありません。
一方、イタリアでは事情が少し異なります。もちろん大型スーパーやショッピングモールには冷房があります。しかし、日本ほど強く冷やされていることは少なく、個人商店や小さなバルに入ったり、バスに乗ったりすると、外とほとんど変わらない暑さを感じることもあります。
イタリアでは「少し暑いくらいなら普通」という感覚が残っています。
日本91.7%、イタリア56.0%の冷房事情
こうした違いは住宅事情にも表れています。日本では内閣府の令和7年消費動向調査によると、ルームエアコンの世帯普及率は91.7%に達しています。
一方、イタリア国家統計局(ISTAT)によると、2024年時点で何らかの冷房設備を備えている世帯は56.0%でした。
近年は普及が進んでいるものの、日本との差は依然として大きいままです。こうした数字からも、日本とイタリアでは冷房に対する考え方に大きな違いがあることがわかります。
暑さと戦うより暑さと付き合う
日本では暑ければ冷房を強くすることが一般的です。しかしイタリアでは、暑さへの向き合い方が少し違います。
昼間は窓やシャッターを閉めて直射日光を防ぐ。朝晩の涼しい時間帯に換気をする。よく冷えたスイカやパイナップルを食べて涼む。
暑さを完全になくすというより、上手に付き合うという発想です。真夏の日中には、多くの家で日差しを遮るためにシャッターが閉められています。
さらに、最も暑くなる8月にはバカンスをとる人も少なくありません。海辺や山間部の避暑地へ出かけ、都市部の暑さから離れて過ごします。
日本では猛暑の中でも通常通り働くことが一般的ですが、イタリアでは暑さに合わせて休暇をとったり、生活リズムを調整したりする文化が今も残っています。
8月が終わると街には日焼けした人たちがあふれます。「海へ行ってきた」「今年はシチリアだった」といった会話もよく聞こえてきます。こんがり焼けた肌を見ると、「今年もみんなバカンスを満喫したんだな」と感じます。
快適さのつくり方が違う
日本の冷房文化は、多くの人が快適に過ごせる環境を作るという考え方の表れなのかもしれません。
一方、イタリアでは多少の暑さを受け入れながら暮らし方を工夫し、環境に適応しようとする考え方が見えます。
汗をかきながら窓を開けて運転する夫や、休暇明けに日焼けした人たちであふれる街を見ていると、快適さの考え方そのものが国によって違うのだと感じます。
【参考】
◇Household energy equipment – Year 2024 – Istat:
https://www.istat.it/en/press-release/household-energy-equipment-year-2024/
◇消費動向調査(令和7 (2025)年 12 月実施分)結果の概要【PDF】:
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/kekkanogaiyou2025.pdf




















