チェーン店より「あの店」が選ばれる国

イタリアで暮らしていると、日本との違いを感じる場面がよくあります。そのひとつが、個人店や家族経営の店の多さです。
日本では外食をしようと思うと、「サイゼリアに行こう」「スシローに行こう」といったようにチェーン店の名前が候補に挙がることも少なくありません。一方、イタリアでは「あの店に行こう」という会話をよく耳にします。
それはレストランだけではありません。ジェラート店やバル、市場の店まで含めて、どこのチェーンかよりもどの店かが重視されているように感じます。


チェーン店より「あの店」が選ばれる国
著者:イタリアgram fellow たなかさき
公開日:2026年08月28日
- チェーン店より「あの店」が選ばれる国
- 16歳未満はSNS禁止へ ―― マレーシアの新ルール
- 「死ぬまでに一度は日本へ」 イタリアでも広がる日本旅行ブーム
- 24年ぶりの決勝、そして惜敗 ―― バドミントンの話題
ジェラートが日常にある国

私が特にその違いを感じるのはジェラートです。日本に一時帰国しても、パスタやピザが恋しくなることは意外とありません。しかし、イタリアに戻ったら絶対に食べたい!と思うものがあります。それがジェラートです。
イタリアではジェラートを扱う店舗が約3万9,000ヶ所あり、そのうちジェラート専門店だけでも約9,300店にのぼるとされています。さらに業界全体では約9万人の雇用を支え、市場規模は約50億ユーロに達しています。
日本人にとってコンビニが身近な存在であるように、イタリア人にとってジェラートは日常的な食べ物です。しかし興味深いのは、ジェラートがこれほど身近な存在でありながら、大手チェーンだけに集約されていないことです。
日本ならコンビニコーヒーのように全国どこでも同じ商品が広がりそうなものですが、イタリアでは今日でも個人経営のジェラート店が数多く支持されています。
家族経営が支える街の商売
こうした文化の背景には、イタリア経済の特徴もあります。European Commissionによると、イタリア企業の99%以上は中小企業で、その多くが地域に根差した事業者であり、家族経営によって支えられています。
レストランでは父親が厨房、母親がホール、子どもたちが接客や会計を担当しているケースも珍しくありません。代々受け継がれてきた店も多く、家族の歴史そのものが店の価値になっています。
日本でも家族経営の店はありますが、イタリアではそれが特別な存在というより、ごく日常的な光景です。街を歩いていると、何世代にもわたって続く店や、家族全員で切り盛りしている店を見かけることも少なくありません。
こうした店では、料理やサービスだけでなく、誰が営んでいるかも含めて評価されます。そのため、チェーン店にはない親しみや信頼感が生まれやすいのかもしれません。
「あの店」が選ばれる理由
もちろん、イタリアにも大型スーパーやチェーン店はあります。それでも街の人たちは、お気に入りのレストランやジェラート店、八百屋に通い続けます。効率だけを考えれば、どこでも同じ品質の商品を提供できるチェーン店のほうが便利かもしれません。
しかしイタリアでは、価格や利便性だけで店が選ばれているわけではないように感じます。店主との会話や信頼関係、その店ならではの味や雰囲気も含めて商品価値になっているのです。
小さな店が残り続ける理由
効率化や標準化が進む現代では、規模の大きな企業のほうが有利に見えることがあります。しかし、イタリアの個人店や家族経営の店を見ていると、競争力とは必ずしも規模だけで決まるわけではないことがわかります。
その店ならではの味、その家族だからこそ築ける信頼関係、その地域に根付いた歴史。そうした要素が積み重なり、人々が「あの店」を選ぶ理由になっています。
イタリアで暮らしていると、チェーン店が少ないのではなく、小さな店が選ばれ続けているのだと感じます。その背景には、効率や価格だけでは測れない価値を大切にする、イタリアらしい商売観が息づいているのかもしれません。
【参考】
◇Gelaterie artigianali, manca il personale qualificato | Confcommercio:
https://www.confcommercio.it/-/gelato-artigianale
◇European Innovation Scoreboard 2025 │ KoWi – Kooperationsstelle EU der Wissenschaftsorganisationen【PDF】:
https://www.kowi.de/Portaldata/2/Resources/fp/2025-EIS.pdf




















