中国で焼肉が外食市場のシェアを拡大:現地で人気の焼肉チェーンとは
近年、外食文化の根強い中国では「焼肉」が消費者の選択肢の1つとして人気を集めている。中国での焼肉の消費頻度は、2017年の3.1回/年から2021年には4.5回/年に増加。一人当たりの年間消費支出は、2017年の284元から2021年には472元へと増加し、年平均成長率は10.69%に達したという。
中国のSNSで話題となっている焼肉弁当や、現地で人気を集める日本の焼肉チェーンなど、急拡大する焼肉市場について紹介する。
中国で焼肉が外食市場のシェアを拡大 現地で人気の焼肉チェーンとは
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年10月17日
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中国のSNSで話題 お一人様焼肉弁当
日本料理が世界で流行っている中、「Sushi」「Ramen」「Okonomiyaki」など日本語がそのまま英語に変化しているが、中国で焼肉は「烧肉」と漢字が似ていて、日本人ならなんとなく読めるだろう。今年9月10日にあった国民の休日「中秋節」、日本でいうお月見にあたる日は家族や大切な人と集まる風習があり、焼肉店に行ってご飯を食べたという中国人の友人もいた。
中国では焼肉ブームが到来しており、中国のSNSで「焼肉弁当」が話題となっている。焼肉弁当と聞くと日本人なら既に焼いてある肉が入っているものを想像するが、中国で流行している弁当に入っているのはなんと生肉。弁当の中にミニグリルが入っており自分で肉を焼くスタイルなのだ。焼肉店に行かず、ホットプレートなどの機器も使わずに美味しい焼肉を味わえる。
気になる着火方法だが、付属されているマッチで炭に火を付ける。食べ終わったら付属の小袋に入った水を炭に直接かけて火を消す。取り扱いを誤ると大惨事となりそうだが食べてみたいという声は多い。自分で焼ける焼肉弁当ブームが今後も続くかは疑問だが、町にある焼肉店はここ数年で増加し、個人経営の焼肉店だけでなく焼肉チェーン率も2019年の8.6%から2021年には14.2%に上昇。焼肉チェーンが急速にシェアを伸ばしていると現地メディアは伝えている。
現地で人気を集める日本の焼肉チェーン
中国版食べログといわれているアプリ「大众点评」で、焼肉店を調べると口コミ★4.5以上という高評価は珍しくない。焼肉の需要が高い分消費者の舌も肥えている中国市場で、日本の焼肉チェーンも負けていない。
日本で売上、店舗数ともに焼肉チェーンNo.1の「牛角」が中国でも人気を集めている。2017年に北京市に1店舗目をオープンさせて以降、2022年9月現在、中国本土に33店舗をオープンさせた。また中華圏では香港に24店舗、台湾に18店舗と規模を拡大している(筆者調べ)。大众点评での評価は★4.5以上が多く、低くても★4以上の店舗が多い印象。1人当たりの単価は200元~300元(約4,000円~6,000円)と、中国で日式焼肉を食べるのなら安くも高くもない平均的な値段に近い。
肉の価格は人気No.1の「牛角牛カルビ」は139元(約2,780円)、中国でも好んで食べる人が多くなっている牛タンは59元(約1,180円)、厚着り牛タンは118元(約2,360円)。特におすすめされていたのは牛肉盛り合わせ599元(約11,980円)。SNSで牛角と調べると、肉の盛り合わせの映える写真を投稿している人が多かった。高く積み上げられたポップコーンアイスや牛角プリン、バーベキュー気分を味わえるような焼いたマシュマロをクラッカーにサンドして食べるデザートも注文している人が多いように見受けられた。
中国の牛肉消費量が増加 世界の4分の1を占める
中国連鎖経営協会がこのほど華興資本と共同で発表した「2022年中国外食産業チェーン報告」によると、中国の外食市場の規模は2014年の2兆9千億元(1元は約20.0円)が19年の4兆7千億元に拡大し、複合年間成長率は10.1%だった。20年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、規模が15.4%縮小して4兆元になった。感染症の予防・抑制が常態化すると、国民の消費意欲が再燃し、21年の外食市場の規模は同18.6%拡大して4兆7千億元になったと、北京日報が伝えた。
八大菜系と焼き肉は3年連続で店舗数が増加。焼き肉は外食市場で増加ペースが最も速いジャンルであり、感染症の期間に回復ペースが最も速いジャンルでもあった。現在、焼き肉産業の市場規模は毎年10%前後のハイペースで拡大を続けている。
(引用:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2022/0806/c94475-10132135.html)
肉の消費量としては豚肉が圧倒的に多い中国だが、ここ数年で都市部を中心に牛肉の消費量が右肩上がりに伸びている。消費場所は家庭の食卓ではなく、外食先の焼肉や火鍋などのお店が主。消費者層は若者が中心で、2021年焼肉の消費者層は24歳~40歳の層が69.5%と占めたという。牛肉に比べ豚肉は安価で手に入り一般家庭でよく使う慣れ親しまれた食材であった。だが近年、居酒屋など日式外食ジャンルの浸透と中間所得層が増加していることで牛肉の消費量も増えている。国内生産だけでは全く追い付かなくなっている中国の牛肉消費量が、予想を超えて世界の牛肉価格に影響を及ぼしているとクーリエ・ジャポンは以下の通り伝えた。
アルゼンチンから中国へ輸出される牛肉の量は急激に増加しており、2017年には9万6000トンだったが、わずか2年後の2019年には42万6000トンに増えて、2020年は約50万トンにまでのぼっている。中国市場でより大きなシェアを確保するために、アルゼンチンは2025年までに中国への牛肉輸出量を135万トンにまで増加させる目標を立てていた。アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は、「牛肉価格の高騰の理由は説明がつかないものではない」と語り、その主な原因が世界の4分の1の牛肉を消費している中国にあると指摘した。
中国が豚肉、牛肉、羊肉、家禽類などを輸入するのは、食習慣の変化によるものだけではなく、鳥インフルエンザや豚コレラなど食品安全に関する問題がたびたび発生したことも影響しているという。
2020年に中国は約212万トンの牛肉を世界から輸入。これは史上最大の輸入量となった。中国へ牛肉を輸出する国の数も拡大しており、たとえば2021年第1四半期にロシアから中国へ輸出された牛肉は前年比26倍と急激に増加している。
(引用:クーリエ・ジャポン https://courrier.jp/news/archives/247173/)
まとめ
新しい物への好奇心とチャレンジ精神の強い中国の若者だけでなく、筆者の周りの中国人高齢者にも焼肉のウケは良く、幅広い世代の味覚にマッチしているのだろう。家族など大切な人と集って食を囲むことを大切にしている中国では、まさに焼肉は外食するうえで選択肢の1つとして浸透しつつある。都市部を中心に拡大する焼肉ブームだが、農村部での牛肉消費量は都市部と比較するとまだまだ低く、ブームが遅れてくる農村部の伸びしろは大きい。
引用:产业信息网 https://www.chyxx.com/industry/1118546.html