過去最高を更新し続ける、マレーシア市場

マレーシア

日本政府観光局が発表した2026年5月の訪日外客統計で、マレーシアからの訪日者は7万2,200人、前年同月比39.6%増を記録しました。全体の訪日客数が中国市場の落ち込みで前年割れとなるなか、マレーシアは19市場とともに5月として過去最高を更新しています。東南アジアでもとびぬけた伸び率です。

そこで今回はこの記事を深堀して、マレーシアの日本旅行熱についてお伝えします。

(引用元:2026年5月訪日客数3.6%減の356万人、中国前年割れ続くも19市場が好調、中東は増加転換 | やまとごころ.jp
https://yamatogokoro.jp/inbound_data/60472/

過去最高を更新し続ける、マレーシア市場 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年09月16日

「憧れの国」から「家族で行く旅先」へ

私はこの30年、アジアで暮らしてきました。シンガポールに12年、マレーシアに15年あまり。最初は会社の都合で移り住んだ土地でしたが、いつの間にかここが暮らしの中心になりました。

その長い時間のなかで、日本という国の位置づけが大きく変わったと感じています。かつて日本は「いつか行ってみたい、少し遠い憧れの国」でした。それが今では、家族で気軽に出かける旅先のひとつです。私の周囲でも、3世代でそろって日本を旅したという話を、ここ数年で何度も聞くようになりました。一度行った人が翌年また別の地方を訪れる、リピーター化が確実に進んでいます。背景には、リンギット高、航空便の増便、そしてスクールホリデー需要があると分析されています。けれど現地で15年あまり暮らす私にはもう少し実感のある変化が見えています。

1カ月で4人——個人旅行が主流という実感

実は、この1カ月だけで、私の身近な知人(日本語の生徒さん)のうち4人が日本を訪れていました。行き先は北海道、関西、そして東北と、見事にばらけています。

興味深いのは、4人とも団体ツアーではなく、自分で航空券と宿を手配した個人旅行だったことです。観光庁の調査でも、観光目的の訪日マレーシア人の約8割が個人旅行とされていますが、その数字を見事に裏づけられた思いでした。SNSを駆使し公共交通やレンタカーで地方まで足をのばす。こうした旅のスタイルが、いまのマレーシアの標準になりつつあります。

観光客ではなく、「迎える側」に回った人

そして、もう一歩進んだ動きも生まれています。知人の一人は、昨年の暮れから日本でシャレー、つまり山あいの貸し別荘を建てて経営を始めました。日本を訪れて消費する側から、訪れる人を迎え、現地で収益を生む側へと回ったのです。

雪の積もった軒先や宿泊客とのやりとりの話を聞くたびに、私はある手応えを感じます。マレーシアの個人や中小事業者が、日本でビジネスの拠点を持つ。観光ブームが一過性の消費で終わらず、投資や事業へとつながり始めている。その兆しを、ひとつの実例として目の当たりにしているのです。

宝がまだ地方に眠っている

JNTOの調査では、マレーシア人の約8割が「地方訪問を希望する」と答えています。一方で、地方部の宿泊数は都市圏ほど伸びていないのが現状です。つまり、需要と受け皿のあいだに、まだ大きな空白が残されているのです。

ムスリムが多数を占める国ですから、ハラル対応や礼拝環境の整備が地方が選ばれるかどうかの分かれ目になります。逆に言えば、そこに手を打てた地域こそ、次の伸びを取り込めるということです。私の知人のシャレーが小さくとも成り立っているのは、この空白に一足先に踏み込んだからにほかなりません。

新しい関係が動き始めている

訪日マレーシア人の39.6%増という伸びは、為替や航空便だけでは説明しきれません。個人旅行の定着、地方への関心、そして「訪れる側」から「迎える側」への転換。現地で30年を過ごしてきた私の目には、観光という言葉では収まらない、より深い経済的なつながりが芽生え始めているように映ります。この空白をどう埋めるかが、日本の地方とマレーシア双方にとっての次の課題になるでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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