森の中から自己調達!エストニアのクリスマスツリー

エストニア

ヨーロッパの冬は10月ごろからクリスマス色が強くなってくる。ここエストニアはクリスマスツリー発祥の地(諸説あり)で、生木のクリスマスツリーを家に飾る人も多い。この木を入手する面白い方法として、森の中に入って自分で木を切っていく、というものがある。この独特な入手方法を中心にエストニアのクリスマスツリーについて紹介していく。

森の中から自己調達!エストニアのクリスマスツリー

著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2024年1月4日

エストニアのクリスマスツリー

ヨーロッパの冬といえばクリスマス。12月から1月初旬までは各地の市中心部ではクリスマスマーケットが開催される。クリスマスマーケットと聞いて想像するのはキラキラと輝く電飾、ホットワインやおいしそうな食べ物が並ぶ屋台の光景かもしれないが、忘れてはいけないのが大きなクリスマスツリーだ。

ここエストニアは諸説あるが、ヨーロッパで一番初めにクリスマスツリーを飾った場所といわれている。クリスマスツリーといってもその実態は「広場に針葉樹を立てた」という現代のクリスマスツリーとはかけ離れた形のものだ。諸説あるというのは、お隣のラトビアもクリスマスツリー発祥の地を主張しているからだ。双方書物に「広場に木を立てて祝った」という記述があるが、それをクリスマスツリーと呼んでいいのかという疑問がある。このような理由から、ラトビアとエストニアどちらも自称クリスマスツリー発祥の地としてそれぞれ活動している。

自分で調達するクリスマスツリー

そんなクリスマスツリー発祥の地エストニアでは、家庭に置くクリスマスツリーに使う生のモミの木を自分で調達するのだ。生のモミの木をクリスマスツリーに使うこと自体は海外ではそこまで珍しいことではない。日本にある北欧初の有名家具量販店でもクリスマスシーズンは生のモミの木を販売しているくらいだ。

珍しいのは「自分で切り倒しに行く」という点だ。調達するというのは、ただ店に木を買いに行くことではないのだ。自分で森に入って好みの木を探し切り倒す。これがエストニア流である。

しかし、この一見ワイルドに見えるクリスマスツリーの入手方法は、エストニアが得意とするIT技術を使ってかなりやりやすくなっている。その方法は以前紹介した手作りウィスク(サウナツール)に必要な木の枝を森に取りに行く手順に似ているが、多少異なる。事項で詳細に説明していく。

クリスマスツリーの調達方法

まずはどこの森の木なら切ってもいいのかを調べる必要がある。

エストニアの森林管理をする部署が出している公式アプリをインストールして地図を確認する。地図上には、ユーザーの位置と木を入手できる最も近い地点が表示される。

この地図上の濃い緑色で塗られた部分が、入っていい森である。茶色でマーキングされた部分は自然保護地域となっているため、ここから木を切っていくことはできない。

地図上に表示される森はすべて国有林だ。国有林の中でも道路や側溝の端、電線や原生林の下など、これ以上成長する可能性がほとんどない場所からしか採取できない。少し制限はあるが、家にそんなに大きい木を持ってきても1ヶ月程度で捨てることになるのだから合理的な判断だろう。

そして森の中に入ったら、木を切ろうとしている場所が保護区でないことをアプリを使用して確認したうえで、自分好みの木を探す。

注意すべきことのひとつに、伐採する木の代金は木の高さによって変動するということだ。この値段は1m以下なら3€、1-2m以内なら8€(2022年の場合)と1mごとに変動する。木を切って持って帰るためにはライセンスを購入する必要があるがこれは携帯もしくは銀行から払うことができる。

こうした流れを経ることでクリスマスツリーを自分の家に持って帰ることができるのだ。森林資源がたくさんある国だからこそできる一種のイベントだ。

クリスマスツリーを国有林から調達していい期間は11月末からクリスマス周辺までの約1ヶ月だが、この間に9700本もの木が個人に持ち帰られるという(2018年)。これは期間中に購入されたライセンスの数から導いた数のため、ひとつのライセンスで2、3本持って帰ってしまう人も中にはいることも考えると実際の数はもう少し多くなるだろう。森林を管理する側としては、この事業はビジネスとして成功させるというよりも、人々に森林について周知してもらう側面の方が大きいという。クリスマスツリーを販売するビジネスは国有林以外の森林所有者や農家、起業家のために残しているそうだ。

(引用元:estonian world
https://estonianworld.com/technology/want-to-cut-down-a-christmas-tree-in-estonia-theres-an-app-for-that/

(引用元:RMK
https://www.rmk.ee/organisation/press/news/news-2022/starting-today-you-can-get-your-christmas-tree-from-a-state-forest

(引用元:RMK :RMK About 10,000 Christmas trees were taken from the state forest
https://www.rmk.ee/organisation/press/news/news-2019/about-10-000-christmas-trees-were-taken-from-the-state-forest

(引用元:RMK :RMK FAQ https://www.rmk.ee/christmastree/faq

まとめ

エストニアの豊かな森林資源と先進的なIT技術を活用した自己調達のクリスマスツリーは、生木を家に飾るというクリスマスの伝統を現代に合わせて進化させている。 IT技術と慣習を掛け合わせた面白い取り組みはエストニアならではといえるだろう。

また、持って帰ることができる木に制限をかけることで、森林資源の管理に配慮し環境保護と持続可能性にも貢献している。森林から得られる資源は誰でも平等に享受する権利があるという考えを尊重しつつある程度制限をかけることで成り立つモデルケースだ。

エストニアの位置関係

さえきあき

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エストニア在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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