ドライバーのいないバスが、もう走っている――シンガポールの今

シンガポールを離れて十数年が経ちます。それでも、あの小さな島国がまた新しいことをやっている、というニュースを聞くたびに、どこかむずがゆいような、懐かしいような気持ちになります。
2026年4月1日。シンガポール北東部の住宅地プンゴルで、自動運転シャトルバスの一般向けサービスが始まった、と現地メディアが伝えました。エイプリルフールではないと現地メディアが念押しするほどの出来事でした。詳細をこの記事でお伝えします。
ドライバーのいないバスが、もう走っている――シンガポールの今
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年 07月22日
街を走る、5人乗りのロボタクシー
運行を担うのは、グラブと中国の自動運転企業ウィーライドの連合です。5人乗りの車両が、プンゴル東西を結ぶルートと、北西部の住宅地から主要施設を巡るルートの2路線を走っています。乗車時間は35〜50分ほど。ワン・プンゴルやプンゴル・コースト・モールといったモールを結び、既存の公共交通より最大15分の短縮になるといいます。
ハンドルは握るだけで操作はしない安全員が1名同乗していて、車内には走行中の案内アナウンスも流れます。現在は登録サイトから事前予約をすれば誰でも無料で試乗できます。2026年中頃からは1回4シンガポールドル(約495円)の運賃が適用される予定です。
ここに至るまでの積み重ね
この4月1日は、突然やってきたわけではありません。
2025年9月にプンゴルで試験運行が始まり、2026年1月には招待制のコミュニティ試乗が開始されています。その段階ですでに740名ほどが乗車し、回答者の99パーセントが「人に勧めたい」と答えたといいます。安全走行距離はすでに2万5千キロを超えています。そうした実績が積み重なって、陸運庁(LTA)が一般向けの開放を決めました。もう1社、コンフォートデルグロが運行するルートも控えています。
バス運転手が足りない
シンガポール政府がこの取り組みを急ぐ背景には、バス運転手の慢性的な不足があります。
運輸相代行のシオ氏は議会で「自動運転車両の導入によって、公共輸送網を拡大できる」と述べました。政府の調査では、調査対象の3分の2以上が自動運転車両の導入を支持していることも明らかになっています。
もっとも、自動運転バスの普及は自動車ほど簡単ではなく、「技術的にも商業的にも、自動運転バスは乗用車より開発が遅い」とシオ氏は話しています。
12年暮らして感じていたこと
私がシンガポールにいたのは、まだMRTが延伸中で、カードでバスに乗れるかどうかが話題になっていたような時代です。それでも当時から、シンガポールには新しいことをまず試すという空気がありました。小さいからこそ動きが速い。試したことが世界へのショーケースになる、その構図は今も変わっていません。
今回の試験がうまくいけば、次はセントーサ島やマンダイへの展開も検討されています。
ドライバーのいないバスに乗ること、ハンドルを誰も握らないままバスは静かに動き出すこと、それが普通の日となるのは、もうそこまで来ているのです。
未来が動き始めた
今回の試験走行は、運転手不足という現実的な課題への答えとして、シンガポールがまた一歩先へ踏み出したことを意味しています。成功すれば島内各地への拡大も視野に入ってくるでしょう。その波は実験都市シンガポールから、東南アジア全体へ広がろうとしています。






















