なぜイタリアの公共トイレは有料なのか

イタリアで生活していて、最初に戸惑ったことのひとつが公共トイレの有料文化でした。とくに駅では、トイレを利用するだけで1ユーロ前後かかることも珍しくありません。
日本では、駅や商業施設のトイレを無料で使えることが当たり前になっています。その感覚に慣れていると、体から不要なものを出すだけなのにお金を払うのかと、少し複雑な気持ちになることもあります。
しかし、イタリアで暮らしていると、この有料トイレ文化には単なる不便さ以上の背景があると感じるようになりました。


なぜイタリアの公共トイレは有料なのか
著者:イタリアgram fellow たなかさき
公開日:2026年07月27日
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「無料」が前提ではない公共サービス

イタリアでは、駅や観光地のトイレに管理スタッフが常駐していることがあります。利用者から料金を取る代わりに、一定の清潔さや安全性を維持するという考え方です。
もちろん、日本ほど常に清潔というわけではありません。それでも、維持にはコストがかかるという感覚が、日本よりもはっきり見えやすい社会だと感じます。
一方、日本では行政や施設側がコストを負担し、無料で使えることがサービスの一部として組み込まれています。清潔なトイレや丁寧な接客、水やおしぼりなど、日本では無料で提供されるものが少なくありません。
つまり、日本では見えにくい形でコストが吸収されているのに対し、イタリアでは利用する人が払うという考え方が比較的明確なのです。
観光大国を支えるインフラ
こうした背景には、イタリアが世界有数の観光国であることも関係しているのかもしれません。
Reutersによると、2023年のイタリアの観光宿泊数は約4億5100万泊に達し、過去最高を記録しました。さらに、外国人観光客が全体の過半数を占めています。ローマやミラノなどの主要都市では、駅や観光地に世界中から多くの人が集まり、公共設備への負荷も大きくなっています。
大量の利用者が行き交う公共空間では、清掃や設備維持の負担も大きくなります。駅のトイレには清掃スタッフが常駐していることも多く、無料設備というより、維持・管理されるサービスに近い存在として扱われています。
イタリアでは公共空間そのものが、日本ほど均一なサービス品質で整備されているわけではありません。だからこそ、必要なサービスには対価を払うという考え方が、日常生活の中に自然に組み込まれているようにも感じます。
日本のトイレが注目された理由

イタリアで暮らしていると、日本の公共サービスの細やかさを思い出す場面があります。駅や商業施設では無料で利用できるだけでなく、設備も整っており、清掃も行き届いています。
実際、この日本の公共トイレ文化は海外でも注目されています。役所広司さん主演の映画『PERFECT DAYS』は、東京の公共トイレを清掃する男性の日常を描いた作品ですが、イタリアでも話題になり、日本のトイレの清潔さや丁寧な管理に驚いたという声を耳にしました。
イタリアでは、日本ほど「高い清潔さ」が公共トイレに求められていないように感じることがあります。日本のように無料でレベルの高い清潔さを維持することは簡単ではありません。そのため、日本の公共トイレは単なる設備ではなく、見えないところまで整える文化として映っているのかもしれません。
「無料」に慣れた日本との違い
日本を離れて改めて感じるのは、日本の公共サービスの質の高さです。駅のトイレは無料利用できて、清潔に保たれ、紙が切れていることも少なく設備も整っています。
しかし、その快適さは誰かがコストを負担しているからこそ成立しています。日本ではその負担が見えにくい一方で、イタリアでは利用者が直接支払うことで、サービス維持のコストが可視化されています。
1ユーロという小さな支払いですが、そこには公共サービスを誰が支えるのかという価値観の違いが表れているのかもしれません。
【参考】
◇Flussi turistici – IV trimestre 2024 – Istat:
https://www.istat.it/comunicato-stampa/flussi-turistici-iv-trimestre-2024/
◇Tourist numbers in Italy hit record in 2023, foreigners a majority | Reuters:
https://www.reuters.com/world/europe/tourist-numbers-italy-hit-record-2023-foreigners-majority-2024-06-04/




















