漢方薬の世界的需要を見据えた東南アジア最大手買収|

シンガポール

ロート製薬と三井物産は、東南アジア最大の漢方薬メーカー「余仁生」を約880億円で買収すると発表しました。この買収により、ロート製薬は一般医薬品や食品分野の強化を図る一方、三井物産は「ウェルネス・エコシステム」の創造を目指します。アジアでは健康志向の高まりや伝統医療の再評価から、漢方薬市場の成長が見込まれています。
老舗の「余仁生」買収は、この需要を取り込むための戦略的な動きと言えます。両社は、ユニークな歴史と高い地域浸透力を持つ「余仁生」のブランド力を活かしながら、健康分野での新たな価値創造を目指しています。

今回は、シンガポールでは知らない人がいない「余仁生」を、なぜロート製薬は買収するのかなどについて解説します。

有名漢方薬会社 ロート製薬と三井物産が買収

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 6月14日

880億円で買収

ロート製薬は、余仁生の親会社が持つ株式の86%を、約6億8700万シンガポールドル(約800億円)で買い取ります。

ロート製薬が漢方薬のみならず食品まで幅広い商品アイテムをもつ余仁生を取り込むことには、一般医薬品や食品分野を強化する狙いがあります。

東南アジア最大の漢方薬メーカー

余仁生は東南アジアを代表する漢方薬のメーカーで、シンガポールだけではなくマレーシアや香港など、アジアの国々を中心に170を超える販売店を運営しています。香港とマレーシアに4つの工場もあり、加えて30ほどのクリニックを運営しています。

シンガポールやマレーシアではショッピングモールに行けば必ずいいロケーションに出店している、老舗の会社です。

シンガポールの邦人の間では、このニュースが流れたときに大きな驚きの声がネット上に挙がりました。

1873年創業

創設者のユー・コン氏が故郷である中国の広東省を離れマレーシアへ旅行した際に、漢方薬とハーブを使用して錫の鉱山労働者をアヘン中毒から救いました。

そして1879年、マレーシアのペラ州で最初の店を設立しました。

店名である「余仁生」は、広東語で「人類への思いやり」と言う意味の「仁生(ヤンサン)」を名前である「余」に加えて名付けられました。

事業拡大

創業者であるユー・コン氏が37歳で急死した後、一人息子である、ユー・トン・セン氏が若干13歳で事業を引き継ぎました。

錫の採掘とゴム農園事業、不動産投資、銀行業務へと多角化に成功し、大きな財産を得ました。

また、錫鉱山を始めた場所ではどこでも医療店を開設しました。医療事業のブランド化にも成功し、一大企業へと成長しました。

漢方薬市場

世界の漢方薬市場は2022年から2031年までの間に、年平均率約11%で成長すると予想されていて、特にアジアは原材料の主要な生産国でもあり、成長が期待されています。

ハーブ製品に対する人々の意識の高まりや需要の高まりにより、漢方薬は市場の成長が急増すると予測されています。

東南アジアでの事業拡大

ロート製薬は、製品やサービスを通じて健康を世界中の人々に届ることで、個人や社会を幸福に導くことを企業目的としています。

そして、事業展開を図るために「ビジョン2030」を掲げ、一般用医薬品やスキンケア製品などのコア事業のさらなる拡大、および強化を目指しています。

重点戦略の一つに

三井物産は「ウェルネス・エコシステムの創造」を重点戦略に掲げ、健康への貢献を通じて、消費者のライフスタイルの多様化にともなう、生活の質的な向上に貢献していくことを目指しています。

需要の拡大が期待

アジア地域、特にシンガポールやマレーシアで漢方薬市場は近年急速に成長しています。これはいくつかの要因があります。

① 健康志向の高まり
アジアの国々では近年健康志向が高まっており、自然療法や健康食品への関心が増しています。漢方薬は自然由来であり、副作用が比較的少ないとされているため注目されています。

② 伝統医療への回帰
近年漢方薬は西洋医学に代わる選択肢として再評価されていています。伝統的な漢方薬や治療法が文化的な遺産としても重要視され、その効果も再認識されています。

漢方薬のメーカーも製品の品質向上と多様化に注力していて、市場の成長を後押ししています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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