シンガポールが「超高齢社会」へ

クアラルンプール中心部の私立病院で働いていた看護師の知人がいます。
彼女は昨年、シンガポールに移りました。
「給与が3倍近くになった」と聞いたとき、正直、驚きました。マレーシアにいるときは、夜勤明けの朝で疲れた顔を見ることが多かった彼女も、いまは、休みの日にちゃんと休めるようになったといいます。家族のいるジョホールバルから、バスで1時間あまり。距離はそれほど変わらないのに、暮らしの中身は別物になりました。
今回は、シンガポールで急激に進んでいる「高齢化」についてお伝えします。
(引用元:S’pore should aim to train 10,000 nurses, healthcare workers in palliative care: Ong Ye Kung | The Straits Times – newspaper – Magzter.com
https://www.magzter.com/stories/newspaper/The-Straits-Times/SPORE-SHOULD-AIM-TO-TRAIN-10000-NURSES-HEALTHCARE-WORKERS-IN-PALLIATIVE-CARE-ONG-YE-KUNG)
シンガポールが「超高齢社会」へ
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年 08月14日
2026年、シンガポールは「超高齢社会」に
今年、シンガポールは正式に「超高齢社会(super-aged society)」の仲間入りをしました。
これは国際的な定義で、人口の21%以上が65歳以上を占める状態を指します。さらに2030年には、シンガポール人の4人に1人が65歳以上になる見通しです。
それを支える医療現場は、もうとっくに人手が足りていません。2026年時点で、登録看護師の欠員率は12%、看護師全体で3,000〜4,000人が不足していると推計されています。保健省は2030年までに、医療職全体でさらに15,000人を確保しなければならないと公表しています。
看護師の3人に1人は、外国人
シンガポールでは、看護師全体のおよそ3分の1を外国人が占めています。いちばん多いのはフィリピン、次いでマレーシア、そしてミャンマーです。
私はシンガポールに12年住んでいましたが、休日のショッピングモールで、フィリピンやマレーシアから来た看護師たちがおしゃべりしている光景は日常の一部でした。彼女たちが、文字通りこの国の医療を支えているわけです。
シンガポール政府の本気度
2023年には公的医療機関で働く看護師約29,000人を対象に、20年勤続で最大10万シンガポールドル(約1,100万円)の特別ボーナスを発表しました。新卒には15,000ドルの「契約一時金」もつきます。
それでも足りてないんです。
マレーシアの看護師が、どんどんいなくなる
このシンガポールの動きと、表裏一体で進んでいるのが、マレーシア側の流出です。
マレーシアの公立病院では、2020年に2,106件だった看護師の欠員が、2023年には6,896件にまで膨らみました。給与差は2〜4倍、しかも英語が通じる現場で、語学の壁もありません。マレーシアで何年もかけて稼ぐ額を、シンガポールでは1年で得られる。これでは、若い看護師に「残れ」とは言いにくいですよね。
知人のような選択をする人が、これからも増えていくでしょう。
終末期を、病院ではなく地域で
興味深いのは、シンガポールが量だけでなく、ケアの中身の見直しにも入っていることです。
2026年4月、保健省のオン・イェクン大臣は、看護師と医療従事者あわせて1万人に緩和ケアの研修を施す目標を打ち出しました。これは看護師全体の5分の1にあたる規模です。終末期の患者を、病院ではなく地域で支える方向へ舵を切ったということです。
人が老いて、そして人生を閉じる場所を、どう設計するか。これは医療政策であると同時に、ひとつの社会哲学でもあるように思います。
ふたつの国を、つなげて見ると
シンガポールの高齢化対応は、隣のマレーシアから人材を引き寄せ続けることで、なんとか成り立っているのが実情です。
両国を行き来して暮らしてきた身からすると、ジョホール海峡をはさんだこの構図は、もはや「シンガポールの話」とも「マレーシアの話」とも言いきれない、ひとつながりの現実に見えてきます。
超都会シンガポールの病室で働く看護師の背中には、いつも、もうひとつの国が見えているのです。






















