イタリアの市場にある「買い物以上」の価値

イタリア

イタリアで暮らしていると、街の広場で定期的に市場が開かれている光景をよく目にします。野菜や果物だけでなく、服や靴、日用品まで並び、日本の「市場」のイメージよりも、ずっと生活に近い存在です。

日本では、買い物といえばスーパーやショッピングモールが中心です。必要なものを効率よく購入し、セルフレジで会計を済ませることも珍しくありません。一方、イタリアの市場では、店主との会話や値段交渉、小さな雑談までが買い物の一部になっています。

最初の頃は、毎週決まった曜日に広場へ市場がやってくることに驚きました。しかも、それが特別なイベントではなく、地域の日常として自然に組み込まれているのです。

イタリアの市場にある「買い物以上」の価値

著者:イタリアgram fellow たなかさき
公開日:2026年08月05日

「効率」だけではない買い物

イタリアの市場では、買い物に時間がかかります。野菜を選びながら店主と会話をしたり、「今日はこれが新鮮だよ」とおすすめされたりすることも少なくありません。日本のように、商品を取ってすぐに会計を済ませる感覚とはかなり違います。

もちろん、効率だけを考えればスーパーのほうが便利です。価格も安定しており、営業時間も長い。しかしイタリアでは、「どこで買うか」だけでなく、「誰から買うか」を大切にしているように感じる場面があります。

実際、義母も毎週決まった市場へ通い、野菜や果物はいつも同じ店で買っています。「あそこの野菜が一番新鮮でおいしい」と話しながら、店主と世間話をしている様子を見ると、単に商品を選んでいるというより、人との関係性も含めて買い物をしているように感じます。

小規模事業者が支える経済

こうした市場文化の背景には、イタリア経済の特徴もあります。イタリアでは中小企業の割合が非常に高く、家族経営の小規模事業者が地域経済を支えています。European Commissionの資料によると、イタリア企業の99%以上は中小企業とされています。

市場に並ぶ店の多くも、小規模な生産者や個人商店です。大量流通やチェーン化ではなく、地域単位で経済が循環している感覚があります。

そのため、市場は単なる「昔ながらの文化」として残っているわけではありません。小規模事業者が地域で生き残るための販売チャネルとして、今も機能している側面があります。

「買う」より「つながる」

もちろん、イタリアにも大型スーパーやECサイトは存在します。実際、若い世代を中心にオンライン購入も増えています。

イタリアでもEC市場は拡大を続けており、2025年の市場規模は約620億ユーロに達するとされています。それでも市場文化が残っているのは、単に商品を買う場ではなく、人と地域をつなぐ役割を持っているからかもしれません。

市場では、商品だけでなく、人との会話や地域とのつながりも同時にやり取りされています。効率だけを求めれば省略できる時間かもしれません。しかしイタリアでは、その少し遠回りな時間が、暮らしの豊かさとして残されているようにも感じます。

スーパーで素早く買い物を終える便利さと、市場で人と会話しながら買い物をする時間。イタリアの市場文化には、効率化だけでは測れない豊かさが、今も日常の中に息づいているように感じます。

【参考】
◇E-commerce Italy: data and growth prospects | PACKMEDIA – news and reports on trends, best practices, and new technologies for packaging, labeling, coding:
https://packmedia.net/node/11642

◇European Innovation Scoreboard 2025【PDF】:
https://www.kowi.de/Portaldata/2/Resources/fp/2025-EIS.pdf

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