都市部を中心に多様化するスペインのスポーツジム事情

スペイン

COVID-19のパンデミック以降、世界的に自宅でのオンラインフィットネスプログラムを利用する人が急激に増加した。一方で社交文化が強いスペインでは大手チェーン以外にも、特定の都市や地域に根付いたコミュニティ志向のローカルスポーツジムが人気で、ジムに通う人も多い。

近年ではライフスタイルや予算に応じた選択肢が増えていて、特に都市部を中心にプレミアムジムが増加するなど選択肢が多様化している。本記事では、スペインのジムの特徴や昨今のトレンドを紹介する。

都市部を中心に多様化するスペインのスポーツジム事情

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2025年7月7日

スペイン人のジム文化・種類や料金は?

社交文化が強いスペインでは、ジムでもグループレッスンや地域イベントを重視する傾向があり、ジム主催のマラソンやアウトドアワークアウトイベントが盛んだ。スペイン・マラガが本社の国内に全国展開するSynergymも、そのような特徴に合わせ、各店舗で地元に合わせたプログラムを提供するなどしている。

主なジムの種類は
 ① 地域密着型の個人経営ジム
 ② 大手チェーンジム
 ③ 高級な設備やサービスを提供するプレミアムジム
 ④ ヨガ・ピラティス・クロスフィット・ボクシングなどに特化した特化型ブティックジム

などがある。

料金は
オランダ発のBasic-Fitやドイツ発のMcFITなどの低価格帯ジムが月€20~€40

スペイン国内で拡大中のVivaGymやローカルジムなどの中価格帯ジムが月€40~€80

都市部で増加中のスペイン国内で展開する高級フィットネスクラブMetoropolitanや高級ウェルネスクラブなどの高価格帯ジムが月€80~€200以上

年間契約などの長期契約を結ぶと割引が適用されることが多い。

価格月額
低価格帯€20~€40
中価格帯€40~€80
高価格帯€80~€200
ジムの料金

日本でもchocoZAPをはじめ、手軽に通える24時間ジムが人気を集めているが、スペインも同様に特に都市部で24時間営業のジムが増加している。

公園でのグループワークアウトのようなアウトドアフィットネスも人気で、公園を歩いているとヨガ・エアリアルヨガ・ダンス・HIITなどさまざまなワークアウトを楽しむローカルの人々を目にする。

(特化型ブティックジム)
(公園でグループワークアウトをする人々)

大手チェーンジム

スペインにある主要なフィットネスチェーンは、マラガに本社を置くSynergym・バルセロナを中心に展開するDiR、ドイツ発のMcFIT、オランダを拠点とするヨーロッパで1400 以上のクラブを運営し、世界市場シェア1.15%を占めるBasic-Fit、アメリカ発の日本国内で1100店舗以上を展開するエニタイムフィットネスなどがある。

中でもSynergymは、2024年に売上高約4910万ユーロを達成し、前年比33%の成長を遂げた。2024年末時点で119店舗・25万人以上の会員を有しているが、2025年末までに160店舗、2026年には200店舗の運営を目指す。 会員7万人以上を抱えるDiR、国内に41店舗を展開するMcFIT、国内に45店舗を展開するエニタイムフィットネスなどと比較しても、スペイン国内で最も会員数が多く、売上高の多いチェーンジムのひとつといえそうだ。

地方 vs. 都市

地方都市では個人経営の小規模なジムが主流で、コミュニティベースで運営されることが多く、「単にトレーニングする場」ではなく、“地域コミュニティの一部”としてジムが機能しているのが特徴だ。

一方、都市部(マドリード・バルセロナ)などでは地域密着型ジムも多いが、大手ジムやプレミアムジムが増加中でライフスタイルや予算に応じた選択肢が増えている。

プレミアムジムの特徴としては、最新のマシンや広々したトレーニングエリアをはじめ、質の高い専属トレーナー、AIや最新テクノロジーを活用したプログラム、プール・サウナ・スパ・ジャグジー等のリラクゼーション設備などの充実した付帯施設が挙げられる。月額が安価なジムの5倍〜10倍と高い会費にもかかわらず、混雑を避けワンランク上のライフスタイルを楽しみたい人々の間で人気が高まっている。

(地域密着型のローカルジム)

まとめ

都市部では選択肢が豊富で、地方では小規模な地域密着型ローカルジムが中心となっているスペインのジム事情だが、健康志向の高まりもあり、今後もフィットネス市場は成長が見込まれている。

また、ライブ配信やオンデマンド動画、AIを活用したフィットネスアプリの登場など、手軽で継続しやすいと人気が続く世界のオンラインフィットネス市場は2028年までに590億ドル(約9兆円)規模に成長すると予測される。スペイン国内でもオンラインと地域密着の融合など、国民の特色を取り入れたジムのオンラインクラスなども今後の傾向としてみられ、多様なニーズに応えるサービスが増加すると考えられる。

【参考】
◇La cadena malagueña de gimnasios Synergym cierra 2024 con una facturación de 50 millones y casi 800 empleados | Economía y negocios | Cadena SER:
https://cadenaser.com/andalucia/2024/12/18/la-cadena-malaguena-de-gimnasios-synergym-cierra-2024-con-una-facturacion-de-50-millones-y-casi-800-empleados-ser-malaga/

◇Synergym más de 100 gimnasios y 50 millones de euros de facturación en su décimo cumpleaños:
https://www.eleconomista.es/actualidad/noticias/13044424/10/24/synergym-mas-de-100-gimnasios-y-50-millones-de-euros-de-facturacion-en-su-decimo-cumpleanos.html

◇OBS Report: The sport and fitness industry | OBS Business School:
https://www.obsbusiness.school/en/faculty-and-research/reports/obs-report-the-sport-and-fitness-industry

◇¿Cuál es el precio de un gimnasio en España?:
https://www.superprof.es/blog/precios-centros-deportivos-espana/

◇Online Fitness Market Size & Share, Statistics Report 2024-2032:
https://www.gminsights.com/industry-analysis/virtual-online-fitness-market

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

プロフィール

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