ジョホールバル―シンガポール RTSリンク 試運転に成功

2026年4月24日、静かに歴史が動きました。
ジョホール海峡を跨ぐ新しい国境鉄道「RTSリンク(Rapid Transit System Link)」が、複数の列車編成を同時に走らせる高速試運転に成功しました。運営会社RTSオペレーションズ社(RTSO)が公式に発表したこのニュースは、マレーシアとシンガポール両国で大きく報じられました。
今回は、この記事を取り上げて深掘りします。
(引用元:RTS Link successfully conducts multi-train high speed trials | The Star
https://www.thestar.com.my/news/nation/2026/04/27/rts-link-successfully-conducts-multi-train-high-speed-trials)
ジョホールバル―シンガポール RTSリンク 試運転に成功
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年 07月08日
複数列車が、同時に走った

試運転の成功は、技術的に見ても大きな前進です。複数の列車を高速で同時走行させながら、ブレーキなどの重要システムを検証しています。厳格な安全プロトコルのもとで実施されました。今回は単なる「お披露目走行」ではなく、実際の営業運転を見据えた本格的な試験でした。
車両は中国のCRRC社が製造した無人運転の4両編成で、全8編成が順次投入される予定です。シンガポールの試験施設で半年以上にわたる検証を終えた列車が、いよいよ本物の線路の上を、本物のスピードで走り始めたのです。
4キロ、5分
RTSリンクは、ジョホール海峡を渡る、マレーシア側のブキ・チャガー駅とシンガポール側のウッドランズ・ノース駅を繋ぐ全長約4キロの路線で、両国間の移動時間をおよそ5分に短縮します。聞いただけなら「それだけ?」と思うかもしれません。でも、この海峡を越える日々を過ごしてきた私には、その5分の重みがとてもよくわかります。現在のコーズウェイは、およそ40万人ものマレーシア人が毎日通勤のために往来している、世界でも有数の陸路国境なのです。
渋滞と出入国審査の混雑は慢性的な問題であり続けてきました。朝の橋の上、数珠つなぎになった車の列。その横をバスが追い越し、バイクが縫うように走る。あの光景を、何年も見てきました。それが、鉄道一本で大きく変わろうとしています。それは単なる時短ではなく、生活そのものが変わるということなのです。
開業に向けた最終局面
RTSリンクはいま、試験・試運転という重大な局面に入っています。システム設置、受け入れ試験、統合試験、動的試験を経て、今年9月を目処に「最終ステージ」が予定されています。その後、2026年7月から12月にかけては、税関・出入国・警備など、両国の複数機関が関与する包括的な試験期間となる見込みです。乗客を乗せた営業運転の開始は、2027年1月が目標です。
両国政府が緊密に連携しながらスケジュールを管理してきた成果が、ここに来て形になりつつあるのです。
スペックと仕組み
車両のスペックも興味深いです。ピーク時には3.6分間隔で運行され、最高時速80キロ。1編成の通常収容定員は607人で、開業時には1日4万人、将来的には14万人の利用が想定されています。注目すべきは出入国の仕組みで、出発駅で両国の審査を一度に済ませるシームレスなCIQ方式が導入される予定で、到着後に再び列に並ぶ必要がありません。
この利便性は、毎日通勤する人々にとって、じわじわと効いてくる変化でしょう。ウッドランズ・ノース駅はシンガポールのMRTにも直結するため、シンガポール都心部へのアクセスもスムーズになります。
試運転の成功ははじまり
シンガポールで暮らして12年、マレーシアに移ってさらに15年になります。この海峡の向こうを、橋の上から何度眺めたことでしょう。何度利用したことでしょう。歩いて渡ったことも何度もあります。あの頃、5分で渡れる鉄道ができるとは想像すらしていませんでした。
もっとも、この計画が順調だったわけではありません。幾度もの中断と再開を経て、2020年にようやく正式に計画が再開。そこから積み上げてきた工事と試験が、今回、ようやく形になったのです。ただ、インフラとは完成した瞬間ではなく、使われ始めてから初めて意味を持つはずです。試運転の成功は、ゴールではなく始まりの合図なのです。
開業まで残りわずか。この狭い海峡が、また少し近くなろうとしています。






















