抹茶ブームは第2フェーズへ|スペイン

スペイン

世界的に抹茶ブームが続く中、スペインではここ数年で、抹茶が一過性のトレンドから日常的な選択肢へと変わりつつある。都市部のカフェでは抹茶ラテが定番メニューとして並び、その存在はすっかり身近なものになった。かつては品質や産地への関心も薄く、「鮮やかな緑色が映えるインスタ向けの飲み物」というイメージが先行していたが、現在はその段階を越えて、より深い楽しみ方へと広がり始めている。本記事では、スペインで独自に育ちつつある抹茶文化について紹介する。

抹茶ブームは第2フェーズへ|スペイン

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2026年06月26日

抹茶ブームは既に定着

スペインで抹茶が本格的に知られ始めたのは、2010年代半ば以降の日本食ブームの流れの中だと考えられる。当初は一部の日本食レストランや専門店で扱われる程度でまだニッチな存在だったが、2020年代に入ると状況は大きく変わった。コロナ禍以降の健康志向の高まりやオーガニック志向、カフェ文化との親和性、そして映えるビジュアルといった要素が重なり、都市部を中心に抹茶ラテや抹茶スイーツが一気に広がって今では定番メニューとして定着しつつある。市場調査によれば、スペインの抹茶ティー市場は2024年時点で約1,400万ドル規模に達しており、今後も年平均8%前後の成長が見込まれている。 また、カフェ業界向けのレポートでは、2025年には抹茶ドリンクの売上が前年比約50%増と報告され、流行から一歩進んだ継続的なカテゴリーとして位置づけられつつある。

こうした外食での広がりと並行して、家庭でも抹茶を楽しむ動きが進んでいる。観光都市の新興カフェでは抹茶ラテがほぼ標準装備となりつつあり、さらに有名百貨店のEl Corte Inglésだけでなく、CarrefourやMercadona、Aldiなどの大手スーパーマーケットでもスティックタイプや粉末の抹茶商品が並ぶようになってきた。このように、スペインでは外でも家でも抹茶を取り入れるライフスタイルが、少しずつ根づきつつあると言えるだろう。

(スペイン人の友人が勧めてくれた抹茶ラテが美味しいと噂のカフェ)

価格の壁が生む本物と現地消費のずれ

スペインで抹茶が広がる一方で、「本物の抹茶」と現地で日常的に消費されている抹茶製品とのあいだには、価格を起点とした大きなギャップが存在する。日本産の高品質な抹茶は、輸入コストや品質基準の違いから30gあたり15〜25ユーロとかなり高価で、日常的に購入するには明確なハードルがある。一方、スペインのスーパーで一般的に流通している抹茶は、同量で3〜6ユーロ前後のブレンド品が多く、価格差は5倍以上に開くことも珍しくない。こうした差は、味わい・香り・色・泡立ちといった品質面にもそのまま反映される。

お点前を習っていた経験のある筆者からすると、点てる所作や無糖で味わう苦味・旨味、産地へのこだわりといった体験そのものが「お抹茶」という文化の核にある。対して、砂糖やミルクをたっぷり加え、鮮やかな緑色だけを残した“抹茶ラテ”は、もはや別物と言ってよいほど異なる存在だ。価格の壁によって本来の抹茶が持つ繊細な味わいに触れる機会が限られる一方、手頃な商品を通じて抹茶に親しむ人が増えることで、スペインでは“本格派”と“日常使い”という二つの抹茶文化が並行して育ちつつある。

質・文化へのシフト

これまで“映える抹茶ラテ”が中心だった消費が、近年はゆっくりと質や文化へと軸足を移しつつある。その象徴的な変化が、ceremonial grade(セレモニアルグレード)という言葉が一般の消費者にも浸透し始めていることだ。これまでスペインでは抹茶の等級に関心を持つ人は少なかったが、最近は「どのグレードなのか」「京都産かどうか」といった産地・品質へのこだわりが見られるようになってきたという。こうした関心の高まりは提供スタイルにも表れている。都市部では抹茶を点てる工程をそのまま体験できるカフェが登場し、茶筅や茶碗を使った“点てる抹茶”をメニューとして提供する店も出てきた。

先日、スペイン人の友人から「自宅で本格的に点ててみたい」と茶筅・茶碗のセットを購入したとの連絡があった。日本人である私に、スペインで購入できる一番美味しい抹茶の粉はどこで売っているか教えてほしいという。これまでの“抹茶ラテ文化”とは異なり、抹茶を作法や体験を伴う飲み物として捉える動きが広がり始めている証だろう。こうした変化は、スペインの抹茶文化が単なるトレンドから、より深い理解と楽しみ方へと進化しつつあることを示している。

まとめ

スペインの抹茶市場は、これまでの「映える抹茶ラテ期」から「品質・文化への関心期」へと移行しつつあり、今はその先にある第三フェーズの入口に立っているように見える。今後は、単に“おいしい抹茶”を求めるだけでなく、産地のストーリーや生産者の背景に価値を見出す動きがさらに広がるだろう。また、体験そのものを楽しむ層が増えていることから、茶道体験やワークショップ、点て方レッスンといった体験型の需要も伸びていく可能性が高い。高価格帯の抹茶や道具への関心も徐々に高まりつつあり、抹茶が“付加価値のある文化体験”として位置づけられる未来が見えてきている。

【参考】
◇Spains Matcha Revolution: How Mediterranean Wellnes… | 抹茶タイムズ:
https://matcha-times.jp/en/2026/01/spain-matcha-market-wellness-cafe-trends/13/

◇Matcha in Barcelona — Where to Find Ceremonial Grade Japanese Matcha – Bonsai Matcha:
https://bonsaimatcha.com/en-de/blogs/matcha-blog/matcha-barcelona-ceremonial-grade

◇Spain Matcha Tea Market Size & Outlook, 2033:
https://www.grandviewresearch.com/horizon/outlook/matcha-tea-market/spain

◇El matcha dispara sus ventas un 50% en España y se consolida como la bebida de moda en 2025 – InfoHoreca:
https://www.infohoreca.com/noticias/20251202/crecimiento-ventas-matcha-espana-2025-bebida-moda-cafeterias

◇Descubra el arte de los batidores de Matcha en Japón: tipos y cultura:
https://es.richingmatcha.com/batidor-de-matcha-jap%C3%B3n/

◇Award-Winning Ceremonial Matcha | Buy EU | Bonsai Matcha,The 5 Best Matcha Cafés in Madrid (2026) | Matcha Spot:
https://www.matcha-spot.com/cities/madrid/

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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