海賊が多発するシンガポール海峡

シンガポール

シンガポール海峡(一般的にはシンガポール・マラッカ海峡と呼ばれています)で発生した海賊事件の件数が、2023年は58件だったことが、シンガポールに拠点を置く情報センターの報告書で明らかになりました。

世界に冠たる都市国家であるシンガポールのすぐ眼前の海峡は、実は世界でも最も危険な海のひとつであることはあまり知られていません。

今回の記事では、あまり知られていないシンガポール海峡について紹介します。

海賊が多発するシンガポール海峡

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 3月15日

8年ぶりの高水準

2023年の海賊事件は58件、2022年の55件から3件増加しており、2015年に発生した134件以来8年ぶりの高水準で2019年からは増加傾向にあります。

2023年にアジア全体で発生した海賊事件は、未遂の1件を含む100件で、アジア全体の海賊事件数の実に6割以上がシンガポール海峡で発生していることになります。

アジアで発生した海賊事件のうち約6割が乗組員に被害がない事案に該当しています。

パンデミックの影響大

シンガポール・マラッカ海峡で海賊事件が増加した背景には、パンデミックによる経済状況の悪化が影響しています。

海峡の付近の貧しい漁村などの地元住民は、パンデミックと気候変動により漁獲量が減少したことで生活が苦しくなり、生活の糧を得るために海上での強盗や軽犯罪に手を染めるようになったと考えられています。

また、南西モンスーンの影響の可能性も高いと関係機関は述べています。

シンガポール・マラッカ海峡

シンガポール・マラッカ海峡は「シンガポール海峡」と「マラッカ海峡」という2つの海峡によって構成されています。

長さ幅:東口幅:西口
シンガポール海峡約90㎞35.7㎞20㎞
マラッカ海峡約970㎞20㎞396㎞

マラッカ・シンガポール海峡は最も狭い部分で幅はわずかに20Kmしかなく、そこを年間12万隻以上の船舶が通航する世界でも最も混雑している海峡です。

そのため「分離通航帯」と呼ばれる仕組みが設けられ、道路の通行帯と同じ仕組みで一定以上の大きさの船舶は、指定されている通航帯内を右側通行で航行しなければなりません。この仕組みのおかげで海難事故を防いでいます。

抑止力の維持が重要

「周辺関係各国の法執行機関が、しっかりと抑止力を維持し、この海域の安全が確保されていると宣伝し続ける限り、この状況には対処できる」と関係機関は述べています。

また、この海峡の沿岸国であるシンガポール、マレーシア、インドネシアの3国に対して、連携して監視とパトロールを強化し、さらに事件に迅速に対応するように勧告しています。

日本にとってもこの海峡はシーレーンの最も重要なエリアであるため、航行安全の目印としてブイなど30基を沿岸国に対して寄贈しています。

戦略的なエリアにある海運ルート

シンガポール・マラッカ海峡はアジアとヨーロッパを結ぶ要所で、非常に重要な地点に位置し、多くの商船がこの海峡を通過しています。海峡の幅も狭いため、海賊が船を襲撃しやすく容易に逃走できる海域です。

一部の周辺国や地域では政府の統制が十分でないため治安が不安定で、海賊組織が存在しやすくなっています。さらに、海賊行為に対する法的な取り締まりが不十分の場合もあり、海賊が摘発されにくいという面もあります。

この地域での商品の需要が高まっていて、海賊が商品を狙って船を襲うケースが増えていくと予想されています。

シンガポール海峡での海賊事件の増加は非常に懸念されており、この海域での安全な航行を確保するためには、周辺国で協力して海賊対策措置を講じることが不可欠になっています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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