中国の食卓に広がる「半調理品」人気の理由とは
中国における半調理品の市場規模は年々上昇傾向にある。数年前は旧正月などの行事で需要が高かった半調理品だが、現在は若者を中心に普段用の食事に利用する消費者が増加している。本記事では、現在の中国で人気となっている半調理品とは何か、成長を続ける半調理品市場について紹介する。
中国の食卓に広がる「半調理品」人気の理由とは
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年6月10日
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時短調理が中国人の心をつかむ
中国では数年前に時短調理ができて油を使わないヘルシーな料理ができる、エアフライヤーが爆発的な人気となった。現在新たに人気を博しているのが「半調理品」である。
中国における半調理品とは、調理済み食品など温めるだけですぐ食べられるものや、日本だとミールキットのようなイメージだ。あらかじめ肉や魚、野菜などがカットされており、調味料もついているので食べる際は簡単な調理だけで済む食品のことを指す。
アリババ集団が運営するネットスーパー盒馬鮮生(フーマー)でも、半調理品が数多く売られていて日本食も人気だ。中国人が好きな日本食といえば寿司は大定番だが、鰻やすき焼き、たこ焼き、お好み焼きなども人気で半調理品になっている商品もある。
フーマーで販売されている半調理品の「日式すき焼き」は1万以上の口コミがあり、美味しいと高評価。鍋に材料と調味料を入れて温めるだけで、栄養のあるバランスがとれた食事を楽しむことができるので、忙しい現代の若者にとっては特に重宝されるだろう。口コミを見ると、中国の火鍋でよく食べられる材料を追加し、アレンジして楽しむ消費者も見受けられた。値段は1つ42.8元(約850円)と、店で食べたりデリバリーよりも安価で食べることができる。
同じく中国生鮮ECの叮咚買菜(ディンドン)でも半調理品を販売している。魚や肉の煮込みや、ザリガニを辛いソースで和えたもの、火鍋など種類が豊富だ。値段は商品によるが、15元(約300円)〜50元(約1,000円)の価格帯のものが多いように見受けられる。
数年前は、春節や中秋節など家族が集まる行事で半調理品セットのデリバリーが人気だったが、現在は様々な店から半調理品が販売され、若者を中心に普段の生活で利用する消費者が急激に増加している。
中国で半調理品が人気となった背景
半調理品はもともと、主にレストランやホテル、ファーストフード店など飲食業の調理効率を上げるために生産されていた。しかし、2020年のコロナ禍の影響を受け、家で食事をする人が増加したことで、家庭用としての半調理品の需要が高まったのだ。また、ロックダウンの時期やロックダウンが終わってからも、再びいつ隔離されるかわからない恐怖と不安が常にあり、半調理品などの食材をストックすることは生活を送る上で重要なことだった。ロックダウン中、筆者が住むマンションの団体購入では、松屋の牛丼の冷凍食品(温めるだけで食べられる商品)が販売された。長期保存ができる商品は需要があり、中国に駐在している日本人だけでなく中国人も購入していて、おかげであの危機を乗り越えることができた。
半調理品は若者を中心に消費されているというデータがある。
百度指数によると、22年は半調理品関連の検索が前年同期比で877%増加した。そのうち「95後(1995年から1999年生まれ)」の占める割合が30%を超えた。個人消費者向けの半調理品は、温めるか少し手を加えるだけですぐに食べられ、さらに自分ではなかなか作れないメニューや特別なメニューもあって、特に若者の間で人気となっている。
(引用元:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2022/0928/c94476-10153070.html)
若年層が徐々に半調理品の消費の中心になったことで、26-45歳のユーザーによる半調理品取引額が全体の7割以上を占め、女性が56%に達した。また年齢が上がるほど半調理品の品質への関心が高まり、両者は正比例の関係にある
(引用元:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2023/0110/c94476-10194207.html)
現在の中国人の若者はタイパを重視する傾向にあることや、怠けもの経済という新しい消費トレンドも半調理品の人気を後押ししていると感じる。
拡大する半調理品の市場規模
中国における半調理品は、今後一層発展、拡大する可能性を秘めている。
現在の中国国内での半調理品の普及率は10-15%にとどまるが、30年には15-20%に上昇することが予想されるという。
「2023年中国半調理品産業発展青書」によると、23年の中国の半調理品市場の規模は前年比23.1%増の5165億元(1元は約20.7円)に上り、26年は1兆720億元を超える見込みだ。
(引用元:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2023/0110/c94476-10194207.html)
(引用元:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2024/0318/c94476-20146335.html)
また、注目すべきは国が支援する政策に半調理品業界が挙げられていることだ。
国家発展・改革委員会は先ごろ発表した「消費の回復・拡大に関する措置」の中で「『栽培・養殖拠点+セントラルキッチン+コールドチェーン物流+飲食業実店舗』モデルを育て、半調理品市場のポテンシャルを発掘しする。半調理品の拠点建設を迅速に推進し、安全・栄養・健康の原則を十分に体現し、飲食品の質と輸送の標準化レベルを引き上げる」とした。
(引用元:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2023/0907/c94476-20068780.html)
中国ではゲームの制限や学習塾禁止令、日本産水産物の輸入停止など、国民の需要がいくら高い場合でも国が発表したことに逆らうことはできない。右を向けと言われたら全員が右を向くし、左を向けと言われたら全員が一斉に物凄いスピードで方向転換をする。中国政府が何を制限しているのか、どんな取り組みを支援しているのか把握することは、中国でビジネスをする上で非常に重要なことである。
まとめ
怠けもの経済、おひとりさま経済なども追い風となり、現在は若者を中心に消費がされているが、今後少子高齢化が進む中国で、シニアビジネスとしても発展していけるだろう。
半調理品は中国人の日常生活に広がってはきているが、飲食業界が主な顧客で、8割以上を占めている。
新しい消費トレンドや生活と価値観の変化により、更に普段の生活に半調理品が普及する可能性は十分にある。日本では家庭用のミールキットや冷凍食品など馴染みのある商品だが、日本と比較すると中国での浸透率はまだまだといえる。日本企業の知識や技術が、中国で半調理品ビジネスを成功させるポイントとなるかもしれない。