すべてが、「リジェネラティブ」。オランダの新しい農業モデル

オランダ

省資源のメリットを総括して環境をより良い状態に再生しようという考え方のもと、”リジェネラティブ”な農業を実践する、オランダ東南部にあるBodemzicht(ボーデムジヒト)農園。運営するメンバーは生物学者、元動物園の飼育係、詩人、自然食品研究科などとてもユニーク。国内外の農業従事者たちから多くの支持と賛同を得ているクワや農薬を使わない再生型リジェネラティブ農業とは?
現地在住ライターが解説いたします。

すべてが、「リジェネラティブ」。オランダの新しい農業モデル

   著者:オランダgramフェロー 稲葉 霞織 (イナバ カオル)
公開日:2022年9月xx日

Bodemzicht(ボーデムジヒト)農園

オランダ東南部にある学園都市・ナイメーヘン近郊に、Bodemzicht(ボーデムジヒト)と呼ばれる農園があります。のんびりした田園風景の中にひろがる農地には、トマト、ジャガイモ、長ネギなどが栽培され、ニワトリが元気よく駆け回っています。Bodemzicht (ボーデムジヒト)とは『ぜんぶまとめて』という意味。自然とのバランスをとりながら、省資源のメリットを総括して、リジェネラティブな農業を実践するこの農場にぴったりのネーミングといえるでしょう。

ここでは農地を枯渇させてまで無理に使うのではなく、栄養を与えながら肥沃な土壌に戻すことを率先しています。「健康な状態に戻した農地を再利用すれば、使いまわしの農地で単一栽培を延々と行うよりも結果的には良質の農作物が収穫できるに違いない!」と、ボーデムジヒトの立案者たちは考えたのでした。

あくまでも「土壌が中心」の農業

ここの農業従事者は、誰もが個性的なバックグラウンドの持ち主たち。生物学者、元動物園の飼育係、詩人、自然食品研究科など、実にユニークなメンバーがそろっています。運営面でも各々がさまざまな分野から得た知識やアイデアを出し合い、理想的なリジェネラティブ農業の実践に一丸となって情熱を注いでいます。

農地がベストな状態を保つためには、一体何を行ったらいいのでしょうか?たとえばここでは、クワを使って畑を耕すことはしないそうです。ごくごく自然任せ。加えて、農薬も使わないといいます。鶏卵を生むニワトリたちが害虫をついばんでくれるので、彼らの駆除能力に期待を寄せているそうです。自然の理にかなっているやり方ですね。

では、畑の状態が良くなったか否かを彼らはどうやって見抜くのでしょうか?何か特別なコツでもあるのでしょうか?

目で見て、実際に土に触れて確認することはもちろんですが、実は勘によるところも大きいとか。「これなら大丈夫!」と太鼓判を押せる状態を100%見極めるのは、やはり熟練が必要だそうです。このように農地を大切に扱うことで、保水力も高まり土壌の寿命も長くなるというわけですが、それに加え、土を耕すときにくわを使わないので、農作業自体もかなり楽になるメリットもあるといいます。

それでは、使いまわした土壌を使う従来の方法と、ボーデムジヒトならではのリジェネラティブ農業法との比較をしたとき、たとえば1平方メートルあたりの収穫量にはどのくらいの差があるのでしょうか?これは現在実験中で、近い将来の報告が待たれています。

理想的な将来の農業モデル

ここは、「デモンストレーション (実践的な)・ ファーム」としての役割も担っています。つまり、再生型リジェネラティブ農業の実践と利点を世に紹介することができるモデルの役割を果たしているのです。まずはオランダ全土へ、そしてヨーロッパ諸国へ、実例プロモーションを行いながら未来を担う農業の普及に取り組んでいます。

このプロモーションに加えて好評なのが、農業指南のワークショップです。農地をいかに効果的に活用するかを説く彼ら独自のプログラムで、リジェネラティブ農家立ち上げを援助することに一役買っているということです。

あくまでも、省資源にこだわりを

 ボーデムジヒトで収穫された野菜は、どこで購入できるのでしょうか。販売店はありませんが、ネットを通じて注文すると旬の野菜と卵が入った大型の紙袋が半年間、毎週金曜日に自宅に配達されます。近郊のリジェネラティブ農家から一緒に届く、新しい野菜も楽しみのひとつ。今年は新たにきのこ(マッシュルーム、エリンギ、マイタケ等)が加わり、人気を博しているそうです。気になる値段ですが、たとえばトマトひと房の生産にかかる労働力は約16ユーロ(約2200円・2022年9月6日現在)と決められていいます。それを考慮すれば、1袋19ユーロ(約2800円・2022年9月6日現在)も高額ではないといえるかもしれません。

気候変動、生物多様性の損失、農家存続の危機など、現在世界中の農家が直面する課題はたくさんあるでしょう。しかし、これらを解決すべく新しいアイデアをもってチャレンジする彼らの姿勢は、国内外の農業従事者たちから多くの支持と賛同を得ています。「現在の農業方式を改革するためには、健康で持続可能な農地を広げることに尽きる」と説く、ボーデムジヒトの農業従事者たち。オランダのみならず、ヨーロッパの再生型農業をプロモートするパイオニアとして、遠く日本へも、きっと彼らの声が届く日が来ることでしょう。(了)

【 ソース 】
Nederlandse Omroep Stichting
RTL Nederland
Rode Kruis Nederland
United Nations

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