新興国×日本「企業がSDGsに関わるひとつの形」

ビジネスコラム

SDGsについて、名前を耳にすることは多いですが、その理解はどの程度浸透しているのでしょうか。2018年、経済産業省・関東経済産業局が実施した中小企業500社対象のアンケートによると、80%以上が「SDGsについて全く知らない」と回答しています。現在、その数値は改善されていると思われますが、中小企業においてSDGsの認知・理解度はまだまだ低く、これが一般の人になれば更に低くなると推察されます。

新興国×日本「企業がSDGsに関わるひとつの形」

著者:gram代表 谷村 真
公開日:2020年10月30日

国別概要情報 インド(India)

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)は2015年9月に国連サミットで採択されたもので、国連の加盟国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。SDGsにおいては「地球環境を保護しながら、すべての人が平和と豊かさを享受できるよう普遍的な行動をする」といった願いをもとに、「17の目標」と「169のターゲット(具体的な達成基準)」が設定されています。この「17の目標」には、経済・社会・環境という3つの側面があり、現在、大企業を中心に、様々な取り組みが広がっています。

このコラムでは、私たちが関わるSDGsプロジェクトのお話をさせていただき、SDGs理解の一助にしていただきたいと思います。

日本と海外教育の違い

現在私たちはSDGsプロジェクトとして、海外の学生と日本の学生を繋ぐオンライン交換授業と、インドBOP層(※)の教育レベルの底上げをBOP層の当事者のみで実現する体制構築といった教育の循環プロジェクトに関わっています。

※BOP層:Bottom of Pyramid。最貧困層のこと。

私たちは、このプロジェクトの一環でインドやインドネシアの小中学校を数多く回り、その教育現場で熱心な教育者と生徒の関係性を目にしました。これは私の想像する日本の教育現場では考えられないものです。教育方法に関して、国単位や学校単位、先生単位で違いはありますが、インドやインドネシアでは一様に熱心な教育者とその教育者を尊敬する生徒の関係性を感じ取ったのです。

インドネシアやインドの教育現場におけるIT環境は、各学校により大きく違うため、一概に進んでいる、遅れているといった話はできません。最新のデジタルコンテンツで教育を行うところもあれば、昔ながらの講義形式で教育を行うところ、教科書とはかけ離れた体験型教育を行うところなど、教育の形は環境によって様々です。これは、見方によって進んでいるとも、遅れているとも解釈することができます。仮に教育現場のIT化を進んだ教育というのであれば、それを満たしているのは海外でもほんの一部に限られます。

ただ、先に述べた熱心な教育者と敬意をもって接する生徒の関係性には、教育が人生の重要な価値としてあることが表されていて、これが進んだ教育といった言葉に置き換えられているのかもしれません。

日本と海外の環境意識の違い

今、日本を取り巻く世界情勢は、よりボーダレスな社会へ進んでおり、また世界において日本人がリーダーシップを発揮していくことが望まれる中、日本人が世界に存在する社会課題を身近に感じられているか、または情報に接しているかと問われると否定的な回答にならざるを得ないでしょう。日本では国自体のグローバル化、人材のグローバル化がまだまだできておらず、世界の社会課題という意味では情報の隔離社会にあると言っても過言ではありません。

一方インドを例に挙げると、教育格差、所得格差、社会格差、男女間格差などの社会問題、水、大気汚染、ごみ、感染症などの環境問題が顕在化しており、皆が一様にそれらを身近な問題として実感しています。また、諸所の問題の解決策として「メイク・インディア、クリーンインディア、デジタルインディア」といったキャッチフレーズを提唱し、政府がSDGsの取り組みを推進しています。

海外と日本の学生をオンライン授業で繋ぐ取り組みは、世界的課題への意識喚起を教育コンテンツに組み込んで、それぞれの背景や文化を共に話し合う機会を創出しました。その取り組みは、最新のICT環境を皆が享受できる仕組みづくりや、ジェンダーの平等といった国民の意識改革を目指して進められています。

また、同様のコンテンツを活用して、インドBOP層の教育レベルの底上げをBOP層当事者のみで実現する体制構築にも取り組んでいます。
ここでは、教育を自分たちで循環させられる仕組みにするために、BOP層であるストリートチルドレンの中で一定の教育を受け、識字可能な子供の中で向上心の高い子供を選抜し、「ストリートエデュケーター」として育てます。その子供たちがティーチャーズトレーニングプログラムに取り組む団体とともに、周りのストリートチルドレンに教育しています。
現在私たちは、このそれぞれの取り組み、更にはオンライン交換授業プログラムとBOP層への取り組みをどう組み合わせるかについて試行錯誤しているところです。

日本と海外を繋ぐ取り組み

教育コンテンツを通じて海外と日本の接点を創出するオンライン交換授業プロジェクトは、アイスブレイクセッションから始まります。インド文化、日本文化の紹介や互いの学校紹介を行って相互理解を深め、次に教育コンテンツを利用し、素朴な科学現象などを皮切りに「環境汚染問題」「衛生環境」など地球規模の課題に対する意識やその理解を共有します。

日本のSDGs教育コンテンツは(環境問題、社会問題等)は科学的見地に十分に裏打ちされていて、伝わりやすく工夫がされているものが多く、新興国市場でも受け入れられやすい傾向があります。そのため、新興国におけるSDGsへの貢献や「ひと」を重視する日本ブランディングの確立が期待できます。また、海外だけでなく日本国内の教育においてSDGsへの意識喚起を行い、グローバルな感覚を持つ人材を育成することも、日本の未来にとって重要です。

私たちは、トップレベルの教育水準を誇る日本・新興国双方の学生に対して国際交流や相互理解の機会を提供したり、魅力あるコンテンツを活用したりして、BOP層の子供たちに対するSTEM教育(※)への興味喚起・教育機会創出するための活動をしています。そしてそれを皮切りに、新興国のSDGs目標への貢献や「ひと」を重視する日本ブランディングの確立、日本におけるグローバルな教育機会の創出に取り組んでいます。

※STEM教育: “Science, Technology, Engineering and Mathematics” の略で、科学・技術・工学・数学の教育分野を総称する語。

このような海外にまたがる教育事業を通じて、私たちは日本の若者や子供たちの可能性を感じています。先では教育コンテンツに限って進んでいる、遅れているといった話をしてしまいましたが、私自身、日本の教育現場について理解がなかったことを深く反省しています。オンライン交換授業に関して他国と比較した時、日本の教育における先生・生徒の熱心なスタンスやその関係性は全く後れをとっていないと感じます。

また、私たちは国内外の生徒が参加するインターンシップで、驚くほど高い志を持った日本の学生と出会うことがあります。但し、このような意識の高い学生と接する一方で、情報感度を高く持たない学生たちがいることも事実です。

現在、日本においても所得格差や教育格差などと言われていますが、一番の格差は情報格差によるものだと思っています。この情報格差によって、経験の幅が広い人と狭い人が生まれ、それが教育格差といった言葉に切り替わり、結果的に所得格差に繋がっていると考えられます。

SDGsの目標にある通り、機会は誰しも平等にあるということを学生たちにも理解してもらい、どんどん情報感度をあげてその機会に触れて欲しいと思います。この機会を十分に利用することで、実際に私たちの時代では考えられない経験をする子供たちが増えています。その事実は、日本の学生の未来に希望を持たせてくれると感じています。

企業とSDGs

一方で、我々企業は情報、製品及びその下支えとなる考え方を生かし、もっと学生や子供たちが情報を得られる・体験できる機会を創造していくことで、SDGsに関わることができるのではないでしょうか。私たちもそのようなパートナーとして繋がることができれば、と切に望んでおります。

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