約20%!エストニアで起こっている劇的なインフレーション
2022年から世界的にインフレーションが観測されていて、エストニアでも昨年は高いインフレ率を記録し、その数値は驚異の約20%に達した。EU全体でも高いインフレ率を記録したが、エストニア含むバルト三国でのインフレ率は異常だった。高いインフレ率の理由は、その社会システムによって説明ができる。その理由、そしてインフレが生活圏にもたらした影響等を紹介する。
約20%!エストニアで起こっている劇的なインフレーション
著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年3月12日
インフレ率の急上昇は2022年から
数年前までエストニアを含むバルト三国は、日本よりも、そして他のヨーロッパ諸国よりも物価が低く低予算で楽しめるいい旅行地であると言われていた。しかしながら、2022年のエストニアのインフレ率は驚異の19.4%。これは同年のヨーロッパの中でもトップレベルのインフレ率であり、エストニアだけでなくバルト三国の仲間であるラトビアとリトアニアも高いインフレ率を叩き出していた。ちなみにEU全体の平均インフレ率も9.2%と、2021年の2.9%の約3倍にもなっていた。
(引用元:euronews https://www.euronews.com/2023/03/13/europes-inflation-tripled-in-2022-whats-the-situation-in-your-country)
2023年のインフレ率は2月時点で6.2%となり、去年と比べるとかなり落ち着いた。しかし生活に関わる費用が増えるわりに給料は上がらないため、引き続きインフレによる物価上昇は深刻な問題である。
(参考元:European Commission :
https://economy-finance.ec.europa.eu/economic-surveillance-eu-economies/estonia/economic-forecast-estonia_en#:~:text=Consumer%20price%20inflation%20peaked%20in,declining%20commodity%20and%20energy%20prices. )
)
急上昇したインフレの理由
ここまでインフレ率が上昇しているのは言うまでもなく世界情勢の影響である。ロシアがEUにこれまで供給していたエネルギー源の量はとても大きく、石油、天然ガス、石炭に至るまで、実にEUで使用されるのエネルギーの約4分の1を占めていた。加えて、小麦などの食物もロシア・ウクライナから輸入していたため、それらの輸入が急にストップするとなれば物価上昇は当然のことだ。
しかしながら、エストニアが平均よりもかなり高いインフレ率をマークした点における説明はこれだけでは不十分だ。
エストニアでは支出全体のうち、エネルギーと食料が占める割合がEU平均に比べてやや高いことがあげられる。そのため、エネルギー価格の上昇がインフレ率に大きく影響を与えるのだ。
別の要因として、エストニア含むバルト三国では価格設定を柔軟かつスムーズに行うことができるという点だ。他のユーロ圏諸国では政府が管理価格の変更により慎重であるのに対し、エストニアでは世界情勢を鑑みて管理価格の変更を迅速に行っている。そのためエネルギー価格の高騰が他の国よりも早く、一般市民にまで適応されることになったのだ。例年であれば、この迅速な価格設定は賢明な判断となり悪くはたらくことはないのだが、長引く侵攻によってこの特性は劇的なインフレ上昇の要因になってしまったのだ。
(引用元:Eesti Pank https://www.eestipank.ee/en/press/madis-muller-why-inflation-so-high-and-so-different-different-euro-area-countries-03032023 )
インフレの影響
身近なもので大きく影響が出たところといえば、やはり電気料金だろう。筆者の住むアパートは電気代も家賃に含まれているタイプの契約のため正確な変動はわからないが、去年の夏にエネルギー料金の値上がりのためだと思われる、約60€(現在のレートで8000~9000円ほど)の家賃の引き上げがあり、今もそのままである。
首都のタリンにおいては、レストランでする食事の価格がお隣のフィンランドの首都ヘルシンキとなんら変わりない価格になっている。エストニアの平均月給が1600€、フィンランドが2850€だという事実を考えると、観光客価格だとしてもかなり高いことがうかがえる。物価が安い国というイメージはもう過去の話になりつつある。
まとめ
去年に比べてインフレ率は下がったが、今もなお上昇した物価はそのままである。過去にあった「日本よりも物価が安い国」というイメージを筆者の生活範囲内で体感することはあまりない。世界情勢が落ち着いたら物価や家賃はもとに戻るのか、もしくは物価は据え置きで賃金が上昇してくれるのか、現時点では不明である。