お酒を買うために国境を越えてエストニアへ?隣国フィンランドとの関係

エストニア

エストニアの海を挟んで向かい側の国、フィンランド。この対岸国から定期的にフェリーに乗ってエストニアへやってくる人たちがいる。彼らの目的はアルコールの購入だ。酒税がヨーロッパ一高いフィンランドでアルコールを買うよりも、エストニアに来て買う方が、往復のフェリー料金を考慮しても安くなることがある。今回は、国による酒税の違い、エストニア近辺でのアルコールをめぐる国間移動について紹介していく。

お酒を買うために国境を越えてエストニアへ?隣国フィンランドとの関係

著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年5月14日

EU内の酒税の違い

EU参加国では様々な方針やルールを共有しているが、税率に関しては各国で異なる。酒税もそのひとつで、以下の画像は各国の蒸留酒(700mlのサイズ)にかかる税を表している。色が濃い国ほど税が高いことを示している。

(引用元:引用元 : TAX FOUNDATION https://taxfoundation.org/distilled-spirits-taxes-europe-2021/

フィンランドが最も高く、700mlの蒸留酒にはなんと約14€(現在のレートだと約2000円)もの税がかかる。2番目にスウェーデンがランクインしており、フィンランド同様、酒税は高い。それと比べるとエストニアの酒税はまだ可愛いもので約5€(750円ほど)と、3倍近い差がある。エストニアの酒税も南欧と比べると安くはないのだが、北欧のそれと比べると差は歴然だ。

アルコールを求めフェリーに乗ってエストニアにやって来るフィンランド人

これだけ国間で税率が違うともなると、誰しも自国より税が安い国でお得に買い物をしたいと考えるだろう。もちろんフィンランド人もそう考える。たくさん消費する酒が安く買えたら、どれだけ財布に優しいか。

以前の記事で触れたように、エストニアとフィンランド間はフェリーが運航していて往来が簡単である。フィンランド人の中には、それを活用して安くアルコールを入手するため、エストニアにわざわざアルコールを買いに来る人達がいる。

面白いことに、コロナウィルスの流行が全盛期だった時期にも、フィンランド人たちはエストニアにアルコールを買いに来ていたという。フィンランド醸造・ソフトドリンク産業連盟によると、2020年フィンランドからエストニアへのフェリー旅行者が3分の2程度減少したにもかかわらず、アルコールの輸入は約3分の1しか減少しなかったという。つまり、旅行者の数は減ったが、旅行の目的がアルコールの購入である人はパンデミックの中でも平時と変わらず海を渡ってきてたということだ。それだけフィンランドの酒税が高いともいえるだろう。

(引用元:ERR News https://news.err.ee/1608116461/finns-bought-26-million-liters-of-alcohol-in-estonia-in-2020

エストニア人はアルコールをどこで買う?

フィンランドに比べ安い酒税が魅力的で、アルコールでフィンランド人を集めるエストニア。嗜む程度の人は家の近くのスーパーで買えばいいのだが、エストニア人もなかなかの酒飲み。酒税が安い場所が近くにあればそこで買いたい。

そのような人たちはエストニアの隣国、ラトビアへ行く。正確にはエストニアとラトビアの国境が街の中にある都市、ヴァルガである。ラトビアはエストニアと比べると少し物価が安いのに加え、酒税も少し安い。大量に買う場合は、車を飛ばしてヴァルガまで行った方が総合的に安くなる。

まとめ

EU構成国の多くは陸続きで国境を越える際に面倒な手続きがないからこそ、上記のように気軽に買い物のための往来が出来る。今回紹介したのはアルコールを求めて海を越えてやってくるフィンランド人だが、国を変えて見てみると物価の高いスイス。それに比べ手ごろな価格のドイツへ買い物に行く人も多く見られる。物価の違いによる国間移動を丁寧に読み解いていくと、ビジネスの進出先の決定に役立つ可能性があるだろう。

エストニアの位置関係

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