人々の生活に密接に関わるFarmacias（薬局）｜スペイン

2024.08.14

スペイン

スペインは八百屋や衣料品、雑貨屋などの個人商店が数多くあり、薬局もそのひとつで、街中には緑十字マークのFarmaciaを容易にみつけることができる。医薬品や健康関連商品の購入はもちろん医療相談もでき、住民との信頼関係を築きながら地域コミュニティの一部として機能していて、人々の健康サポートの重要な役割を果たしている。

異国の地スペインコスタ・デル・ソル/フエンヒローラに住んで22年

交通便利な生活と多彩なカルチャー広がる多文化都市｜マラガ/フエンヒローラ

この記事の内容

人々の生活に密接に関わるFarmacias（薬局）｜スペイン

人々の生活に密接に関わるFarmacias（薬局）｜スペイン

　　　著者：スペインgramフェロー北田ミヤ
公開日：2024年8月14日

個人経営が多いスペインの薬局

ここスペインでは通りを歩くと2ブロックに１か所はFarmaciaの緑十字マークがあるのではと感じるほど、街中で簡単に薬局を見つけることができる。

多くの薬局が個人経営で、家族経営が一般的だ。これは、歴史的に個人経営が主流であったことや、伝統的に家族経営の薬局が代々引き継がれ根付いているのが背景にある。またそれ以外にも大規模なチェーン薬局が市場に参入するのが難しい理由は以下の点からも考えられる。

まず、スペインでは薬局の所有・運営に厳しい規制があり、店舗の運営は薬剤師の資格保有者でなければならない。また社会の傾向からも薬局は地域コミュニティに密着してサービス提供されることが重要視されており、そのためには個人経営の薬局の方が住民と親密な関係を築きやすく、個々のニーズに応じたサービスを提供しやすく、利用者の満足度も高いという点が挙げられる。

医療制度との連携

スペインの薬局と医療制度の連携は非常に強固だ。Farmaciaは公的医療制度と連携しており、国家医療保険制度（SNS:Sistema Nacional de Salud) の一部として機能している。医師と薬局間でデジタルで処方箋の情報が共有されたり、薬剤師は単に薬を提供するだけでなく、患者の相談に応じたり健康教育を行う役割も果たしていて、医師と連携しながら患者のサポートを行っている。

一部の薬局では予防接種、糖尿病検査等、基本的な健康チェックを提供していて、地域医療の一環として運用されている一面もみられる。

IQVIAのデータによれば、デジタル処方箋システムの導入や医療サービスの需要増加により、2023年のFarmaciaの薬局市場は約29億ユーロの売り上げを記録した。特に処方薬の販売が全体の70％と大部分を占めている。

FarmaciaとParafarmacia

地域によっては緑十字マークではない場所もあるようだが、通常緑十字マークが目印の「Farmacia」に対して、特定のシンボルマークを持たない、「Parafarmacia」も国内に数多く存在する。どちらもいわゆる薬局のようにみえるがそれらは全く異なる役割を果たしているため、以下で違いを説明したい。

「Farmacia」（薬局）
既に説明した通り、医療制度の一部として機能していて、24時間営業や、緊急対応サービスを行う店舗もあるのがFarmaciaである。主に医療用処方薬、一般用医薬品、医療機器などを取り扱っていて、政府の認可を受けた薬剤師が運営している。

「Perfarmacia」
Farmaciaと違い、薬剤師の資格は不要で規制が緩いのがこちら。よって、医薬品の取り扱いは無く、健康食品やサプリメント、コスメ、ベビー用品等、健康や美容関連商品の取り扱いのみで、処方箋の取り扱いは行わない。医療行為を行わない点がFarmaciaとは大きく異なる。

独立した店舗もあるが、ショッピングセンターやスーパーマーケット内などにあることが多い。